KDDIとファーストアカウンティングがタッグ、経理自動化で見据えるDXの未来

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本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

「働き方改革」が進む中で、ここ数年は、バックオフィス全般において業務省人化・自動化が課題として注目されています。そして、新型コロナウイルスの感染拡大は、このトレンドに追い打ちをかけました。バックオフィスに従事する人々も、他の社員同様に自宅からのリモートワークを余儀なくされましたが、中でも、経理業務は全社から集まる膨大な量の経費申請と、デジタル化が難しい証憑との突き合わせなどが足かせとなり、リモートワークにおいては大きな課題でした。

業務省人化や自動化においては、アナログだった既存の業務フローが次第にデジタルに置き換わっていく中で、 アナログからデジタルへの情報変換を正しく、そして効率よく行える技術が求められます。ここでポイントとな るのは、OCR(自動文字認識)が相応に信頼度の高いレベルで文字が認識できるか、それによって、人の目で 誤って取り込まれたデータの修正や事後チェックの必要が最小化され、バックオフィスの人々は、よりクリエイティブなタスクへと時間を費やすことができるようになるはずです。

一方、単体で約1.1万人、連結ベースで約4.7万人の社員を擁する大所帯の KDDI グループにとって、日々の会計伝票起票に関わる業務量は膨大なものです。ここで採用されたソリューションが業務省人化や自動化に威力を発揮すれば、自社にとってのメリットのみならず、中小企業に提供可能な DX(デジタルトランスフォーメーション) のサービス充実を狙う KDDI としては、太鼓判を押した形でそれらを顧客に勧めることもできるでしょう。

今回は、KDDI 経営管理本部 DX 推進部 部長の和久貴志さん、同マネージャーの鳥井太貴さん、ファーストアカウンティング代表取締役社長の森啓太郎さんに話を伺いました。

KDDI の DX を経理から始めた理由、ERP では足りなかったもの

KDDI は、かねてから経営管理の DX を進めています。2019年の ERP の導入に続き、2021年にファーストアカウンティングが開発した AI ソリューション「Remota」の導入を決めました。Remota が選ばれた理由について、KDDI 経営管理本部 DX 推進部を率いる和久氏は「経営改善オペレーションの高速化が求められているから」と話します。

今は VUCA の時代とも言われ、不確定な時代になっています。想定外の環境変化に対して、リアルタイムに経営状況を把握して、迅速な意思決定が必要になってくると思います。その点からも経営改善オペレーションを高速化する必要があり、有用なデータの収集や分析がカギとなってきます。(KDDI 和久さん)

経営管理本部は、KDDIグループの管理会計・財務会計・IR業務を担っており、そのうち和久氏の所属するDX推進部は約60名在籍しています。主に会計に関する業務改革の設計やデジタル化を推進するグループと、シェアードサービスとしてKDDI子会社22社の財務会計オペレーションに従事するグループで構成されています。

もともとKDDI本体の経理システムはオンプレミスでした。先の見えない競争環境のもと、加速度的な事業環境の変化に経営判断が追いつかず、IFRS(国際財務報告基準)で新たな会計基準や基準改定への対応ができないというさまざまな課題が発生しており、このまま業務に機能を合わせるコンセプトのシステムでは、この先10年後に戦っていくことができない、という危機感があったそうです。

2015年に社内で業務システムの標準化・効率化を目指して「プロジェクト:To-Be」を発足させ、To-Be=あるべき姿を模索しようと、「時代の変化に柔軟に対応できる経営基盤の構築」を目標に定め、業務をERPパッケージに合わせる方針へと舵を切り、2019年からERPパッケージで運用を開始しました。

こうした取り組みによって捻出された人員でDX推進部が設立され、業務改革をさらに推進していく体制が整い、2021年「会計伝票業務フローを抜本的に変えていくこと」を目的として、経理特化型ソリューション「Remota」の導入を決めました。

経理・財務部門の業務改善に特化したクラウドサービス「Remota」

2019年に新たな ERP を導入した一方で、「伝票起票時に発生する現場負荷」「入力漏れやミス」「二重登録のリスク」については課題が残る状況であると伺いました。そこで現場部門の入力項目の中から、請求書情報での読取でどのくらいカバーできるかを検討し、明細情報を含めた請求書の読取の他に、人が判断し入力している「勘定科目」「明細摘要」「各種コード」についても、過去のデータから自動類推することをご提案しました。(ファーストアカウンティング 森さん)

DX 推進部では、Remota の導入を「1. 伝票入力の補助」「2. 会計仕訳の自動化」「3. 安定稼働」「4. 全国展開」「5. 抜本的な業務フローの改革」の5つのステップで考えています。AI である Remota は使えば使うほど読取や仕訳の精度が上がるため、導入範囲拡大と精度向上が掛け合わさることで、業務効率は加速度的に改善される可能性が高いと言えます。

今後、人が行うマスタとの整合性チェックや金額の入力ミス等の確認業務も自動化することで、「人は戦略的会計処理や分析を強化して、次の一手を早く提案できるような高付加価値業務に従事することになるでしょう(和久氏)」としています。

KDDI とファーストアカウンティングの出会い

KDDI では2019年の ERP の導入から具体的に DX化 に着手してきたため、抜本的に何を改革すべきか、これまでの仕組みで何が解決できていないかについて、課題は明確になっていました。そして、その課題を解決させるためには、長い道のりを柔軟に伴走してくれるパートナーの存在が不可欠だったと言います。

まず、目標にしているのは「オペレーションを定型化してデジタル化すること」。その先に、抜本的な業務フローの改革が待っていますし、数年先にはインボイス制度や請求書・領収書のデジタル化への対応も見据えなければなりません。明確に改革したい要件に対して、一緒にどう実現いただけるかを考えていただけるファーストアカウンティングさんを選ばせていただきました。(KDDI 和久さん)

会計業務に特化して、運用業務にもシステムにも精通されているパートナーと随時相談しながら進めたいと考えていて、ファーストアカウンティングさんは、環境も激変する中でツールだけに固執せず、さまざまな視点から提案いただけるパートナーという印象を受けました。(KDDI 鳥井さん)

DX 推進部では、目先のデジタル化と将来の抜本的な改革の両面を見据えており、ファーストアカウンティングの提案が「渡りに船」だったというのが、出会いから共創に発展した真相のようです。ただ、どんなに新しいソリューションを導入しても、日が経てば古くなります。ツールの良し悪しだけでなく、「ファーストアカウンティングなら柔軟に対応してくれる」という信頼を勝ち取ったのも大きな要素と言えます。

経理 DXは、これまで人の作業を前提として設計されてきた業務フローを、AI によって代替される業務を特定し全体最適化する必要があり、導入時のハードルになることが多いです。今回、KDDI さんでは DX 推進部を始め購買部の方々にもプロジェクトに参画いただき、AI の仕組みについてもご理解いただきながら、新たな業務フローの検討を進められています。DX を取り組む上でとても有難い体制だと感じています。(ファーストアカウンティング 森さん)

AI ソリューションは導入して終わりではなく、ユーザが日々の業務の中で育てることが重要だと言います。経理業務でより一層の精緻さが求められる上場企業の実務において、そのフィードバックがファーストアカウンティングのソリューションの改善に生かされる。ひいては、KDDIの顧客である企業や、他の経理業務の自動化を標榜する企業のDXにも貢献できる、というわけです。「導入した自分達をはじめ、取引先やお客さんのDXにも間接的に貢献したい。」と願う姿勢が非常に印象的でした。

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