
本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載
GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。
今週の注目テックトレンド
住宅建築市場にもスタートアップの流れが到来しつつあるようです。
米国ではサンフランシスコやニューヨークのように地価が高騰している都市が複数存在しているのですが、こうした上昇し続ける地価とのコストバランスを取るべく、住宅価格の低価格化を求めるニーズが高まっています。建築コストを下げることで住宅販売価格を押し下げ、高い地価の都市でもいろんな人が住める環境が求められているのです。
今回紹介する「Juno」はAppleの元デザイナーによって創業された住宅建築スタートアップです。先日シリーズAラウンドにて2,000万ドルの調達を発表しました。同社は事前にある程度組み立てられたプレハブ素材を組み立てることで建築工程の省略・簡易・低コスト化を目指しています。出来上がっているパーツを建築現場で組み立てることで量産が可能となります。
こちらの取材記事によると、Junoは次の3つの点を重視しているとのことです
- 何度も繰り返し作られることを想定したプロジェクトを設計すること
- サードパーティによるサプライチェーンを広く分散させること
- プロジェクトを組み立てる人のために、指示書やツールを提供すること
ファッション業界に「ファスト・ファッション」の流れが登場したように「ファスト・ハウジング」のトレンドを生みだそうとしているのがJunoです。全米どこへいっても高品質な住宅を建てられるように、都市情勢に応じて再組み立てが可能、サプライチェーンを各地共通化することで住宅ソースの安定供給に努め、高い現場スキルを持たない人でも着工できるマニュアル化を図っています。
現在はオースティンにある5階建て24戸の住宅棟を着工しています。また、シアトルとデンバーでは、100戸以上の大規模プロジェクトが計画中であるとのことです。今後、このような100~300ユニット、8~12階建てのプロジェクトに力を入れていく予定とも記事で語っています。
Junoのようなプレハブ型の住宅建築手法を採用するスタートアップには「Mighty Buildings」や「Factory OS」などが挙げられます。なかでもFactory OSは工場を建築して、内部でベルトコンベアのように住宅を手軽に建築・出荷するプロセスを構築しています。Junoの強みとしては19年に渡りAppleで勤めた創業者の経歴も手伝い、高いデザイン性が差別化要因となりそうです。
世界ではある種「ハードウェア」に該当する住宅建築分野にも、アジャイル的アプローチが入り「ソフトウェア」の考えが浸透しつつあります。今後アジア市場全体においてもファスト・ハウジングの機運が高まってきてもおかしくありません。日本の住宅建築市場は海外と比較して特異な点もあるでしょうが、何かしたら規格を作った上で現地で一定クオリティの住宅を量産するような「Desgined in Japan」を掲げるスタートアップの登場もいずれ期待されるはず。世界の住宅市場へ切り込む企業が求められています。
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