台湾のAIスタートアップシーン、2021年上半期のトレンドを振り返る

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世界は1年以上前からパンデミックと付き合っている。ワクチン接種はすでに世界中で行われているが、コロナ禍に企業が採用した多くの劇的な変化は後戻りしようがないものだ。スタートアップも企業も、業務を効率化して新常態下で生き残るために、AI、クラウド、デジタルトランスフォーメーションにますます注目し、ビジネスのやり方を永久に変えている。

2021年上半期、台湾の AI エコシステムは、Appier(沛星互動)が日本で上場し、ユニコーンの地位を正式に獲得した初の台湾のスタートアップとなったことで大きな節目を迎えた。さらに、AIチップスタートアップ Kneron(耐能)は、年初に大手電機メーカーの HonHai(鴻海)と Winbond(華邦電子)から資金とリソースを得ており、テック大手から高効率なコンピューティング機能への需要が増し続けていることを示している。

AppWorks Accelerator(之初加速器)は、過去6ヶ月間の学びをもとに、台湾の AI エコシステムマップ2021年上半期を更新した。猛烈なスピードで進むデジタル導入に伴い、一部のアプリケーションは特定の業界に限定されなくなったため、業界横断的なソリューションやテクノロジーに分類し直しましたが、これは台湾の AI エコシステムをより反映していると考えている。

エコシステム全体の変化を確認したところ、2021年上半期の注目すべき傾向がいくつか見られた。

AI における新たな視点と機会

Hive Ventures(蜂行資本)が2021年第1四半期に発表した台湾企業向けの AI レポートによると、25%の企業が比較的成熟した AI アプリケーションを組織内に導入している。また、インタビューを行った企業の53%が、組織に AI を導入する必要があると考えており、AI をより効果的に展開・適用する方法を学ぶことが、多くのリーダーにとって最優先事項となっている。

我々は、企業が外部のソリューションを直接求めることから、連携されたデータの選別、応用分野の定義、AI モデルの開発と展開、そして最終的には組織における AI の同化を実現するための内部チームの構築へと進んでいることに気づく。

このような傾向があるからこそ、数多くの AI イネーブラが市場で大きな勢いを増しているのだ。 企業が最高の効率で AI を導入することの支援を目指した機械学習エンジン開発の ProfetAI(杰倫智能)は、2021年初頭に AU Optronics(友達光電)、Hive Venturesなどの投資家からプレシリーズ A ラウンドで資金調達した。

また、Infuse AI は、2021年第1四半期に Wistron(緯創)がリードした430万米ドルのシリーズ A ラウンドで資金調達を実施、MLOps(Machine Learning Operations)プラットフォームの開発を続けている。より多くの企業が AI モデルを展開・管理することを支援すべく、今年はモデルの開発、管理、モニタリングが最適化される。

マーテック(マーケティングテクノロジー)の次のステップ

台湾で e コマース普及率が高まる中、バーチャルとフィジカルのセールス&マーケティングを融合させた OMO(Online-Merge-Offline)のコンセプトは、強力な可能性を示している。Google がサードパーティ Cookieの 廃止を発表した影響で、企業はオンラインとオフラインに散在するデータポケットの管理方法を見直す必要に迫られている。

具体的には、断片的な顧客データを効果的に蓄積・統合し、そこから得られる知見を活用して、機動的なマーケティング判断を行うことが課題となっている。このような問題は、マーテック(マーケティングテクノロジー)における AI イノベーションの新たな開発機会を生み出している。

複雑化するマーケティングの意思決定に直面して、必要なデータを自分で統合することはこれまで以上に困難になっている。そこで、マーテック企業は、他社とのアライアンスを積極的に模索し、共同でチームを結成してデータを共有したり、製品の内容を一緒に改善したり、さらには新しいサービスモデルを導き出したりするようになってきている。

新しいベンチャー企業同士の提携であれ、異業種での協力関係の模索であれ、2021年前半にはこうしたシナジーの糸口を見つけることができる。例えば、会話型 AI のスタートアップである GoSky(構思網路)とCrescendo Labs(漸強実験室)の2社は、動画プラットフォーム「iKala(愛卡拉)」の「KOL Radar」と協力し、ソーシャルコマースのソリューションを立ち上げるために必要なデータを収集した。

また、別のマーテックスタートアップ Accuhit(愛酷智能)は、2021年初頭にメディアの主要プレイヤーと協業し、AI とビッグデータのジョイントベンチャー「DaEX」を設立した。業界横断的な提携により、メディアの広告データをCDP(顧客データプラットフォーム)と連携し、包括的なマーケティングエコシステムを構築する。

Appier は、前述の資金調達のニュースに加えて、オムニチャネルのソーシャルコマースプラットフォーム「BotBonnie(邦妮科技)」を買収し、サービスやデータ分析を充実させた。このように、マーテックチームが強力なネットワークを構築する波に乗って、そのような相乗効果によってより多くの AI アプリケーションが誕生するだろう。

台湾の AI エコシステムにおける大企業の役割

台湾でも国際的にも、AI エコシステム全体の発展の中で、組織やプロセスに AI を連携する参加率が高まっている。スタートアップアクセラレータでは、2010年に設立され、2018年8月から AI やブロックチェーンに取り組む創業者にフォーカスした AppWorks Accelerator が、これまでに100以上のAIチームを卒業させ、台湾のAIエコシステムを構築し続けている。

また、2021年4月、AppWorks は、AI エコシステムに積極的な Wistron との提携を発表し、AI、IoT、クラウドコンピューティング、情報セキュリティの分野のスタートアップにフォーカスした「Wistron Accelerator powered by AppWorks」の第一陣を立ち上げた。Wistron グループのさまざまな事業部門は、これらのスタートアップと協力して、各部門のソリューションを提案し、AI/IoT エコシステム全体の中でより多くの成長機会を求めていく。

また、AI チップメーカー大手 NVIDIAは、アジア初の NVIDIA Inception AI スタートアップ拠点を台北郊外にある新北市林口のイノベーションパークに設立し、NVIDIA Inception AI アクセラレータプログラムを補完して、台湾に才能と革新的な技術を注入することを発表した。

また、SparkLabs Taipei、Taiwan AI x Robotics Accelerator、CIAT Accelerator など、AI スタートアップチームを支援するスタートアップアクセラレータは、いずれも AI スタートアップの参加を募集している。Taiwan AI Academy Foundation(略称 AIF、台湾人工智恵学校)と Taiwan AI Labs(台湾人工智慧実験室)は、それぞれ AI の教育と研究における台湾の代表的な機関だ。コンソーシアムである前者は、さまざまな産業における AI の導入を促進するために、産業界と学術界を組み合わせている。

AI プロジェクトの評価や変革戦略のサービスを推進している。台湾のスマートドライビングテストラボと桃園のイノベーションパークは、政府と企業のリソースを結びつけ、自動運転車のテストのための研究開発環境を提供している。組織が一丸となって AI アジェンダを推進している今、AI を連携する需要は今後も高まっていくだろう。

台湾のAIエコシステムマップ2021年上半期は、AppWorks と AIF が共同で作成しており、半年ごとに更新されている。マップのダウンロードはココから可能だ。

【via e27】 @E27co

【原文】

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