本当に社会起業家に求められるインパクト投資をーーGLINが新ファンド設立

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写真左から:中村将人氏、Vikram Gandhi氏、Shawn Cole氏

ニュースサマリー:インパクト投資を手掛けるGLIN Impact Capitalは3月23日、1号ファンドの組成を明らかにした。2021年秋を目途にファンドクローズを予定している。投資対象は主に環境問題やジェンダー問題、さらにはメンタルヘルスや教育分野などの社会課題解決に取り組む企業へ出資を進める。また、出資ラウンドはグロースステージを予定しており、上場後の社会的ミッションを見据え包括的なサポートを実施していく。

話題のポイント:日本においても、ジェンダー格差やSDGs文脈で社会的課題を議論する機会が増え始めている印象です。例えば、昨年日本政府は2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会を目指すことを公言しています。また、身近な例を挙げれば同じく昨年からプラスチック製のレジ袋が有料化へと移行するなど、社会課題と私たちとのタッチポイントはこれからも多くなっていくのでしょう。

そうした社会課題解決を目指す社会起業家へ投資を実施するファンドが、今回発表のあったGLINなどのインパクト投資及びESG投資双方を追求するプレーヤーです。

海外に目を向けると、アイアンマンとして著名な俳優ロバート・ダウニーJr氏がESG投資にフォーカスしたファンドFootprint Coalition Venturesを設立し、「フィンテックと環境問題を掛け合わせたコンセプトのAspirationへ出資していました。このように、既存の成長分野と社会課題を組み合わせたマーケットが生まれ始めているのも、同業界の特色と言えるでしょう。

また、JPモルガンからスピンオフしたDBL Partnersはクリーンエナジーの領域でTeslaに、Sustainable Products &Services領域で以前紹介したBellwether Coffeeに出資するなど、投資領域は限定されず多岐に渡っていることが分かります。直近では、感染症の拡大を防ぐことを目的としたハードウェアの開発元であるR-Zeroの1500万ドル規模のシリーズAラウンドにリード投資家として参加しています

さて、今回ファンド立ち上げを発表したGLIN代表の中村将人氏は同ファンドのミッションに「より良い資本主義の構築」を掲げています。同氏は「従来の資本主義上では、社会起業家が直面する弊害が多い」とし、この弊害を取り除く仕組みを作ることがミッション達成に近づくとしています。

「資本主義社会は、経済的成長やリターンをプライオリティーに置き経済活動のインセンティブ付けを設計してきました。それによって生じた問題を社会起業家は解決するべく挑戦しますが、そうした事業へ投資するVCや機関投資家は、どうしてもバリュエーションやExit戦略が先行してしまう傾向にあります。これはどうしても避けられない事実ですし、だからこそ社会面のリターンと経済的リターンを両立させたインパクト投資家が市場から求められる所以となっています」(中村氏)。

資料提供:GLIN

今回GLINはレイターラウンドの社会起業家支援に回るとしていますが、当初はシード期へのファーカスも考えていたようです。しかし上述したような「IPO直前の社会起業家」の不安視を取り除くべく、レイターを優先したとのこと。

「IR文脈で中長期的に社会ミッションに賛同してくれる投資家への需要は、特に国内で高まりつつあります。GLINはレイターステージにフォーカスすることで、インパクトある企業を経営者が持つミッション・バリューに寄り添い、長期的な成長にベットしていきます」(中村氏)。

インパクト投資のイニシアティブ団体「GIIN」によれば、2020年においてインパクト投資市場規模は7150億ドルという指標を公開しており、今後も成長を続けることが予想されています。国内市場はというと、市場分析を実施するGSG国内諮問委員会の調べによれば2019年時点で3000億円程度ではあるものの、2016年時点では300億円規模であり10倍の成長を遂げていることが分かります。社会のトレンドも過渡期にある今、国内でインパクト投資市場に挑戦するGLINには今後も注目が集まります。

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