本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載
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今週の注目テックトレンド
音声の話題を聞かない日がないというほど、特にClubhouseが登場してから盛り上がり続けている音声市場。これまでは音声アプリとしてプラットフォームを狙うプレイヤーに注目が集まっていましたが、徐々に「機能」として音声サービスを提供する動きが増えるかもしれません。これはつまり、ユーザーにとってはどのアプリへアクセスしても音声対話をする場が用意される未来を示唆しています。
例えば最近ライブ音声配信機能を実装した「Public.com」で、同社はRobinhoodと競合している株式トレードアプリとして米国で有名です。2月には12億ドルの評価で2億2,000万ドルの調達を実施しました。すでにユニコーン企業へと成長を遂げており、登録ユーザー数は100万人を超えています。
今回実装された機能の正式名称は「Public Live」です。ローンチ当初は誰もがストリームを立ち上げて話せる場所ではなく、Public側が手配したモデレーターのトークイベントに参加できる形式になるとのことです。イベントは週3回を予定。
Publicはサービス立ち上げ時からコミュニティ志向の強いサービスで、投資家のポートフォリオを確認し合ったりできるなど、投資家同士の情報交換・コミュニケーションに重視したSNSとしての側面を持たせていました。この点、Robinhoodとの差別化を必死に図っており、今回のライブ音声配信機能もその一環と見られます。
最近ではLinkedIn、Facebook、Twitterらも、音声配信機能を自社のプラットフォームを強化できる重要な機能であるとし、サービスリリースへと漕ぎ着けています。彼らの動きに追従するように、Publicに代表されるような主要SNS以外のプレイヤーも音声サービスをローンチしはじめているのが現状です。それではPublicのような音声サービスとは一見関係のない企業に音声の波が来ている理由はなんなのか。2つほど考えられます。
1つは開発土壌が揃いつつある点です。これは開発者向けSDKサービスも出揃っている点が大きいでしょう。たとえば中国のスタートアップ「Agora.io」などを使えば、簡単にライブ音声配信機能を実装できる開発者向けSDKも市場に揃っています。
もう1つの理由として特化型コミュニティ志向が挙げられます。多くのライブ配信アプリで見かけられるように、ユーザーは自分の興味・関心のあるトピックを選択した上で、話しやすいストリームに招待される動線が引かれています。言い換えれば、同じ話題で話せる密なコミュニティを複数所有するのが音声プラットフォームなのです。
ただ、Publicのように特定のテーマに沿ってユーザーが集まるサービスで音声対話ができた方が、特にビジネスに関する情報収集であれば得することが多いと考えられます。特化型コミュニティを抱えるサービスが音声機能を他社SDKを通じて高速に立ち上げれば、大手プラットフォームに負けないほどのエンゲージメントを叩き出せる可能性が十分にあります。こうした実情を各市場のプレイヤーが理解し始めており、ハードルの高い動画などではなく、誰もが顔出しせずに配信できる音声に舵を切り始めているのが最新の市場動向であると感じます。
各市場にはニッチなテーマを持ったアプリが多く存在しています。彼らがテキストチャット機能に並ぶものとして、当たり前に音声配信機能を実装する日は遠くないかもしれません。
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