建築業界向け建材・家具検索プラットフォーム「TECTURE」運営、Coralなどから1.2億円を調達

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「TECTURE」
Image credit: Tecture

建築業界向けの建材・家具検索プラットフォーム「TECTURE」を開発・運営する tecture は24日、プレシリーズ A ラウンドで約1.2億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、Coral Capital と名前非開示の個人投資家を含む8社(者)。今回ラウンドで同社の累計調達金額は約1.9億円に達した。

tecture は2019年2月、建築家で SUPPOSE DESIGN OFFICE 代表の谷尻誠氏、編集者でコルク代表の佐渡島庸平氏、 開発者ユニット「AR三兄弟」の長男として知られる川田十夢氏、そして、隈研吾建築都市設計事務所や LINEを経て、現在 はtecture の代表取締役を務める山根脩平氏により設立された建築デザインの DX スタートアップだ。

国土交通省が推進する i-Construction に象徴されるように、建設業界にも DX の波は訪れているが、山根氏によれば、その恩恵に預かっているのは市場の3分の1を占める大手がほとんどだという。数の上では、コンビニ(約6万軒)や歯科医院(約7万軒)の数より多い、全国に10万軒ほどあるとされる中小の設計事務所や施工会社は、コロナ禍でテレワークが難しい業種の一つと言える。

山根脩平氏

設計事務所や施工会社のデジタル化を阻む一つの要素は、家具や建材などのカタログだ。一般的な設計事務所や施工会社で複数メーカーのカタログが2,000〜3,000冊は常備していることが多く、これを建築家や設計士が自宅に持ち帰って、どこかに置いておくことは不可能である。設計案もまた、施主への説明、工事事業者とのやりとりなど、ほぼ全ては今でも紙を使ってのものが主流だ。

TECTURE では、施工例の写真に対し家具や建材を紐付け、マウスオーバーするだけで、該当する製品情報が照会できるカタログの電子版データベースを構築している。重いカタログがなくても日本中どこからでも情報検索が可能で、マウスオーバーするだけで製品情報にアクセス可能な UI を実装。参照されることが多い過去5年ほどの主要雑誌された情報から、製品データを集めているという。

TECTURE のビジネスモデルは今のところ、家具や建材メーカーからの掲載料だ。データの蓄積を進める一方で、家具や建材が買える B2B や B2C のマーケットプレイスの運営も視野に入っているという。見込み客(潜在的な施主)はインテリアデザイン起点で建築家や設計士を選ぶこともでき、また、家具や建材起点でそれらを採用したデザインや建築家・設計士にたどり着くもできる。

UX としては、Pinterest みたいなイメージになる。ユーザが使い込んで行くと、その人のパーソナライズされた空間情報が作れるようになる。インテリアコーディネーターに頼まなくても、好きな空間にあった家具、好きな家具を取り入れた空間、どちらにも辿り着ける新しい購買体験を提供できるようになる。 (山根氏)

tecture の写真をブログに埋め込んだ例。マウスオーバーで商品名が表示されている。
Image credit: Tecture

実のところ、設計事務所や施工会社も、どの現場にどの家具や建材を使ったかは文字情報で残していることがほとんどで、未来の潜在顧客にポートフォリオを紹介しようにも、ビジュアルを使って細かく説明できるものは無かった。自社ポートフォリオの情報を蓄積したクラウド兼営業ポータルになり得ることから、設計事務所や施工会社も施工例の写真をアップロードするモチベーションになる。

TECTURE は設計事務所や施工会社に対し(そして、おそらく、潜在的施主に対しても)フリーミアムで提供されるが、将来は、API やプラグイン連携など便利機能を付加し、オプションでの有償サービスを提供する考え。施主と建築家のマッチングといったビジネス的観点よりも、より建築の世界を誰もがアクセスできるオープンなものにするロマンの観点で業界を革新していきたいと山根氏は強調した。

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