ハイブランド品価格比較サイト「Catch Fashion」が約20億円調達など——韓国スタートアップシーン週間振り返り(8月23日~8月27日)

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本稿は、韓国のスタートアップメディア「Startup Recipe(스타트업 레시피)」の発表する週刊ニュースを元に、韓国のスタートアップシーンの動向や資金調達のトレンドを振り返ります。

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8月23日~8月27日に公開された韓国スタートアップの調達のうち、調達金額を開示されたものは16件で総額は1,212億5,000万ウォン(約114億円)に達した。

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主なスタートアップ投資

  • オンライン名品専門プラットフォーム「Catch Fashion(캐치패션)」を運営する Smile Ventures(스마일벤처스)が210億ウォン(約19.8億円)を調達。ハイブランドの公式海外オンライン販売チャネルを30以上提供、商品価格をリアルタイムで確認できるアグリゲータの役割を持つ。350万種に及ぶ世界中の公式ブランド品を多様に比較・検索できるメタサーチサービスと、決済まで簡単に解決できる技術力を保有。投資最適化により、オーダーメード型サービス、カテゴリ拡張を実施の予定。
  • 液化水素の専門企業 Hylium Industries(하이리움산업)が136億ウォン(約12.8億円)を調達。韓国政府が出資する科学技術研究院(KIST)で生み出された技術をもとに、韓国国内で初めて液化水素の生産、貯蔵、輸送技術を独自に開発した企業だ。UAM(都心型航空モビリティ)、ドローン、無人船に必要な液化水素パワーパックを開発し、国内外の主要企業に供給している。
  • 培養肉企業 Space F(스페이스에프)が70億ウォン(約6.6億円)を調達。韓国産学研出身の専門家集団が設立した企業で、培養肉の生産に不可欠な筋肉幹細胞の分離、培養・無血清培養液の開発などの特許と源泉技術を保有。豚の幹細胞を活用し、培養豚肉プロトタイプ開発に成功している。
  • SodaGift(소다기프트)」を運営する SodaCrew(소다크루)が57億ウォン(約5.3億円)を調達。海外から韓国向けにプレゼントするサービス「Gifticon(기프티콘)」、モバイル商品はリアルタイム、花、健康製品などの配送サービスを提供。調達した資金を使い、北米、オーストラリアなどに海外ギフトを送るインフラ構築を計画。
  • AI 音声合成企業 Lovo(로보)が53億ウォン(約5億円)を調達。最近、誰もが自分の AI 音声で収益を得られる「Lovo Marketplace(로보마켓플레이스)」をローンチした。調達した資金で、感情を表現することができる100以上の音声生成技術を開発する予定。
  • 生徒と保護者が使うアプリ「今日学校(오늘학교)」を運営する Athenas Lab(아테나스랩)が35億ウォン(約3.3億円)を調達。昨年、今日学校のローンチから2ヶ月でアプリストアの教育カテゴリで1位にランクイン。会員60万人を集め、レッスンや課外マッチングの「Prompie(프람피)」も運営。調達した資金を使って技術を高度化し、新たに人材を迎え入れる計画だ。

トレンド分析

アーリースタートアップ投資で ESG を考慮すべき理由

ESG(環境‧社会‧ガバナンス)経営が話題だ。今、大企業だけでなく、スタートアップもサステナビリティ(持続可能性)を達成するために ESG 経営を追求しなければならないという声が出てきている。投資家もまた、スタートアップ投資の基準に ESG 項目を検討し始めたが、この仕組みをアーリースタートアップにまで適用する様相を呈している。業績測定が困難なアーリーなスタートアップにおいては、非財務的指標を評価する ESG が投資基準とするのは、むしろ適しているかもしれない。

過去にも ESG の概念はあった。しかし、投資収益率とは関連がないと考えられていた。企業が頑張っても、収益を出すのが難しい環境や、社会的責任などの費用を伴うその他の条件まで考慮すれば、投資収益率の面では不利であると考えられたからだ。しかし、投資収益率と ESG の間の相関関係がある調査が出されたことで、ESG を追求しなければならない正当性は徐々に大きくなっている。オックスフォード大学やハーバード大学などでも、ESG を追求する企業と業績の間の量関係があるという研究結果を出しており、これを裏付けている。

このような事実に基づいて、VC もアーリースタートアップに投資する際に ESG を念頭に置き始めた。シリコンバレーアクセラレータ 500 Startups は、投資先を対象に調査した ESG レポートを発表、すべての投資ステージに ESG フレームを適用し始めた。 ESG フレームは、スクリーニング(労働権、性の平等、環境など ESG 関連の事前アンケートを実施)、投資(ESG 専門家とのつながり、政策支援ツールを提供)、監視(ESG 専門家が企業 ESG 経営を監視)などで構成される。投資の過程で、これらを適用して ESG を追求する企業に投資、ESG 目標を達成できるよう投資先をサポートする。

一部では、あえてアーリーな段階から ESG を問う必要があるかという話もあるが、もしかしたら発生する可能性のある企業経営のリスクを管理するという次元で必要であると考えられる。男女平等が崩れている企業は、今後大きなコストの支払を迫られる可能性があることを、Google 集団訴訟事件で確認されたセクハラ、性差別事件で Uber CEO が辞任したことからも思い出すことができる。

スタートアップの立場でも ESG を導入しなければなら多くの理由がある。資金調達にももちろん有利だが、人材確保にも ESG が重要になった。価値を重視する MZ 世代(ミレニアル+Z世代)は、自分が働いている会社が、環境とサステナビリティ、性の平等文化への貢献をしているのかも評価する。このような価値観を持つ MZ 世代が増加し、ESG は人材募集の過程でも必要な要素になった。また、製品の購入基準に「環境にやさしい」が含まれるなど、価値消費がトレンドになると ESG は無視できない重要基準となった。

その結果、アーリーな段階から ESG に基づい経営方式を追求することで、スタートアップは、認知度向上、人材確保などの企業競争力を強化して継続成長できる踏み台を用意することができる。投資家の立場からも、今後のスタートアップの成長に応じた回収が期待できるという点で、ESG はアーリースタートアップと投資会社の両方に重要な達成目標となっている。

【via StartupRecipe】 @startuprecipe2

【原文】

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