アップデートが進む「営業電話」解析スタートアップ/GB Tech Trend

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ZoomInfoによる買収が発表されたChorus.ai。Image Credit: Chorus.ai。

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

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営業オペレーションが、AIによって大きくアップデートされようとしています。なかでも大きな動きがあるのが営業電話の分野です。

従来、企業の電話オペレーターを揃えた部門は顧客との会話を記録しています。しかし、せっかく内容を記録しても活かしきれないという問題がありました。そこで登場したのが、先日5.75億ドルでの買収が発表された「Chorus.ai」です。WebEx、Zoom、Join.Meに代表されるオンライン・ミーティングサービスと連携し、AIを通じて営業電話の自動書き起こし、解析、要点ハイライトの3つの機能を提供します。

これまでただの記録として流れてしまっていた録音データをより効率的に活かすのがChorusです。たとえば営業成績の高い人のデータが集まれば、それらをある種の「公式」として採用することができます。企業の有望な人材のフォーマットを新人に教え込むことで、人材育成をより効率的かつ効果の最大化を図ることができます。

さて、Chorusの買収をしたのが「ZoomInfo」です。同社は2020年6月に上場している営業SaaSツールを開発する企業です。しばしば「Salesforceキラー」と例えられます。

ZoomfInfoは顧客管理ツールですが、その強みは顧客情報の更新性にあります。ウェブ上からクローリングして構築された人事情報データベースと、顧客情報を紐づけて常に最新のステータスが確認できる仕組みになっています。企業データ数は1,400万を超えているそうです。あらゆる人の最新動向がわかることで、どの優先順位でコンタクトを取るべきか判断できるといったSalesforceにはない、痒い所に手が届く機能を実装しています。

Salesforce同様に収益モデルはサブスクリプションです。そのためChorusを買収することで、顧客とのやり取り、そのもののデータもZoomInfoへ連携しようとしていると推察されます。仮に顧客との営業電話データも獲得することができれば、各顧客の人となりや考え方までも分析できるようになるはずです。そうすればより高精度な顧客コンタクトリストの提案が可能となり、他社と大きく差をつけることができます。

ただし、Chorus.aiには大手競合としてSequoiaが出資する「Gong.io」がいます。彼らも急成長中のユニコーン企業でSalesforce Venturesが出資していることから、ZoomInfoと同じく音声AI企業の買収へと動くかもしれません。

いずれにせよ、HR市場では数年以内に大型買収か上場案件が加速することは間違いないでしょう。日本でも同様の動きが見られるかもしれません。

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