話題のNFT、ビジネスにどう活かす?【業界解説・コインチェック天羽氏】(前半)

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本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

全産業デジタル化の流れが不可避として認識される中、大きな構造の変化がいろいろな場所で発生しています。単なるデジタルツール・インターネットへの置き換えではなく、業界構造自体が変わり、認識の変化に追いつけないプレイヤーは否応なく淘汰されてしまいます。

MUGENLABO Magazine編集部では、このダイナミックな変化を業界のゲームチェンジャーたちの解説と共に紐解くシリーズを開始しています。

初回の金融業界の変化についてお話しいただいたクラウドリアルティ代表取締役、鬼頭武嗣さんに代わり、2回目はコインチェック執行役員、コインチェックテクノロジーズ代表取締役の天羽健介さんに登場いただきます。

ブロックチェーンやビットコインが大きく話題になってから数年が経過し、具体的にどのような社会実装が進むのかという輪郭が見えてきています。中でもNFT(Non-Fungible Token・非代替性トークン)はアートやスポーツ、ゲームの分野で大手企業含め注目が集まっているソリューションです。今回は天羽さんにNFTの基礎と課題、具体的なソリューションについて解説いただきました。

編集長
今日はよろしくおねがいします。さっそくですが、まず初めに、NFTとは何か、というところからおさらいをお願いできますか。
天羽
はい、NFTは”Non-Fungible Token(非代替性トークン)”の略で、唯一無二の、固有の権利を示すものです。裏側ではブロックチェーンが使われています。例えばビットコインですとか日本円みたいなものであれば、基本的には同じ価値を持っているものです。ですが、これが例えば、同じTシャツでも、片方にアーティストのサインが入っていると、同じ価値ではなくなります。このような個々の価値を表せるのがNFTと捉えていただければと思います。主に権利関係を有するビジネスのジャンルで活用されることが期待されていて、例えばゲーム、アート、会員券や不動産といったものが挙げられます。
編集長
急に話題が増えてきた感がありますよね。
天羽
市場規模はかなり急激に拡大している状況です。以下の右側の図はGoogleトレンドの検索ボリュームを表していますが、2月末くらいから急激に伸びており、twitterのトレンドワードにも入っています。私たちは3月24日、運営している暗号資産取引サービスのCoincheckに併設する形で「Coincheck NFT(β版)」をオープンしました。現在、ブームが来てからおよそ4カ月ほど経っている状況で、コンテンツIPホルダーの皆さんと毎日ミーティングを開いて、NFTをどのように発行し収益化していくかということをお話ししています。

編集長
なるほど。それで今後ですが、NFTをビジネスとして考える上で知っておくべきポイントはどこにあるんでしょうか。
天羽
そうですね、今はまだ黎明期ですが、今後、産業をより発展させていくためのキーとなるファクターが大きく分けて3つあります。

1つ目ですが、IPコンテンツホルダーの参入です。今までにブロックチェーンゲームなどさまざまなNFT事業がありましたが、認知度はまだまだといったところです。大手事業会社様がコンテンツやIPを活用してNFTビジネスを展開していくことで、仮想通貨、暗号資産、NFTというものは知らないけれどもこのIP、このキャラクターは知っている、というような、そういうコンテンツによってより多くの認知が生まれると考えています。

編集長
そういえば、スクウェア・エニックスさんが「ミリオンアーサー」でこのNFTを使ったサービスの発表をされていましたね。
天羽
2つ目は、UI/UXです。もしかしたらグローバルのNFT取引所でNFTを購入されている方もいらっしゃるかもしれませんが、現状として、一般的なNFTのマーケットプレイスでNFTを買おうとするとかなり複雑なUXになります。日本に居住している方が買おうとする場合、Coincheckのような暗号資産取引所でまず口座開設をしていただいて、そこに日本円を入金し、そこからイーサリアムに変えて、それとは別にMetaMaskと言われるパスワードなどを管理するウォレットがあるんですけれども、それを準備していただいてそこへイーサリアムを送って、そのウォレットを海外の取引所に接続して初めて買えると。
編集長
聞いてるだけで目が回りそうです(笑
天羽
はい(笑。その中でパスワードを忘れたり送金先を間違えたりすると、NFTや暗号資産そのものを失ってしまうという非常に複雑な仕組みになっています。ここに関しては後ほどまたご紹介させていただきますが、Coincheckでは当社の口座を持っていればダイレクトにNFTが買えるしくみになっています。
編集長
パスワード忘れて暗号資産取り出せなくなった、なんて話もたまにありますもんね。
天羽
3つ目は、プロトコル技術の革新です。聞いたことあるという方もそうでない方もいらっしゃるかもしれませんが、ブロックチェーンで価値の移転だけではなく、契約内容も合わせて移転することができる「スマートコントラクト」というしくみを実装したブロックチェーン技術があります。イーサリアムの上に多くのアプリケーションが乗っていまして、去年「DeFi」と言われる分散型金融の取引所や、レンディングのプラットフォームなどが多く出てきました。

編集長
DeFiもNFTと並んでよく耳にするようになりました。
天羽
(プラットフォームが乱立した)結果、そこで処理する手数料がどうしても高騰してしまい実態として使いづらくなってしまったんですね。なので現在、イーサリアムだけではなく、NFTや、何かしらのジャンルに特化したような技術基盤が多く作られています。もちろんイーサリアムも改善しつつあり、何の技術プラットフォームの上にアプリケーションを乗せていくのかというところは業界全体として課題視され、改善のアプローチがいくつも行われています。これが成長のキーファクターとなります。
編集長
あと、暗号資産については法規制の知識も必要ですよね。
天羽
そうなんです。いま、国内においてはNFTの法的な定義がない状況です。当社の加入している日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)では、事業者に安心して参入していただけるようにNFT部会を作り、取り扱いのガイドラインを策定しました。こうすることによって多くの事業者様の参入を促し、商品や多様性が生まれ、多くのユーザーを取り込み、するとまた事業者が参入してくるという好循環を生み出したいなと考えています。

編集長
具体的にはどういう内容なのですか。
天羽
はい、こちらがガイドラインの中身です。大きく2つの構成に分かれておりまして、1つはこのフローチャートになります。まず、NFTやNFT関連のサービスを提供する際に、既存の金融商品の定義に該当するもしくは該当する可能性があるかどうか?が大きなポイントになってきます。具体的に申し上げると、有価証券やSuicaのような前払い式の支払い手段、そのほか為替取引に該当しないもので、かつ、NFTの代表的な規格であるイーサリアムの「ERC721」という規格でブロックチェーンに刻まれたものをNFTであろうものとするというざっくりとした定義づけをしています。
編集長
なるほど。
天羽
もう1つのパートでは、その上でNFTが安心安全に取り扱われるために考慮すべきポイントを記載しています。もともと、暗号資産は金融庁の管轄になり、暗号資産取引業を行う場合は、資金決済法のライセンスが必要です。しかしながら、NFTの場合まだ法的な定義が定かでないことに加え、ゲームとかスポーツとかいろんな業界に利用が期待されているので、金融庁だけではなく、経産省、総務省、検察庁と、さまざまなところと折衝していく形になります。NFTの設計をするときに「これはすべき」というポイントを記載しているのが2つ目のパートです。JCBAのホームページから閲覧できますので、もしよかったらご覧になってください。
編集長
ビットコインがアンダーグラウンドな世界で取引に使われたなんて話もあってか、どうしても悪用されるイメージがありますよね。NFTはそのあたりどうなのでしょうか。
天羽
そうですね、ちょうどこの3月に発表されたんですが、国際的にマネーロンダリング等を防止する団体に「FATF」という団体があります。FATFは各国の金融庁と密接につながっています。今までは暗号資産がメインでしたが、その中にNFTも含まれるのではないかということを示唆する文面が追加されていると解釈されています。

編集長
示唆する・・まだ曖昧な感じなんですね
天羽
はい、ここは新規事業を作っていく立場からすると一部リスクになります。現在、金融庁は「NFTは暗号資産ではない」という見解を示していますが、仮に暗号資産になった場合、暗号資産交換業などのライセンスを持っていないと、もしかしたらスピードがすごく減速するかもしれません。Coincheckの中にあるNFTのマーケットプレイスで取り扱っていれば、そのまま、問題なくサービスを継続することが可能ですが、過度な規制により事業者の参入障壁が上がってしまうとNFT業界全体の成長に大きなダメージを与える可能性が高いです。
編集長
ありがとうございました。では、後半は実際に事業として取り組んでいるお話を教えていただきます。皆様、後半もお楽しみに!

後半へ続く

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