世界と戦うチーム/Thirdverse 國光×本間対談(2/3)

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Thirdverseという新しいスタートラインに立った起業家と投資家。8年前に対談した内容を振り返りつつ、二人はそこに何が足りなかったのかを語り合った。(聞き手は筆者、お話はThirdverse代表取締役の國光宏尚氏、インキュベイトファンドの本間真彦氏、敬称は略させていただきました)

世界で勝てなかった理由

本間:オールインって、世界中、起業家がやってることってそんなに変わんないんだよね、みんな。ロケット飛ばしてるしクリプトもやってるし、ゲームもVRもやってるわけ。違うのは、事業の大きさのマグニチュードだけであって、そこが一番モヤモヤとするところだよね。お互い年齢も離れてない。

彼らは偉人ではあるけど、歴史上の人でもなく現世を生きていて。内容もみんなスマホ、クラウド、AIとか同じことをやってて。ただその結果が50倍100倍違うと言われちゃうと、なんかね・・・なんなんでしょうね?

國光:シンプルにグローバルで勝てるか勝てないかっていうのがデカいんだけど、なんで届かなかったのか。

当時からgumiの戦略ってシンプルで、一つめは日本で作って日本でヒットさせる。二つめは日本で作ったコンテンツを世界にいる「日本好き」に届ける。三つめが地産地消。海外で作って海外で売る。

最初の二つはそれなりに成果が残こせたんですけど、最後が全滅なんですね。なぜ海外で勝ちきれなかったのかと考えたときに、大きな理由が三つあると思う。一つめは、スマホシフトが遅れた。当時、グリーやモバゲーの売り上げがめちゃくちゃ多かったから、ネイティブに移行するのが遅れた。一時期、僕はHTML5の貴公子って呼ばれてましたからね。

本間:ザッカーバーグも10年前はHTML5が来るとカンファレンスで言ってたよ(笑。

國光:ザッカーバーグと俺だけがそう言ってた(笑。

本間:10年たっても、まだ来てないけどね!いつ貴公子の時代が来るの?

國光:ザックも俺も、間違いから学ぶのが早い。ザックはあの時ヤバいと思ってインスタを買ったじゃないですか。うちはエイリムを買った。ほぼ一緒。

本間:あぁ、なるほど。戦略が一緒。

國光:二つめに、すごく感じたのがやっぱりプラットフォーマーとの関係性が遠い。

本間:これはあるね。日本勢がキツいのは、デジタルのプラットフォームが全部アメリカの会社に変わっちゃって、非常にやりにくくなってるよね。

國光:プラットフォームとの距離感はけっこう大きな課題。三つめは、採用はめっちゃがんばったけど、本当の意味でS級人材を採用できなかった。この三つが大きな課題。Thirdverseではこの辺を大きく変えてみたいなと。

平野:今回はプラットフォーム自体も自分たちの近いところにいるし、海外も人材がいるし、絶対勝てる、と。

國光:6年間助走しましたからね!準備運動ももう万端、かなり温まってる。

コロナ禍で進んだ自律分散型のチームづくり

國光:世界に届こうと思うと「ここ」ってタイミングで参入せえへんかったらチャンスもないから。投資先の(NFTマーケットプレイスの)OpenSeaとかすごいよ。

だって日本がようやくちらほらと「NFTマーケットプレイス」と言ってる段階で、2月に20億円調達して今回さらに100億円追加調達。評価額は1600億円。こんなの日本が「今からやります」とか言っても、ね。しかも去年の10月まで従業員4人よ。

本間:グローバルとか世界ってなんだって話になったときに、これからのスタートアップは、従業員、マーケット、ユーザーはどこにいるか、投資家はどこにいるかって、幅広く柔軟に考える必要がある。組織設計に必要な要素を日本だけにこだわり始めるとその後の伸ばし方がよく分かんなくなるんで、今後ゼロベースで作る設計ってそういう組織が伸びていく可能性はある。

東京からスタートしても経営陣に外国人はぜんぜんいたほうがいいし、投資家も日本からばっかり集めるんじゃなくて海外から集めてもいいかもしんない。Thirdverseは確かに日本人は多いけど、構成員も初めからいわゆるスタートアップっぽい人材ばかりじゃない。作り方がだいぶ変わってるし、今後、もっと変わると思いますね。

コロナでリモートが発展するんで。うちのUSのファンドの責任者から見せてもらったんですけど、a16z(※Andreessen Horowitz)の投資先のアンケートで、今スタートアップを作るとしたら過半数の人がリモートベースでやるって言ってるんですね。

サンフランシスコやシリコンバレーでやるとエンジニアの給料が30万ドルとか40万ドルとかする。無理でしょって話になる。リモートで働く組織だったら別にアイルランドの優秀な人でもインド人でもいいわけ。そうすると採用能力も格段に上がる。

マネージメントにインド人がいれば、アメリカからだけじゃなくてインドの投資家も集められるし。「World Is Flat」って言ってたけど、まあ、それが出てから20年ぐらい経ってようやく本当にフラットな考え方が現実的になってきてる。

國光:Thirdverseも東京チームに加え、海外チームは、ビズデブ&マーケティングはサンフランシスコ。開発はLAとウクライナ。

平野:gumiはけっこう早い段階から海外に開発拠点をいろいろ作ってたじゃないですか。失敗も成功も含めて、そこから得た学びを次のThirdverseにどう生かします?

VRゲーム『ソード・オブ・ガルガンチュア』

國光:トップクラスの人材を取れたかっていうとそうではなかったと思う。gumiが海外展開したときは既にけっこうデカかったから、たぶんメルカリとかも苦労してると思うんだけど、トップクラスの人材を海外で採用しようと思うと、ストックオプションを含めた「魅力」がすごく重要になる。評価額が上がってからだとSOの魅力が落ちる。

二つめは『ソード・オブ・ガルガンチュア』の次のゲームを開発中だけど、ここで大ヒットを出せるかがけっこう勝負。サービス自体が大ヒットしてると「あのサービス作ってるところなんだ」って感じで一気に人が来るから、初期で大ヒットを出すっていうのがすごく重要。

本間:日本で当たっちゃったが故に、日本で当たったものをどういうふうに海外へ展開するかみたいな発想になるケースもあるけど、『ソード・オブ・ガルガンチュア』はアメリカでの売り上げの方が多いわけだし、僕がやってても、これ日本人向けのゲームとはとても思えない。テイストから何からしてもね。

Day1から本当に世界市場、北米市場を狙ってるっていうところは、昔からのスタートアップの考え方とは確かに違う。特にソフトウェアやインターネット関連のスタートアップの中ではそれをまともにやったケースが日本ではまだ少ないの。

國光:やっぱり日本っぽさ、日本「臭」がどうしても入っちゃう。

本間:これがなかなか。さっきのBTSじゃないけどそういう「匂い」は消してきてるというか、そういうグローバル化する強い意志があるじゃない?

國光:日本で成功してから海外へとなると、スピードも遅くなる。テイストも世界では通用しなくなってきちゃう。

平野:コロナ禍で海外人材や遠方の人材を取りやすくなってるっていうのはこれまでとは変わったじゃないですか。その辺は追い風を感じてますか?

國光:すごく追い風。海外メンバーは誰も直接会ってないからね。全部オンラインで面談してで出来てる感じやから。

平野:一方でNetflixみたいに完全にオフィスに戻れ!って、特にクリエイティブの人たちはけっこう戻るじゃないですか?その辺は難しさを感じてませんか?

國光:表現は難しいけど、メンバーのプロフェッショナリズムの高さが高ければオンラインだけで成立するし、そうじゃなかったりするとリアルっていうのは必要になる。

本間:8年後に向けての大胆予想ですが、今のNetflixとかのやり方ってロジック的には正しいと思うんですけど、でも、Appleみたいにでっかいキャンパスみたいなオフィス作って、っていうような会社は、古くなってるんじゃないかなと思う。

今、Day1で次のGAFA作ろうって人は全く違うアングルで勝負しに行かなきゃいけないから、本当にどこにあるか分からないみたいな会社かもしれないし、それが比較的自律分散的に動いてる可能性もゼロじゃないですよね。

そしたら人材だって全部アメリカから取る必要もないし、っていう状態になっていれば、オフィス代もCAPEX(設備投資)も低くなるし、人材のプールもグローバルから採用できる会社の方がイケてるかもしれない。

國光:特にスタートアップであればあるほど初期のメンバー集めって大変やから、最初からリモートベースの方が強いよね。本間:朝から晩まで一緒に過ごすスタートアップの熱量 vs 色んな組織設計の可能性があるリモートワークってところはあるよね。10年後どうなってるのかなというのは気になる。

國光:ま、アメリカとか海外勢の方が、やっぱ慣れてるよね。

本間:そう!僕もそこがけっこう怖くて、アメリカや海外勢がそういうことが当たり前にできちゃって同じパフォーマンス出されたら、東京でしか採用できない会社なんて絶対に世界で勝ち様がない。

次につづく:モンスター起業家を育てる/Thirdverse 國光×本間対談(3/3)

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