シード期のスタートアップ「強い組織」をどうつくる:取り組むべきHR施策の全体像(1/2)

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、ジェネシア・ベンチャーズのインベストメントマネージャー水谷航己氏によるもの。原文はこちらから、また、その他の記事はこちらから読める。Twitterアカウントは@KokiMizutani。ジェネシア・ベンチャーズの最新イベントなどの情報を必要とする方は「TEAM by Genesia.」から

強い組織の構築は一日してならず。

事業とはヒトが創るものであり、それゆえに如何にヒトを束ね、各人に個性を発揮してもらいながら、組織としてのアウトプットを最大化させていくかという命題は経営者が最も頭を使うものであり、関連する施策の成否は事業成長にダイレクトに影響します。

組織創りの遅れは事業成長のボトルネックとなり、組織創りの失敗は事業の崩壊と経営チームへの特大のメンタルコストを伴います。事業成長を加速し続けることが可能な強い組織を構築、維持、強化していく営みは、経営を続ける限り終わりがくることはありません。

強い組織は、経営者が意識をして取り組まずして、自然と出来上がるものではありませんし、一日時間を使って考えればできるほど単純なものでもありません。

目指す世界観や社会観、真剣にチャレンジするヒトの思いを丁寧に言語化し、長い年月を掛けて試行錯誤をしながら実践が自然と伴うまでゆっくりと醸成される過程を経て、他社が簡単にマネできない有形無形の企業文化の備わった魅力ある強い組織になるものです。

本稿ではHRのスコープを「①採用 → ②入社 → ③評価育成 → ④権限移譲」のフェーズに因数分解して、シード期のスタートアップ経営チームが取り組むべきHR施策について考えてみたいと思います。

経営チームが取り組むべきHR施策の全体像

HRサイクルにおける①採用、②入社、③評価育成、④権限移譲のそれぞれのフェーズにおいては、事業の成長を見据えてシード期から経営として取り組むべきことが多く存在しています。

①採用のフェーズであれば、事業の成長に向けて必要となるポストを洗い出し、魅力的な候補者に出会って妥協をすることなく相性を吟味し、口説き、入社を決断してもらえるようにすること(高い採用力)。

②入社のフェーズであれば、新しく仲間となるメンバーにとって会社へのロイヤルティを高め、即戦力化してもらうためのオンボーディング体制を整備すること(オンボーディング)。

③評価育成のフェーズであれば、インナーブランディングを通じた組織文化の実践促進を、健全な評価育成の体制構築とセットにして進めつつ、1on1などを通じて個人のWillや個性に沿った活躍の場を見出していくこと(個の掛け算によるアウトプットを最大化する組織デザイン)。

④権限移譲のフェーズであれば、幹部役員やMgrの抜擢・登用を通じた経営と執行の分離を進め、ガバナンスの効いた意思決定体制を構築すること(スムーズな権限移譲)。

いずれのフェーズのアクションも、強い組織構築のために必要となる経営施策であり、うまく設計実践できれば、企業競争力の源泉となるものです。一方で、いずれかのアクションが一つでもうまく進めることができないと、事業成長の落とし穴に繋がります。

これらの各フェーズのアクションを適時的確に進めていくために必要となる思想的土台となるのが、Corporate Identity (CI)であります。企業としてのVision、Mission、Valuesが存在することで、HR施策の方向性をはじめて規定することができるようになります。

各フェーズのアクションをざっとまとめてみると、以下のようになります。

HRサイクルにおける各フェーズの全体像を俯瞰しまとめてみると、組織創りを進めるに当たっては経営として取り組まないといけないことが多く存在することがわかります。組織拡大が必要となったタイミングで各施策の準備が不十分なまま、慌てて採用を急いでしまうと、どこかでほころびが生じる可能性はぐっと高まります。

非連続な事業成長を目指すスタートアップにとっては、人数が少ないシード期からCIを醸成し、組織拡大が必要となるタイミングに慌てずに備えておく必要があると考えています。(次につづく)