海外旅行客向け免税デジタル化のPie Systems、日本上陸へ

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Image credit: Pie Systems

海外旅行客の免税手続をモバイルアプリで完結できるデジタルプラットフォームを運営する Pie Systems は14日、日本法人となる Pie Systems Japan を設立したことを発表した。Pie Systems Japan の代表取締役には、PayPal 日本法人の社員第1号で、 Square の日本法人代表、Origami(メルペイが2020年1月に買収)の COO を務めた水野博商(みずの・ひろあき)氏が就任したことも明らかになった。

Pie Systems は2018年、ThirdLove や Udacity 出身の Sunny Long 氏によりシリコンバレーで設立。街角に免税店が並ぶ市場がある国として、2019年にデンマークから事業を開始し、その後、ノルウェー、スウェーデンで事業展開。EU 地域1,000店舗以上で、モバイルで免税手続を行える仕組みとして普及が進んでいる。アジアでは日本が初参入する市場として、2020年から準備を開始し、国税庁から免税手続を電子的に処理できる承認送信事業者として認められた。今年から正式サービスを開始する。

Pie Systems は昨年8月に実施したラウンドで、デジタルガレージ(東証:4819)グループの投資部門である DG Ventures を含む投資家から160万米ドルを調達。これを契機として、同グループのアクセラレータ Open Network Lab が福岡で運営するオープンイノベーションプログラム「Open Network Lab FUKUOKA)」で PoC を展開していた

訪日観光客の人数は新型コロナウイルス感染拡大の影響で激減しているものの、日本政府が昨年の政策会議で発表した「観光ビジョン実現プログラム2020」では、新型コロナ感染の収束を見極めた上でインバウンド回復を図り観光立国を目指すことが改めて確認されており、2030年の目標は年間6,000万人、旅行消費額は15兆円に設定されている。一方、Pie Systems が独自に集計・見積もった資産によれば、免税店の数は現在54,667店であるが、潜在的には97万店までの伸びる可能性があるという。

Image credit: Pie Systems

今年10月、日本政府は免税手続を電子処理に完全移行させる計画で、事実上、アナログ手続、すなわち、旅行客がレシートや領収書を提示して専用窓口で免税申請を行うことはできなくなる。免税店は自ら、国税庁サーバに販売データを送信するか、これを承認送信事業者を利用して行う必要が生じる。前出のように、Pie Systems は承認送信事業者を認められているため、Pie Systems のアプリを利用することで、海外旅行客は日本で購入した商品について電子的に免税手続を行えるようになる。

また、通常の免税手続においては、申請の都度、パスポートの提示が必要になるが、Pie Systems では、少なくとも旅行中に本人の ID 情報が変化する可能性はないことに着目し、パスポート情報を本人認証とともにアプリに登録することで、手続のステップを一部簡便化した。免税店での購入時には、お店から渡される6桁の番号または QR コードをユーザがアプリに入力またはスキャンすることで、本人情報と購買情報が Pie Systems でチェックされた後に紐づけられ、国税庁に送信される仕組みだ。

Pie Systems はシステムの導入にあたり、導入店舗からは利用料を徴収しない。手続完了後に免税が認められ、ユーザが持つ Pie Systems のアプリのウォレットに還元される金額のうち一部を Pie Systems が手数料として受け取る形でビジネスを成立させる。また、店舗にとってはシステムを通じて、どの顧客が商品を購入したかの記録やトラッキングできるため、再訪を促すためのリピーター施策やプロモーション活動にも活用することが可能になる。

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