フードテック台頭の背景とその理由「2つの人口増減」

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植物肉(ミラクルミート)を使った唐揚げ。写真: DAIZ。

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社の木塚健太氏が共同執筆した。

近年、SDGsなどの啓発で持続可能な社会づくりへ関心が高まっています。日本における大きな指針としては、昨年10月に宣言された2050年に向けた脱炭素社会の実現があり、社会全体でエネルギーや資源に関する考え方を転換する時期を迎えているのは間違いありません。

こういった変革期にコロナ禍の影響もあり、大きく変化したのが私たちと食に関する向き合い方です。身近なところでは非接触を余儀なくされたことからフードデリバリーの躍進がありますが、これもひとつのデジタル化の流れと言えます。例えば予約をして食料を消費するスタイルが定着すれば、データによる管理がしやすくなり、食品のロスが減る効果が見込めるかもしれません。

このような背景から、今世界では食とテクノロジーを組み合わせた「Food Tech(フードテック)」の流れが加速しています。私たちグローバル・ブレインも今年4月に発芽大豆を使用した植物肉原料『ミラクルミート』の開発・生産を行うDAIZ社へ出資を発表しています。

2010年代半ばから動き出したこのトレンドは、個別に進化を続けてきた食品、家電、小売、そのバックエンドにおける各業界の動きが融合しつつあるものです。大きくは「食のパーソナライズ」「自動化 / 省力化」「代替食 / Future Food」「SDGs領域(フードロス解決)」が挙げられますが、本稿では特に注目が高まるフードデリバリーやゴーストキッチンに見られる自動化の流れと、代替たんぱくとなる未来の食料について解説してみたいと思います。

労働人口減少で避けられない自動化・省力化

※1出典:パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2030」

外食産業における人材不足は声高に叫ばれている社会課題ですが、ある労働市場の2030年推計(※1)では、食を含むサービス産業が突出して担い手不足に陥る筆頭業界とされています。こういった中、期待されているのがロボットの活用や「作る場所」と「食べる場所」の分離とその運営の効率化です。

その上で、コロナ禍の影響もありフードデリバリーやゴーストキッチン、D2Cが世界的に急拡大しました。消費者の行動や習慣は変容しており、今後も成長すると考えられています。

構造としてはラストワンマイルを配達するデリバリープラットフォームが定着し、そこを活用した事業主体であるデリバリー専門の飲食店が出現しています。そしてこれをキッチンのインフラで支えるのがゴーストキッチンです。国内のデリバリープラットフォームはLINE子会社となった出前館とウーバーイーツの2強体制で、ここにローカルに注目したシン(Chompy)やデジタルコンビニのレキピオ(QuickGet)といったスタートアップが別の角度で挑んでいます。

店舗を持たないフードデリバリー専業の事業者が食事を作るためのキッチンを貸し出す業態のゴーストキッチンですが、海外の先行事例としてはインドのRebel Foodsや2016年にUber創業者のTravis Kalanick氏が設立したCloud Kitchens、韓国のWecookなどがあり、拠点数も拡大しています。一方国内はまだ各社シード段階で、成長はこれからといった状況です。

食べる場所、作る場所の変化もあれば、食品そのものの生産工程や届け方についても変わりつつあります。D2Cの流れは食品に限ったものではありませんが、GBが出資する完全栄養の主食「ベースフード」のような消費トレンドに沿った製品を自社で企画・製造し、直接消費者に届ける仕組みはこれからも拡大すると考えています。

アプローチもさまざまで、消費者の嗜好をデータ化して定期購買を促すサブスクモデル(例:おやつのサブスク)や自社企画のオリジナル商品(例:日本酒や完全食の自社企画)生産者と直接繋ぐマーケットプレイス(例:産直系のEC)、冷凍技術の発達による食品EC(例:ケーキやパンの冷凍販売)などが挙げられます。

世界人口増で足りなくなる動物性たんぱく

矢野経済研究所が昨年5月に発表した代替肉(植物由来肉・培養肉)世界市場に関する調査によれば、2020年の市場規模は2,570億円規模で、これが2030年には約1.9兆円に成長すると予測しています。

米国などでは特化型VCだけでなくトップ・ティアVCも含めて各VCが投資を牽引し、2015年以降継続して海外食品大手企業のCVCが設立され、存在感を発揮しているのが現状です。投資金額、Deal数共に引き続き増加傾向で、ここ5年(2016年〜2020年)で投資件数は2倍以上に増加しています。

これらの理由は明確で、この先、世界的な人口増加に対して動物性たんぱく質の供給が不足する未来が予想されているからです。また生産だけでなく、畜産は実は二酸化炭素の排出元としても環境にインパクトを与えています。人口が増えたことに対して畜産を単純に増産できない状況にあるのです。従来の代替タンパク(主に植物肉)は、ベジタリアンやビーガン、ムスリムなどの宗教的 / 倫理的な理由が大きかったようですが、今後はこれら別の課題から需要増が見込まれています

特に代替タンパク分野は成長が著しく、ここ数年でそうした商品を提供するスタートアップも資金調達を進めてきました。Perfect dayがここ2年で3億ドルを調達、Impossible Foodsが昨年に約7億ドルを調達(これまでの累計では16億ドル)するなどディールサイズも大きくなっています。2019年に上場したBeyond Meatも2020年度は売上として4億ドルを達成(昨年対比135%)し、実需の変化を示しています。

植物肉(ミラクルミート)を使ったハンバーグ。写真: DAIZ株式会社。

一方国内は2020年になり特化型VCやアクセラレーター、フードテックスタートアップ向けのシェアオフィスが開設されるなど、投資やコミュニティづくりに活発な動きが確認できるようになりました。プレーヤーとしてもGBの出資先であるDAIZをはじめ、昆虫食のGryllus、培養肉のインテグリカルチャー、ゲノム編集肉のリージョナルフィッシュなど、バラエティも増えています。

今回はフードテック領域に関するトピックスを大きく二つ、解説してみました。日本における労働人口の減少と世界的な人口の増加。この二つの人口の動きが、大きく私たちの食生活に影響を与えることになりそうです。

今回言及しなかったパーソナライズ(個人の嗜好における対応)やフードロス対策は共に食に関するデータが普及することで大きく改善できる分野でもあります。世界の状況をふまえ、現在の国内はまだ黎明期であることを考えると、今後のこの領域の動きには期待できるのではないでしょうか。

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