日本型デカコーンはいつ現れるか?【Canvas 10月号(9月25日〜10月1日)】

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日本型デカコーンはいつ現れるか?

今週の話題(9月25日〜10月1日):クラウド監視カメラのセーフィーが上場、時価総額は一時期1,800億円超に

クラウド監視カメラサービスを展開するセーフィー(東証:4375)が9月29日、東証マザーズに上場しました。同社の株式公開価格は2,430円でしたが、10月1日の始値で最高値の3,700円をつけて先週の取引を終えました。

  • 最高値で計算すると、セーフィーの時価総額は一時期1,800億円を超えることになります。緊急事態宣言のひと段落で経済が復調傾向に向かうとの期待感から、東証上場銘柄の株価は総じて上向くことが期待されます。
  • この週末に開催された Incubate Camp では、時価総額1兆円のスタートアップを創出しようではないか、という話が投資家から出ていました。未公開であればデカコーンですが、昨今、このデカコーンが東南アジアでちらほら現れて始めています。
  • セーフィーの上場で興味深いのは、今回の上場で、親引け(幹事証券会社が発行者の指定する販売先へ売りつけること)を含め公開株式の7割程度が海外投資家に配分されていることです。これは海外投資家から日本市場が資金調達しやすくなっている状況を示唆していると見られます。
  • 最近、複数の VC が大型ファンドの組成を発表していますが、いずれも海外の機関投資家から多額の資金を調達しており、今後、日本からデカコーンが創出される上で原資となるのでしょう。

注目の数字とトレンド

今月特に注目を集めた数字やキーワードをお伝えします。

Photo by Pixabay from Pexels

Sequoia Capital、直近の投資の4分の1が仮想通貨関連

  • Sequoia Capital の直近の投資のうち、約25%に相当する10件が仮想通貨関連だという。そのうち5件はまだ公表されていない。Sequoia は Lightspeed、Accel、Bessemer と並んで、今年最も仮想通貨を扱う投資先を持つ VC となった。Andreessen Horowitz(a16z)は22億米ドルの仮想通貨ファンドを組成したが、他の VC も同様の仮想通貨ファンドの組成を急いでいる。
  • Bain Capital は3億米ドル、Lightspeed は規模不明だが仮想通貨ファンドを計画中。Lightspeed は、今年既に実施した約1.9億米ドルを含め、合計3億米ドルを仮想通貨スタートアップに投資するとしている。仮想通貨の特化ファンドを持つことで、 VC は資産への直接投資に関する SEC 規制を遵守できる。また、ファンド資金のトークン投資が2割未満であることを明確化できる。

インドスタートアップの調達総額、四半期記録で100億米ドルを突破

  • PwC India の報告によると、インドのスタートアップは2021年第3四半期に109億米ドルを調達し、四半期毎の資金調達額が初めて100億米ドルの大台に達した。この数字は、前年同期比で2倍以上、前四半期比では41%増となっている。フィンテック、エドテック、エンタープライズ SaaS の3分野で全体の約50%を占めている。
  • フィンテック分野ではこの四半期だけで、Digit Insurance、Five Star Finance、Cred、Groww、Zeta、BharatPe という6つのユニコーンが生まれた。インドの中でも、バンガロールと首都のデリー周辺が資金調達をするスタートアップの中心地域となっており、インド全体のスタートアップ資金調達額の76〜78%がこの地域のスタートアップで占められている。

仮想通貨・ブロックチェーンスタートアップへのVC出資額、2021年は過去最高の年となることが確実に

  • Crunchbase によると、VC 各社は2021年、過去のどの年よりも、仮想通貨やブロックチェーン製品に投資している。この動きで顕著な VC は、Andreessen Horowitz、Tiger Global、Cootue などだ。2021年の現時点までで、仮想通貨スタートアップの資金調達で、1億米ドルを超えたラウンドは39回で、昨年の14回から増加している。
  • 投資総額は160億米ドルに達し、この金額は2020年の37億米ドルから4倍以上増加した。大型調達は、80種類以上の仮想通貨をクレジットカードで購入できる「MoonPay」の4億米ドルのラウンド、自分の仮想通貨を貸し出して利子が得られる BlockFi の3.5億米ドルのシリーズ D ラウンド、金融機関から仮想通貨を安全に預かる Fireblocks の3.1億米ドルのシリーズ D ラウンドなど。

ユニコーン創業者の平均年齢は32.6歳

  • Geek Culture が後悔したインフォグラフィックによると、ユニコーン(時価総額10億ドル以上の未公開スタートアップ)を生み出した300人以上の創業者の年齢を調べたところ、平均年齢が32.6歳であることがわかった。
  • 最年少はオンライン学習ツール「Quizlet」創業者の Andrew Sutherland 氏(創業時15歳、ユニコーンになるまで15年)、最高齢はサイバーセキュリティ企業 Tanium 共同創業者 David Hindawi 氏(創業時63歳)だった。Hindawi 氏は、それまでにも2つのスタートアップを成功させている。

アメリカのスタートアップのイグジット、今年第3四半期までの収益総和が5,825億米ドルに

  • アメリカのスタートアップが、今年第3四半期までに売却や上場で得た利益の総和が5,825億米ドルに達したことがわかった。これらの多くは、SPAC(特別目的買収会社)、直接上場、IPO によるものだ。そのうち93件は第3四半期に実施された。
  • これは Financial Times が Pitchbook の公開データを分析して明らかになったものだ。アメリカでは、今年の VC 投資が昨年比4割増を記録し、また2000年以降で今年が最も IPO が多い年となった。Pitchbook の Cameron Stanfill 氏は、投資家らがイグジットを急いでいることの表れだと指摘している。

イギリスで今年上半期に生まれたユニコーンの半数以上がフィンテック

  • イギリスのフィンテック企業に対する VC 投資が過去最高額を記録した。年初来9ヶ月間で114億ドルを集め、今年第3四半期は四半期単位記録で過去最高額を記録した。このうちほぼ半分(50億ドル)はアメリカの投資家からのもので、政府規制の少ないイギリスの金融市場の優位性を示唆している。
  • Tech Nation の最新報告書によると、9月末までの3ヶ月間に VC がイギリスのフィンテック企業に投じた資金は、四半期ベースで過去最高の49億ドルに達した。フィンテック分野はイギリスのスタートアップエコシステムを牽引しており、2021年上半期にユニコーンクラブ入りしたイギリスのスタートアップ20社のうち、11社がフィンテックスタートアップである。

10分間で、100万米ドル相当以上の資金を調達

  • シンガポールの Nex10 Labs による NFT(非代替トークン)プロジェクト「Uninterested Unicorns」は、9月にトークン販売を公に開始してから10分以内に100万米ドル相当以上を調達した。このプロジェクトでは、合計で307イーサ(約1.2億円)相当のデジタル資産が販売された。発売開始から1週間で取引された NFT は、1,000イーサ(約4億円)相当の NFT が取引されたという。
  • Nex10 Labs は、e スポーツ企業 Team Flash のオーナーでもあり、アジア人コレクター向け NFT に特化したメディアプラットフォーム「The Asian Mint」共同設立者の Terence Ting 氏により設立された。Nex10 は、DeFi(分散型金融)と NFT を通じてグローバルな知的財産を構築することを目指している。

全世界のユニコーンの時価総額が3.4兆ドルを突破

  • 世界のユニコーンは現在1,000社弱となり、時価総額3.4兆ドルの価値に達したことがわかった。このうち、5,000億米ドルをわずか4社——Bytedance(字節跳動)、Stripe、SpaceX、Ant Group(螞蟻集団)——で占めているという。地域別のユニコーンの資金調達を見てみると、アメリカは前年比50%増の999億米ドル、アジアは前年比微増の510億米ドル、ヨーロッパは前年比3倍の390億米ドル。
  • 時価総額が400億ドルを超える企業である「クアドリコーン」は7社あり、最近ではBNPLの Klarna とデザインソフトの Canva が加わった。時価総額300億米ドルの「トライコーン」企業が7社あり、Instacart、Databricks、Flipkart、Revolut、Nubank、Cruise などがいる。今年はこれまでに83社のユニコーンが上場し、時価総額の総和は1兆米ドルに迫る勢い。2020年は38社が上場し、時価総額の総和は3,940億米ドルに達した。

Kleiner Perkins、今年のイグジット数が史上最大に達する可能性

  • Crunchbase のデータによると、アメリカの有名 VC である Kleiner Perkins は、投資ベースを鈍化させているにもかかわらず、今年、史上最大量のイグジットが出る見通しだ。同社の投資先からは今年既に Robinhood、UiPath、Duolingo、LegalZoom、Coursera の上場など26社がイグジットを果たした。
  • Kleiner Perkins の投資先は、2018年に28社、2019年に27社がイグジットしている。2021年は時期的にまだ4分の1が残っていることから、2018年や2019年の記録を大幅に更新することになりそうだ。同社は今年のイグジットで得た投資利益を公表していないが、開示された投資先の上場時目論見書によれば、Duolingo、LegalZoom、Coursera の最大出資者である。

今週の調達ニュース

今月の国内スタートアップの主要な資金調達ニュースをお届けします。

インフキュリオンが22億円調達を発表。左から:Minerva Growth Partners 長澤啓氏、インフキュリオン 代表取締役社長 丸山弘毅氏、Minerva Growth Partners 村島健介氏
Image credit: Infcurion

クラウド監視カメラのセーフィーが上場、時価総額は一時1,800億円超に(10月1日)

  • クラウド監視カメラサービスを展開するセーフィー(東証:4375)が29日、東証マザーズに上場した。株式の公開価格は2,430円だったが、10月1日の始値で上場以来最高値の3,700円をつけて先週の取引を終えた。最高値で計算すると、セーフィーの時価総額は一時1,800億円を超えたことになる。

スマートロック「Akerun」開発のフォトシンス、東証マザーズ上場へ(9月30日)

  • Photosynth(フォトシンス)は30日、東京証券取引所に提出した上場申請が承認されたと発表した。同社は11月5日、東証マザーズ市場に上場する予定で、大和証券とクレディ・スイス証券が主幹事を務める。証券コードは4379。70万株を公募し、561万3,300株を売り出す。なお、オーバーアロットメントは94万6,900株。

酪農DXのファームノートHD、14.4億円を調達——累計調達額は44億円に(9月30日)

  • ファームノートホールディングス(ファームノート HD)は、直近のラウンドで14.4億円を調達したと明らかにした。このラウンドに参加したのは、スパークス・グループ、マイナビ、丸紅(東証:8002)、前田工繊キャピタル、千葉道場、中部飼料(東証:2053)、SMBC ベンチャーキャピタル、KOBASHI HOLDINGS、萩原建設工業、イノベーション・エンジン。

不動産仲介DX「CANARY(カナリー)」運営、シリーズBで12億円を調達——アプリ累計DL数は100万件を突破(9月29日)

  • BluAge(ブルーエイジ) は、シリーズ B ラウンドで約12億円を調達したことを明らかにした。このラウンドは、エンジェル投資家グループの Angel Bridge がリードインベスターを務め、NTT ファイナンス、ABC ドリームベンチャーズなど。

動画広告制作SaaS「RICHKA」運営、シリーズBで8億円を調達——コロナ禍で内製化需要増、大企業中心に400社以上導入(9月28日)

  • リチカ(旧社名:カクテルメイク)は28日、シリーズ B ラウンドで8億500万円を調達したことを明らかにした。このラウンドには、GMO VenturePartners、大和企業投資、博報堂 DY ベンチャーズ、rooftop に加え、既存株主であるみずほキャピタル、新生企業投資、FFG ベンチャービジネスパートナーズ、DIMENSION、マネックスベンチャーズが参加した。

返品・交換対応をリピーターマーケティングに変える「Recustomer」、プレシリーズAで1.5億円を調達(9月28日)

  • Recustomer は28日、プレシリーズ A ラウンドで約1億5,000万円を調達したと発表した。このラウンドは Coral Capital がリードインベスターを務め、BEENEXT の ALL STAR SAAS FUND、グロービスの G-STARTUP が参加した。

スマホで買える「NOT A HOTEL」40億円分をネット販売開始へ、8.5億円の調達も完了(9月28日)

  • NOT A HOTEL はプレシリーズ A で、既存投資家であるANRI、GMO Venture Partners、SMBC ベンチャーキャピタル、個人投資家に加え、新たにオリエンタルランド・イノベーションズ、オープンハウス、マーキュリア インベストメント、GO FUND, LLP、BREWから資金調達した。調達額は累計で18億5,000万円となった。

アジアのニュース

今月のアジアのニュースをお届けします。

Animoca Brands が Kikitrade に追加出資。左から:Kikitrade 共同創業者兼 CEO Sean Tao 氏、Animoca Brands 会長兼共同創業者 Yat Siu 氏。
Photo credit: Kikitrade

インドのGlobalBees、時価総額5億米ドルでソフトバンクらから資金調達か——ブランド買収モデル「ロールアップ型EC」で急成長(10月1日)

  • GlobalBees が、ソフトバンクがリードする1億米ドルのラウンドで資金調達の交渉を行っていると、情報筋の話を引用してインド現地メディアの MoneyControl が伝えた。ソフトバンクはこの出資をコンバーチブルノートで実施し、1年ほど先に時価総額5億米ドルで評価することを約束している、と報じられている。

インド版メルカリ「Meesho」、時価総額49億米ドルに——来年末までにDAU1億人を目指す(10月1日)

  • Meesho」は、シリーズ F ラウンドで5.7億米ドルを調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、B Capital Group(Facebook 共同創業者 Eduardo Saverin 氏の VC)、Fidelity Management & Research Company、既存投資家として、Prosus Ventures、ソフトバンク・ビジョンファンド2、Facebook、そのほか、Footpath Ventures、Trifecta Capital、Good Capital など。

インドの中古車販売プラットフォーム「Spinny」、シリーズDでまもなく最大3億米ドルを調達しユニコーンに(9月30日)

  • Spinny」は、新たな資金調達ラウンドで最大3億米ドルを調達するために、新規および既存の投資家と交渉中にあると Entrackr が報じた。これにより Spinny の時価総額は最大19米億ドルに達する可能性がある。この調達ラウンドは Tiger Global がリードし、Avenir Growth、General Catalyst、Fundamentum、Accel らが参加する可能性がある。

仮想通貨各社、政府通達受け中国向けサービスを停止——中国ブロックチェーン界週間振り返り(9月21日〜9月28日)

  • 24日の中国政府からの指示により、世界中の仮想通貨会社が中国本土ユーザへのサービスを停止した。Huobi(火幣)と Binance(幣安)は、中国本土の顧客の新規登録を停止した。Alibaba(阿里巴巴)は、来月からマイニング機器の販売を禁止すると述べた。マイニングプール「fF2Pool(魚池)」は中国本土のユーザへのサービスを停止した。

メタバースの3iが2.6億円、3D顕微鏡のTomocubeが20億円調達など——韓国スタートアップシーン週間振り返り(9月20日~9月24日)

  • メタバース技術企業 3i(쓰리아이)が280億ウォン(約2.6億円)を調達。スマートフォン撮影補助装置「Pivo(피보)」とアプリを連携したプラットフォームビジネスに注力。体外診断企業 Tomocube(토모큐브)が212億ウォン(約20億円)を調達。前処理無しで細胞をリアルタイムに観察することができる 3D ホログラフィック顕微鏡技術の商業化に成功。

中国の配車プラットフォーム「T3(T3出行)」、約856億円を調達か(9月27日)

  • T3(T3 出行)が、国有金融コングロマリットの Citic Group(中信集団)がリードしたラウンドで50億人民元(約856億円)の調達に近づいていると、中国メディア LatePost(晩点)が名前非開示の情報筋3人を引用して23日に報じた。

東南アジアのEC物流スタートアップNinja Van、シリーズEで5億7,800万米ドルを調達しユニコーンに(9月27日)

  • Ninja Van は、既存投資家の Geopost/DPDgroup、B Capital Group、Monk’s Hill Ventures、東南アジアの政府系ファンド関連企業 Zamrud から、シリーズ E ラウンドで5億7,800万米ドルを調達したと発表した。

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