
本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載
グローバルテックニュースでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。
今週の注目テックトレンド
今では世界的なブームになったD2C市場ですが、なかでも小売ブランドでは大きなインパクトを与える存在となりました。規模は小さくとも、強い世界観を持ったブランドが多く登場し、デジタル広告を駆使した事業形態が盛んに採用されています。
こうした市場の登場に伴い、ニッチな業態にフォーカスするスタートアップも登場しています。たとえば梱包ボックスの「Lumi」です。
米国の梱包市場は2019年に1,800億ドル超える規模になっているそうです。従来、多くの事業者は自社ブランドロゴの入った配達ボックスを大量製造していましたが、D2Cブランドはより作り込んだボックス生産を望みます。
というのもボックスを開けた中身にメッセージ文を付け加えるなど開封時の顧客体験(アンボックス体験)を向上させたいと願う事業者が増えたからです。結果、自社ロゴ・カラーの付いたオリジナルのボックスに対する需要が高まりました。ただし、D2C企業の期待値を超えるボックス工場を探すのは至難です。
そこでLumiは全米の配送ボックス製造工場をネットワーク化し、利用者はダッシュボードを使い、全米各地の工場を指定するだけでオリジナルボックスの生産と梱包プロセスの発注を可能にしました。
D2C市場の立ち上げとともに急速に誕生した需要に応えたのがLumiです。なにより、旧来依然とした市場のSaaS化を行ったのが同社でした。そして今、同様の流れに取り組むスタートアップに「Soona」が挙げられます。
SoonaはD2C企業のプロダクト写真・動画撮影のアウトソーシング先となるサービスを提供しています。先述したとおり、D2C企業はこだわりの強い世界観を持っているのが特徴です。プロ仕様のなかでも、ビビッドなカラーが映えたプロダクト写真等をこぞって展開しようとします。しかし、通常の撮影スタジオではなかなか独自の世界観を表現するのは難しい課題がありました。
そこでSoonaはプロダクトを配送するだけで「映える」プロダクト写真と動画を低価格で24時間以内に撮影してくれるサービスを提供したのです。D2C特化のプロフォトグラファーのネットワーク化に取り組んでいます。
TechCrunchによると、契約フォトグラファーの30%は自宅から撮影しているそうです。現在4,000の顧客を獲得し、前年度比収益は400%増と躍進しているSoonaはLumiと同じく、ニッチでありながら必須であった煩わしいプロダクトプロセスのSaaS化に目をつけと言えるでしょう。ちなみに同社は今回1,020万ドルの調達に成功しています。
商業用写真市場は、2019年時点で18億ドルの規模であるとの試算があります。1企業あたりの平均売上額は50万ドルです。巨大市場ではありませんが、こうしたニッチ市場であっても市場にとっては必ず必要となるプロセスです。Soonaは撮影プロセスのDXとターゲット顧客を絞ることで商機を生み出しました。いずれはアジアにも似たようなサービス形態が登場するかもしれません。
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