元はてな副社長の毛利氏と元SYN代表の金野氏、トップ経営者が上場経験を語り継ぐ講義プラットフォームをローンチ

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上場に関する本当の知見は、上場経験者しか体得できないと言われる。書籍や座学ではなかなか得られない貴重な体験だ。成長著しいスタートアップの経営者は、数年後の上場が射程に入り出した頃から監査法人、証券会社、銀行、投資銀行の担当者らと頻繁な面会を重ねることになるが、何度も上場を目の当たりにしてきたプロである担当者らと、これから上場を迎えるアマチュアの経営者の間には、圧倒的な情報の非対称性がある。口にすることが許されるかどうかはさておき、「あの時、こうしておけば…」という思いのある上場経験者もいるはずだ。

そんな上場経験者ならではの知見——ときとして、それは後悔を含むかもしれない——は、仮にその人が、シリアルアントレプレナーらしく、別のスタートアップを再び起業し、その会社を上場に導くようなことがあれば、ふんだんに生かされるだろうが、上場したばかりの会社の代表経営者がまもなく全く新しい別のスタートアップを起業することは、株主に対する経営責任を考えると現実的ではない。

毛利裕二氏

かくして、上場経験者は自分が得た知見を、後進の人々に役立ててほしい、と考えるのは自然な流れかもしれない。

はてな(東証:3930)の元副社長で現在は非常勤取締役を務める毛利裕二氏と、今から約30年前の学生起業ブームの立役者の一人で、「大阪にリョーマ、東京に SYN あり」と言われた頃の SYN の代表を務めた金野索一氏が、JEEPS(Japan Entrepreneur Education Platform & Society)という任意組織を立ち上げ、6月下旬から上場経営者によるオンライン講義を始めることになった。

6月に KLab 取締役会長(3656)の真田哲弥氏、7月に弁護士ドットコム(東証:6027)元代表取締役会長の元榮太一郎氏、8月にスペースマーケット代表取締役社長の重松大輔氏(東証:4487)など、月に1〜2回のペースで約30名の登壇が予定されている。

Zoom か、場合によっては Clubhouse でやろうと思っている。起業を考えている人でも、学生でも、主婦でも、参加者の条件は問わない。前半は講義、後半は参加者からの質疑への応答というのを一つのフォーマットにして、事前に web フォームから質問内容を投稿してもらえるようにもしたい。メルマガなども準備中だ。(毛利氏)

金野索一氏

参加者から料金を取るようなことは今のところ考えていないそうだ。参加者の中に将来有望な起業家がいて、講演に登壇した上場経験者が関心を持てば、エンジェルとして投資してくれる可能性だってある。

上場経験者と現役バリバリの若手起業家の間には、世代間のギャップもあれば、事業に対する考え方やアプローチの違いもあるだろう。

世代的には上であることが多い上場経験者らにとってももまた、若手起業家が何を考えているかを知ることは、刺激になるし学びになるだろう、と、金野氏は言う。

IPO には、自分の本業とは別の、IPO のための経験やノウハウが必要になる。上場経験を次の人に継承していければ、より多くの IPO やイグジットケースを生み出すことにつながるだろう。ハッピーなイグジットが増えることで、「私も起業家になりたい、上場企業を築きたい」という人が増えることに繋がるので、社会的にも意義がある。こういったことに最もノウハウがあり経験値の高いのはこの人たち(上場経験者)なので、次の起業家にそれらを継承していくプラットフォームは意義があると思う。(金野氏)

「アントレプレナーマスター」と題された講師陣には、誰もが知る有名上場企業の経営者らが名を連ねる。毛利氏や金野氏が持つ人脈の賜物だ。イグジット全般もテーマとして扱う観点から、創業したスタートアップをバイアウトした経験を持つシリアルアントレプレナーとして、cubrick 代表取締役社長の松村映子氏(創業したバスケットが2015年ストライプインターナショナルにより買収)、LABOT 代表取締役 CEO の鶴田浩之氏(Labit 創業後「すごい時間割」をジョブダイレクトに事業譲渡、ゲームエイトを設立しグノシーに売却など)らも講師に招かれる予定だ。

先達(=上場経営者)がいることで、若手起業家や起業家予備軍のハートに、エンジンのスパークプラグみたいなものがあって、そこにパチッとスイッチを入れることができればいいな、と思っている。これまでは、出資とかを前提にしたピッチをするようなプラットフォームは数多くあったと思うが、JEEPS は投資やリターンなどをはっきり目的にしたものではない。実際どのようなものになるかは、やってみないとわからない。(毛利氏)

講師らの経験談の中には、おそらく公にはしづらい本音や失敗談も含まれると思うので、BRIDGE がそれらを紙面で取り上げることは難しいと思われるが、読者におかれては、ぜひ自らの目や耳で千載一遇のチャンスを手に入れられることをお勧めする。