スタートダッシュから世界を攻めるスタートアップ2社あらわる
今週の話題(10月2日〜10月8日):HAX卒業生のBisu、3.5億円をシード調達——家でも尿や唾液をラボ並みの検査、アシックスと協業も / OTA連携で世界150カ国の空港送迎タクシーに送客、日本発「SmartRyde」が1.8億円をシリーズA調達
内需がそれなりに大きく、また文化や言葉の違いがあることから、創業初日からグローバル市場を目指す日本のスタートアップは、それほど多くはありません。まずは日本市場で地固め、そこから海外へと展開するという進め方は、ドミナント戦略的に正しいという考え方もあります。でも、スタートダッシュから世界を攻めるスタートアップは増えつつあり、先週はそんな2社が頭角を現しました。
- ケンブリッジ大学で日本語を専攻した後、法科大学院に進み、イギリスで弁護士資格取得後に投資銀行でアナリストを勤め、日本のディー・エヌ・エーで新規事業企画を担当していた Daniel Maggs 氏らが創業した Bisu。ヘルスケア IoT の分野で、日本を含むアジアよりも先に、アメリカやヨーロッパ市場へのサービスローンチを目指します。
- 3年前にリコーに買収された MakeLeaps の創業者 Jay Winder 氏も以前、消費者のプロダクトやサービスの品質要求レベルが高い日本市場で評価を得られることは、それ以外の国でユーザ獲得やマーケティング活動に有効に働くという説明をしていました。ハードとソフト双方のコンビネーションが求められる IoT 分野では、日本のエンジニアリングが力を発揮できるのかもしれません。
- SmartRyde は日本に事業拠点を持ちながら、現在は欧米のユーザが多数を占めるという、オンライン旅行代理店と空港タクシー会社を結ぶスタートアップです。新型コロナの沈静化が進めば旅行需要が回復することは想像に難くなく、顧客を獲得するチャネルを確保していることから期待できる成長株です。世界市場相手ゆえ競合も少なくないですが、さらなるサービスの差別化が待たれます。
今週の調達ニュース
今月の国内スタートアップの主要な資金調達ニュースをお届けします。

Image credit: Infcurion
不動産仲介会社向け自動追客SaaS「PropoCloud」運営、JIC VGIとサファイヤ・キャピタルから7億円を調達(10月8日)
- Housmart は、政府系ファンド JIC ベンチャー・グロース・インベストメンツ(JIC VGI)と PE ファンドのサファイア・キャピタルから7億円を調達したと発表した。同社の累計資金調達額は約14億円に達した。
HAX卒業生のBisu、3.5億円をシード調達——家でも尿や唾液をラボ並みの検査、アシックスと協業も(10月7日)
- Bisu は、シードラウンドで3.5億円を調達したと発表した。このラウンドは韓国の QUAD がリードインベスターを務め、アシックスベンチャーズ、15th Rock Ventures、パシフィコ・インベストメンツ、SOSV Investments が参加した。
VRでうつ病を治療するBiPSEE、プレシリーズAでBNVらから2.5億円を調達——2025年に医療機器承認を目指す(10月7日)
- BiPSEE は、プレシリーズ A ラウンドで2.5億円を調達したと発表した。このラウンドは Beyond Next Ventures がリードインベスターを務め、ANRI と Scrum Ventures が参加した。
ノーコードでテスト自動化「Autify」、WiLリードのシリーズAで1,000万米ドルを調達(10月7日)
- Autify は、WiL(World Innovation Lab)がリードしたシリーズ A ラウンドで1,000万米ドルを調達した。今回の資金調達では、Uncorrelated Ventures と個人投資家の Jonathan Siegel 氏が、既存投資家の Archetype Ventures、Salesforce Ventures、Tably に加わった。
スクラム採用プラットフォーム運営のHERP、シリーズBで9.5億円を調達——累計導入企業数は900社を突破(10月6日)
- HERP は、シリーズ B ラウンドで9.5億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、DCM Ventures、DNX Ventures、マネーフォワード。調達金額には日本政策金融公庫からの融資が含まれる。HERP の累積調達金額は約15億円に達した。
OTA連携で世界150カ国の空港送迎タクシーに送客、日本発「SmartRyde」が1.8億円をシリーズA調達(10月6日)
- SmartRyde は、シリーズ A ラウンドで約1.8億円を調達したと発表した。このラウンドは Angel Bridge がリードインベスターを務め、SMBC ベンチャーキャピタル、広島ベンチャーキャピタル、SG インキュベート、山口キャピタル、いよぎんキャピタル、Inventum Ventures、オプティマベンチャーズ、個人投資家として児玉昇司氏(ラクサス・テクノロジーズ創業者兼 CEO)と髙橋伸彰氏(フィル・カンパニー創業者、NOB 代表社員)が参加した。
物流ラストワンマイル効率化の207、シリーズAで5億円を調達——物流会社・荷主企業とのシステム構築・連携強化へ(10月6日)
- 207 は、シリーズ A ラウンドで約5億円を調達したと発表した。今回のラウンドに参加したのは、環境エネルギー投資、Logistics Innovation Fund(Spiral Capital とセイノーホールディングスによる運営)、Headline Asia、DG Daiwa Ventures。
京都発・工場管理SaaS「ものレボ」運営、1.8億円を調達——サプライチェーンプラットフォーム事業化へ(10月5日)
- ものレボは、1.8億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、BEENEXT の ALL STAR SAAS FUND、京都銀行(東証:8369)と京銀リース・キャピタルが共同運営する京銀未来ファンド、日本スタートアップ支援協会、スマレジ創業者の徳田誠氏、徳田誠氏の事業会社 BLEW。ラウンドステージは不明。同社はこれまでに、京銀未来ファンドから複数回にわたり出資を受けている。
AIの出した誤りを自動検知するCitadel AI、東大IPCとANRIから1億円をシード調達(10月4日)
- Citadel AI は、シードラウンドで東大協創プラットフォーム開発(東大 IPC)と ANRI から1億円を調達したと発表した。
投資型CF「イークラウド」、ジェネシアVとセレスから3億円を調達——スタートアップに個人が投資できる環境づくりを強化(10月4日)
- イークラウドは、直近のラウンドでジェネシア・ベンチャーズとセレス(東証:3696)から約3億円を調達したことを明らかにした。累計調達額は約7億円になる。
アジアのニュース
今月のアジアのニュースをお届けします。

Photo credit: Kikitrade
インド発クラウドキッチン運営のRebel Foods、シリーズFで1億7,500万米ドルを調達しユニコーンに(10月8日)
- Rebel Foods は、シリーズ F ラウンドで1億7,500万米ドルを調達し、時価総額が14億米ドルに達した。このラウンドのリードインベスターはカタール投資庁が務め、既存投資家である Coatue Management、Evolvence が参加した。
Grab、eウォレット「OVO」株式の90%を取得へ(10月8日)
- Grab は、Tokopedia と Lippo Group から株式を取得することで、インドネシアのモバイルウォレットプロバイダー Ovo の所有権を約90%に高めつつある、と Bloomberg が報じた。
インドの仮想通貨取引所「CoinSwitch Kuber」、a16zらから2.6億米ドルを調達しユニコーンに(10月7日)
- 「CoinSwitch Kuber」は、シリーズ C ラウンドで2億6,000万米ドルを調達し、時価総額は19億米ドルに達した。今回のラウンドに参加したのは Andreessen Horowitz と Coinbase Ventures に加え、既存投資家からは Paradigm、Ribbit Capital、Sequoia Capital India、Tiger Global。
NFTゲーム「Axie Infinity」開発元、シリーズBでa16zらから1億5,200億米ドルを調達(10月7日)
- ベトナムの Sky Mavis は、アメリカの VC である Andreessen Horowitz(a16z)がリードしたシリーズ B ラウンドで1億5,200万米ドルを調達した。このラウンドには、Accel Partners と Paradigmも参加している。
ウェブトゥーンプラットフォーム「TOPTOON(탑툰)」が23億円調達など——韓国スタートアップシーン週間振り返り(10月6日)
- ウェブトゥーンプラットフォーム「TOPTOON(탑툰)」を展開する Topco(탑코)が242億ウォン(約23億円)を資金調達。累積加入者数は2,200万人。ワンソース・マルチユース戦略でアジア地域への進出に成功し、今年7月に英語圏に進出し読者20万人を獲得。現在、ヨーロッパへの進出を計画中。
デジタル決済提供Ascend Moneyが15億米ドルを調達、タイ初のフィンテック・ユニコーンに(10月5日)
- バンコクに本社を置くフィンテック企業 Ascend Money は、時価総額15億米ドルで1億5,000万米ドルを資金調達した。これにより、Ascend Money はタイ初のフィンテック・ユニコーンとなった。今回のラウンドでは、アメリカの Bow Wave Capital Management と既存株主であるタイのコングロマリット Charoen Pokphand Group(CP Group)と Ant Group(螞蟻集団)が出資した。
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