コロナ禍ピボットで息を吹き返すスタートアップの強さ【Canvas 9月号(9月17日〜9月24日)】

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コロナ禍ピボットで息を吹き返すスタートアップの強さ

今週の話題(9月17日〜9月24日):オンラインセールスSaaSのベルフェイス、シリーズDで30億円を調達——コロナ禍で競合台頭、リテール金融シフトが吉

今週はシルバーウィークだったこともあってか、資金調達のニュースは少なめ。いやむしろ、ここ数週間が立て続けに大型調達が続いていたためか感覚が麻痺していたのかもしれません。海外は通常運転ですが、年内上場を前にプレ IPO 調達をする大型スタートアップのニュースが増えている感があります。季節は秋となり、国内外共に今年を〝締める〟カンファレンスの案内が届き始めました。

DX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するサービスにとって、コロナ禍は総じて追い風として作用していると思いきや、ベルフェイスにとってはそうではありませんでした。自社にとっての追い風は競合にとっても追い風として作用し、そこで新たな差別化を強いられます。同社のピボットは、生き残りを賭ける起業家にとって、糧にできることも大きかったのではないでしょうか。

先週のタイミーもそうでした。コロナ禍で飲食業からの業務需要が落ち込み、物流業からの需要にスイッチできたことは、同社の大型資金調達に大きく貢献しました。ベルフェイス、タイミーの両社に共通していたのは、緻密な営業成績のウォッチです。コロナ禍で業績が落ち込む中でも、需要が伸びているか、維持できている領域を見出し、そこに経営資源を集中することが功を奏した好例です。

Image crredit: bellFace

ピボットこそ、スタートアップの十八番であるべき

  • 朝令暮改のようにスタートアップがビジネスを変えることを悪く言う人もいますが、スピードと柔軟性こそがスタートアップの強みであり、PMF(プロダクトマーケットフィット)の前後にかかわらず、頻繁にビジネスを変えることは、起業家の努力の賜物ではないでしょうか。今をときめく世界の有名起業家に共通するのは、今回が最初の起業では無かったということだ、という話もあります。

徹底的な顧客反応・営業成績のウォッチ

  • 社会情勢に伴って変化する顧客反応や営業成績を徹底的にウォッチすることは、ピボットを成功させる上で非常に有効に働きます。それまでに築いたアセットやチームリソースを生かすためにも、ウォッチから得られた分析を元に、リープするような他分野へのピボットよりは、リニアなサービス内容の変更、経営資源のウェイトのシフトの方が現実的でしょう。

後進の起業家のためにも、ぜひピボット体験を共有する

  • 失敗談を聞く機会を得られれば、少しは自分の成功の可能性を高めることに役立ちますが、失敗は不名誉だと捉える人は多く、失敗が共有される機会はスタートアップ業界に限らず稀です。しかし、ピボットは成功を目指す前向きな動きなので、賞賛と敬意を持って耳を傾けてくれるはずです。BRIDGE でもスタートアップがピボットしている場合、なるべくその経緯を記すようにしています。

今週の調達ニュース

今月の国内スタートアップの主要な資金調達ニュースをお届けします。

ファンファーレの皆さん
Image credit: Fanfare

自治体DX推進のガバナンステクノロジーズ、プレシードでデット含め5,500万円を調達(9月24日)

  • ガバナンステクノロジーズは、プレシードラウンドで井川幸広氏(シー・アンド・アール代表取締役社長)、田中豊氏 (アートグリーン代表取締役社長)、那珂通雅氏(ボードウォーク・キャピタル代表取締役社長)ほか個人投資家複数名からプレシードラウンドで資金調達したと発表した。調達額は5,500万円で、この金額には日本政策金融公庫などからのデットファイナンスが含まれる。

保育・教育・療育業界向けHRテックのカタグルマ、シードラウンドで資金調達(9月24日)

  • カタグルマは、シードラウンドで Gazelle Capital から資金調達したと発表した。調達額は開示されていない。

産業廃棄物の回収業務を効率化するファンファーレ、ALL STAR SAAS FUND2とCoral Capitalから1.5億円を調達(9月21日)

  • ファンファーレは、BEENEXT の ALL STAR SAAS FUND2、Coral Capital から1.5億円を調達を実施したと発表した。

飲食・食品業界DXのシコメルフードテックが、1.5億円を調達(9月21日)

  • シコメルフードテックは、ユナイテッド、セブンスターズキャピタル、グローウィング、塚本郵便逓送株式会社、そのほか個人投資家4名から、総額1.5億円の資金調達したと発表した。

オンラインセールスSaaSのベルフェイス、シリーズDで30億円を調達——コロナ禍で競合台頭、リテール金融シフトが吉(9月21日)

  • ベルフェイスは21日、シリーズ D ラウンドで約30億円を資金調達したことを明らかにした。このラウンドには、シンガポール VC の Axiom Asia Private Capital、三井住友トラスト・インベストメント、第一生命のほか、既存投資家であるインキュベイトファンド(今日発表の新ファンドからの調達)、SMBC ベンチャーキャピタルが参加した。累積調達額は85.5億円に達した。

アジアのニュース

今月のアジアのニュースをお届けします。

Image credit: ポンゲ・ジャント(번개장터)、SuperMakers(슈퍼메이커즈)

インドネシアのロイヤリティ・リワードプラットフォーム「TADA」、日本のギフティから資金調達(9月22日)

  • TADA は、日本のエンド・ツー・エンド e-gift 企業であるギフティから追加投資を受けたことを発表した。金額は非開示。

香港拠点の国際送金スタートアップAirwallex(空中雲匯)、シリーズEで2億米ドルを調達——時価総額は40億米ドルに(9月22日)

  • Airwallex(空中雲匯) は、シリーズ E ラウンドで2億米ドルを調達し、同社の時価総額は40億米ドルに達した。今回の資金調達ラウンドは、Lone Pine Capital(孤松資本)がリードし、G Squared、Vetamer Capital Management などの新規投資家も参加し、さらに既存投資家である 1835i Ventures、DST Global、Salesforce Ventures、Sequoia Capital China(紅杉資本)も参加した。

中国のB2B国際決済スタートアップXTransfer、シリーズDで1億3,800万米ドルを調達しユニコーンに(9月21日)

  • XTransfer は、シリーズ D ラウンドで1億3,800万米ドルを調達したと発表した。この調達により、同社はユニコーンとなった。アメリカの投資会社 D1 Capital Partners が今回のラウンドをリードし、既存の投資家が参加した。

中古品売買アプリ、おかず店ブランドが大型調達など——韓国スタートアップシーン週間振り返り(9月20日)

ソフトバンク、中国の配膳ロボット開発Keenon(擎朗)のシリーズDにリード出資(9月17日)

  • 中国の配膳ロボットメーカーである Keenon Robotics(擎朗)は、今回復帰した投資家であるソフトバンクがリードしたシリーズ D ラウンドで2億米ドルの資金調達を受けたことを発表した。Keenon によると、これはサービスロボット分野では過去最大の資金調達だという。

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