三菱UFJイノベーション・パートナーズ、200億円規模の2号ファンドを組成——フィンテック新機軸への投資も強化

SHARE:
MUIP 本社一角に貼られた投資先のロゴボード。直近5社ほどの投資先は、今後掲出される予定。
Image credit: Masaru Ikeda

三菱 UFJ イノベーション・パートナーズ(略称:MUIP)は先ごろ、2号ファンドを組成したと明らかにした。2019年1月に組成を発表した1号ファンド(200億円規模)に続くもので、ファンド規模は1号規模と同様に200億円規模を見込む。ファンドの GP は三菱 UFJ イノベーション・パートナーズ、LP は三菱 UFJ 銀行をはじめとする MUFG のグループ各社となっている。

MUFG にはかねてから三菱 UFJ キャピタル(MUCAP)という投資専門会社がある。MUCAP は純投資でキャピタルゲインを狙うファンドであるのに対し、MUIP は MUFG 各社との協業などを念頭に置いた戦略出資のための CVC だ。以前は、三菱 UFJ 銀行のデジタル企画部が出資を担当していたが、グループ各社とのシナジーを強化するため、MUIP が銀行からスピンオフする形で誕生した。

スタートアップ協業に力を入れる姿勢の象徴として、MUIP の東京本社は MUFG の本社ビルではなく、多くのフィンテックスタートアップが根城とする FINOLAB にある。投資業務経験者を外部から採用することにも積極的で、設立時から代表取締役を務める鈴木伸武氏、ファンド管理部長の蓑谷靖聡氏、今年に入って戦略投資部長に就任した佐野尚志氏は揃ってグローバル・ブレインの出身だ。

1号ファンドの投資先。Image credit: MUFG Innovation Partners

投資チームは東京のほか、ニューヨーク、パロアルト、シンガポールの活動拠点で、ディールソースやデューデリジェンスを行なっている。1号ファンドからの出資先は22社に及んだが、MUFG の本業とのシナジーを念頭に投資先を選んでいることから、国内4社に対し、北米、イスラエル、東南アジアなど海外スタートアップが全体の8割を占めるなどバラエティ豊かな顔ぶれとなっているのも特徴的だ。

<関連記事>

1号ファンドでは Credit Technology & Embedded Finance(従来でいうフィンテック)に特化して投資してきたが、2号ファンドでは Wealth / Asset Management & Trading、Digital CFO & XaaS といった分野への投資も強化する。また、MUFG は今年5月にカーボンニュートラル宣言を行なっており、これに資する Non-Financial ESG/SDGs 分野のスタートアップにも投資する。

大企業との協業を前提に考えると、これらのファンドが投資対象とするのは、スタートアップが MVP(実用最小限製品)を完成させ PMF(プロダクトマーケットフィット)のメドがついた辺りから後ろのステージだろう。1号ではファンド規模と出資先数から、単純計算で1社平均のチケットサイズが数億円台後半だとが推測できるが、この辺りの条件は、2号ファンドでも概ね踏襲されると見てよいだろう。

大企業と、彼らと手を組んだスタートアップが目指す win-win なオープンイノベーションに加え、MUIP では今後目指すシナジーの理想形を 3 wins(トリプルウィンズ)と呼び、MUFG の事業会社、スタートアップ、それに、MUFG の顧客の3社のメリット享受を狙う。多くの顧客を持つ金融機関ゆえ、日本全体の DX(デジタルトランスフォーメーション)に及ぼすインパクトの大きさも期待したいところだ。

BRIDGE Members

BRIDGEでは会員制度の「Members」を運営しています。登録いただくと会員限定の記事が毎月3本まで読めるほか、Discordの招待リンクをお送りしています。登録は無料で、有料会員の方は会員限定記事が全て読めるようになります(初回登録時1週間無料)。
  • 会員限定記事・毎月3本
  • コミュニティDiscord招待
無料メンバー登録