宇宙ビジネスのトレンド全体像ーースタートアップ参入の現状と今後

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本稿は独立系ベンチャーキャピタルSTRIVEによるものを一部要約して転載させていただいた。原文はこちらから、また、その他の記事はこちらから読める。なお、転載元のSTRIVE Blogでは起業家やスタートアップに興味のある方々に向けて事業成長のヒントとなるコンテンツを配信中。投資相談はSTRIVE(公式サイトTwitter)をチェックされたい

今日では、日本人起業家といった民間人による宇宙飛行のニュースが話題になり、また、GPSの位置情報確認など宇宙を介したサービスを誰もが日常的に使っています。さらに、多くのスタートアップ企業が宇宙ビジネスにチャレンジしていく中で、宇宙のもたらしてくれる価値が大きく高まりつつあります。今回は、宇宙ビジネスの全体感を掴み、スタートアップのビジネスチャンスの可能性を探ってみたいと思います。Let’s strive to know the Space Industry Trend!

宇宙開発・利用のこれまで

宇宙開発・利用は、アメリカ合衆国とソビエト連邦の対立を受けた冷戦期の宇宙開発競争の中で20世紀中盤から大きく進展しました。宇宙技術のミサイルなどの軍事利用への転用、国民の一体感の醸成や国威の発揚を目的に、国家が主導し巨大な航空・電気事業者等と連携し宇宙を開拓してきました。21世紀に入ると、政治情勢の変化などを受け、宇宙開発・利用は官需による牽引から民需への流れが強まります。異業種企業や多くのスタートアップ企業が宇宙ビジネスに参入する中で、新たに商用宇宙市場が拡大しました。このような潮流やそこで活躍する企業のことを「New Space(ニュースペース)」と呼びます。

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宇宙ビジネスのトレンド

「New Space」へのパラダイムシフトは、宇宙分野のイノベーションの進展、宇宙利用の低コスト化によるユーザー層の拡大、官から民という宇宙産業の商業化などのドライバーにより進んでいます。例えば、地球観測衛星が取得する膨大な量の画像データは、ビッグデータ処理やAIなどの進化によりソリューションビジネスに活用することができるようになりました。また、様々な新技術の登場により衛星やロケットの小型化、量産化が進んだことで、宇宙をより安価に用いることができるようになり、エンドユーザーが利用しやすくなっています。政府は自らが宇宙機器の開発・運用を手掛けるのではなく、宇宙ベンチャーを支援しながら彼らのサービスを購入するようになり、そのような下支えによりベンチャーキャピタルなどのリスクマネーが流入しています。

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スタートアップが参入する領域

一般的にスタートアップの多くは、地球に近く打上げ費用が比較的安価な低軌道上の宇宙開発や、地上で宇宙データ・通信などを活用するサービスを展開しています。スタートアップが参画する宇宙ビジネスのセグメントとして、下記が挙げられます。

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注目を集める小型衛星市場

特に注目を集めているのは、小型衛星に関連したビジネスです。数kgから数百kgの衛星で、通信、地球観測(リモートセンシング)、IoTなどのミッションを持ち、主に低軌道上で運用されています。政府が主導して開発・運用をする何トンもの大型衛星に比べ、短期間かつ低コストで作ることができ、かつ、打上げも相乗りなどを活用して安くすることができます。一方、低軌道の小型衛星が地球上をカバーできる範囲は狭くなるため、商業サービスへの利用のためには衛星コンステレーション(複数衛星による一体運用)を構築します。小型衛星の打上げは今後10年間で大きく拡大することが見込まれており、打ち上げられた衛星の数は2,962個から13,912個まで4倍近くになると予測されています

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こちらは、日本の宇宙スタートアップが製造する小型衛星です。光学センサや合成開口レーダ(SAR)による地球観測、デブリ(宇宙ゴミ)除去、人工流れ星などのミッションを持っています。質量は100kg前後なので、原付バイクくらいの重さになります。2011年から2020年にかけて、約300回のロケット発射によって約3千の衛星が打ち上げられました。小型衛星の多くが、他の衛星とのロケット相乗りでまとめて軌道上に届けられます。

小型衛星の活用事例

小型衛星のミッションの一つに、インターネット通信があります。世界では約30億人がインターネットに未接続と言われ、特にアフリカ、アジア、南米などの一部地域でインターネット利用率は依然として低いままになっています。衛星インターネットは、それらのデジタルデバイドの解消や、また、携帯電話の基地局設置が難しい山岳地帯、海や空の上などの通信手段としての活用が期待されています。地球全体をカバーするために、数千から万単位の通信衛星を宇宙空間に配備する必要があり、巨大な資本力を持つスタートアップ企業がこの分野に参画しています。

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地球観測(リモートセンシング)も小型衛星の主要なミッションの一つです。宇宙にあるため災害に強い、広い地域を観測できる、同一のセンサを用いて一定の時間間隔で長期間にわたり観測できるなど、衛星の利点を生かして、広大な農地の生育状況をモニタリングしたり、漁業資源や海洋環境の把握をしたりしています。IoT衛星は、船舶や航空機のステータスデータを受信したり、通信モジュールからの位置情報や土壌の乾燥具合などを受信したりするミッションを持ちます。天候情報などを含めた効率的かつ安全な船舶のルートの確保や、家畜や土壌の管理などの用途に用いられています。

宇宙ビジネスの可能性

宇宙ビジネス全体では、2019年度の市場規模は約40兆円にのぼっています。そのうち、政府予算など衛星以外の宇宙産業が3割弱、衛星関連の宇宙産業が7割強となっています。宇宙といえば衛星の製造やロケットの打上げのイメージが強いですが、実はその割合は全体の4.8パーセントほどに留まり、「スカパー!」などの衛星テレビや、GPS受信機などのセグメントが大きくなっています。

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証券会社大手Morgan Stanleyによると、2040年の宇宙ビジネスの市場規模は、消費者向けブロードバンドやインターネットなどのセグメントの伸長によりおおよそ100兆円にまで拡大すると予測されています。成長ドライバーとしては、衛星打上げ、衛星インターネット、深宇宙探査、月面着陸など10つが挙げられています。日本航空宇宙学会が発表した「JSASS宇宙ビジョン2050」によると、この30年間で宇宙旅行の人数が年間数百人から1,000人にまで増えるとされており、宇宙がより身近になっていく様子を見て取ることができます。

米国の宇宙ビジネス特化ベンチャーキャピタルのSpace Capitalは、Silicon Valley Capitalと共同で発表したレポートにおいて、今後、地球観測衛星や通信衛星のビジネスがGPS(全地球測位システム)と同様に大きく成長する可能性を指摘しています。GPSはアメリカ合衆国が運用する約30の衛星コンステレーションが提供しており、当初は軍事利用目的でしたが、1980年代から民間へ開放されました。2005年にGoogle Map及びそのAPIがローンチされ、その後、UberやTinder、Pokémon GOなど様々なアプリケーションが誕生し、40兆円を超える市場規模にまで成長しました。

GPSアプリケーションがいわゆる“カンブリア爆発”を起こしたように、地球観測や通信分野のアプリケーションが爆発的に誕生するかの期待が集まっています。

編集部注:続きはSTRIVEの元記事をぜひご覧ください。後半では多数のスライドと共に宇宙大国アメリカの現状から国内外の代表的な宇宙ビジネススタートアップ、課題などに触れています。

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