「サブスク料金立て替え」のPipe、SaaS時代の新たな投資モデル/GB Tech Trend

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5,000万ドルの調達を果たした「Pipe」。Image Credit: Pipe

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

グローバルテックニュースでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

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在宅生活が当たり前になり、それに伴いSaaS企業が躍進しています。そんな中、SaaS企業向けフィンテックスタートアップが登場しました。名前は「Pipe」です。2020年2月に600万ドル、6月には1,000万ドル、そして先日5,000万ドルの調達を果たしています。SaleforceのMarc Benioff氏や、AngelistのNaval Ravikant氏、他にもShopifyなどが出資しており、多くの投資家から注目を集めています。

PipeはB2B SaaS企業の収益回収モデルを変えようとしています。従来、SaaS利用企業は四半期や半年、年間契約を結びながら月額で利用料を支払ってもらうケースが大半でした。利用企業にとってはキャッシュアウトを抑えられ、コスト予測が出来るため年契約月額支払いは便利です。

他方、SaaS提供企業は契約金回収までの期間がかかってしまいます。特に立ち上げ時期は開発コストがかさむため初期費用がかかります。契約を獲得して成長スピードを上げたいが、契約金が手元に来るまで時間がかかる場合、新たに資金調達をして株式を放出するしかないと考えてしまいます。キャッシュフローと成長のトレードオフです。

そこでPipeはMRR(Monthly Recurring Revenue)をARR(Annually Recurring Revenue)へ即時転換できる投資プラットフォーム、言い換えれば「年間サブスクの建て替え」を提供しています。

仕組みはこうです。投資家がSaaS企業のビジネス健全性に基づいて多少割引した価格で年間サブスク額を購入します。購入金額は一括でSaaS企業に入り、月額収益がPipe経由で投資家の手に渡る、というわけです。Pipeの利用企業はサブスクの年間価格とほぼ同額のキャッシュが提供されるので、顧客のサブスクリプションの年間価値全額をすぐに自社資金とすることができるのです。

現在のPipeのモデルは、創業者が会ったとあるスタートアップファウンダーが、顧客に年間契約前払いを促すために収益を40%も割引し、同時にキャッシュフローのギャップを埋めるため資金調達していたことを課題に感じたことから生まれたそうです。

SaaS企業にとって、顧客企業と年間一括契約を結ぶために提示していた大幅ディスカウントは深刻な問題です。そこでPipeは、高いディスカウントなどせずとも素早く予測収益が回ってくるように投資家とのネットワークを整えました。こうすることで、ACV(Annual Contract Value)を限りなく高い率で維持することができるようになりました。

Gartner」によると、世界のパブリッククラウドサービス市場は、2020年には収益が2664億ドルに成長し、2019年の2880億ドルから17%増加すると予測されています。リカーリングモデルが当然となる中、Pipeのようなモデルは国内でも可能性がありそうです。

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