3Dプリンタで建設業をDXするPolyuse(ポリウス)、8,000万円をシード調達——Coral、STRIVE、池森VS、吉村建設工業から

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Polyuse のチーム
Image credit: Polyuse

建設業向け 3D プリンタ事業を開発・展開する Polyuse(ポリウス)は21日、シードラウンドで8,000万円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、Coral Capital、STRIVE、ファンケル創業者の池森賢二氏が率いる池森ベンチャーサポート、京都の吉村建設工業。建設業向け 3D プリンタ「ASHIGARU」を中心に建設業向けの DX 事業の開発を加速する。

Polyuse は2019年6月、岩本卓也氏(代表取締役 COO)、松下将士氏(取締役 CTO)、伊勢崎勇人氏(代表取締役 CPO、一級建築士)、大岡航氏(代表取締役 CBO)らにより創業。土木、外構、インテリア、エクステリアなどの分野をターゲットに、3D プリンタや先端技術を活用した施工期間の短縮、人員の最適化などで、人的資源の再構築から建設業の変革を狙う。

3K(きつい、汚い、危険)と呼ばれる建設業界では労働人口の減少が顕著で、専門職種が80以上に分かれる業界でありながら、一人の担当者が複数の工程を兼務するなどして、これまで乗り切ってきた。結果的に工期が長くなってしまうなどの弊害が生まれ、また、5年間の猶予が与えられていた労働時間の上限規制は、2024年からは建設業にも適用が始まる予定だ。

そんな中で、現場職人が担ってきた工程の一部を 3D プリンタを使って自動化し、工期を圧縮できないかと考えたのが Polyuse の 建設業向け 3D プリンタ事業だ。同社によれば、建設業向け 3D プリンタを手がける企業は世界に70社ほど存在するが、オペレーションの提案や建設現場との密な連携が無しでは、この仕組みが浸透していく可能性は高くないという。

Polyuse の建設業向け 3D プリンタ「ASHIGARU」
Image credit: Polyuse

施工部分によっては既存工法の方が安い部分もあるし、こうオペレーションした方がいいということもある。当社のプラットフォームでは、例えば、この部材を 3D プリンタで作れば、工期や製造コストがこれくらい安くなります、というのを提示する。現在は研究開発から PoC へと進めている状況だ。(岩本氏)

岩本氏らによれば、この事業を成り立たせるには、建設の業界知識、ハードウェア、ソフトウェア、マテリアル、事業開発の全てに精通している必要があるため、参入障壁は必然的に高いものになるという。日本の建築基準法にも合致する必要があるため、海外勢の日本市場を阻み、国内競合もあまり見当たらないのは、おそらくそんな背景からだ。

産業用ロボットしかり、自動運転しかり、新技術を社会実装するには法律を変える必要も生じる。建設業界においても同様で、技術開発とともに、政府や議員へのロビー活動も必要になるだろう。多くの大企業経営者らとのパイプを持ち、自身も数々の規制と戦ってきた池森氏の起業支援会社が本ラウンドの投資家に名を連ねているのには、そんな文脈が感じ取れる。

Polyuse では現在開発済の 3D プリンタのβ版を、建設会社らで構成されるコンソーシアムに提供、現場のニーズをヒアリングしながらプロダクトの完成度を高めていきたい考え。同社では調達した資金を使い、ハードウェア、ソフトウェア、素材、ビジネス開発、広報・マーケティング、バックオフィスの人材募集の強化に着手する

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