VCハンズオンリアル座談会:VCハンズオンは必要か?

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写真左から:インタビュアー:慎正宗(グローバル・ブレイン Strategy / Biz Dev)インタビュイー:株式会社OKAN 代表取締役CEO・沢木 恵太氏、株式会社ROXX 代表取締役・中嶋汰朗氏

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載。全3回のうち、初回を掲載させていただく。

ベンチャーキャピタルがスタートアップの成長に対して資金だけでなく、ノウハウやリソースの提供を実施するケースが一般化しつつあります。独立系のVCで創業期から成長を支えるパターンや、CVCなどで本体となる事業会社との連携を模索するタイプなど、VCによってさまざまで、これがそのままVCのカラーリングにもつながっています。

グローバル・ブレインでも様々な支援チームを立ち上げ、具体的な企業成長のバックアップを実施しています。昨年9月に立ち上がったValue Up Teamもそのひとつです。

一方で、出資者からのこうしたハンズオンに対して懐疑的な視点を持っている起業家の方もいらっしゃると思います。最も事業に精通しているのは自分たちであるという事実は間違いなく、時には支援という名の「おせっかい」に終わる可能性もなきにしもあらずだからです。

ということで本稿では実際にハンズオンを受けた2社に登場いただき、具体的にどのような取り組みが実施されたのか、お二人へのインタビューを通じてメリット・デメリット含めてお伝えしたいと思います。(文中の一部敬称は略させていただきました)

インタビュアー:慎正宗(グローバル・ブレイン Strategy / Biz Dev)
インタビュイー:株式会社OKAN 代表取締役CEO・沢木 恵太氏、株式会社ROXX 代表取締役・中嶋汰朗氏

ハンズオンが必要なタイミングとは

:今日はValue Up Teamの紹介と、そもそもVCにおけるハンズオンは役に立つのか立たないのか、また、どのような状態であると支援が役に立つのかについて、皆さんの意見も交えながら話ができればと思います。よろしくお願いします。

まずは自己紹介ですが、私は去年の6月にグローバル・ブレイン(以下、GB)に入社しまして、Value Up Teamの設立に携わりました。その前は三陽商会で、経営戦略やデジタル戦略、新規事業、M&A、JVなどに従事していました。

Value Up Teamのメンバーとしては、最近までピンタレスト・ジャパンの代表取締役社長でアジア統括をやっていた定国直樹さんや、メルカリのデータアナリストだった伊藤暁央さんなどがいます。最近はキャピタリストの兼務メンバーなども加わって、一緒に支援しています。

我々のチームの行動規範は「現場至上主義」です。CXOはもちろん、支援先のメンバーの皆さんと一緒に現場に入り、戦略・施策の解像度を上げていくことを一生懸命やっています。

またGBには他にも優秀なメンバーがいますので、チームメンバー以外も巻き込みながら進めています。それからLPの皆さんもですね。GB以外の株主の方も含めて、できるかぎり巻き込みをかけていくことを心がけています。ただ、一番大事なのはやっぱり支援先の皆さん。皆さんファーストということでやらせていただいています。

:まず皆さんの会社でこんなことが起きてませんか?という話から。

たとえば予実のずれが続いて形骸化しちゃってるとか。特に下期ですね。ギャップが大きくて修正修正の連続。また、成長角度がけっこう寝てるんだけど、ボトルネックが何か明確に説明できない。結果として取締役会で、社外取締役や株主に勝ち筋が見えない、解像度が浅いって言われる。

別の軸だと、ミドルマネジメント能力の問題。組織が大きくなってくると、生え抜きメンバーと中途採用メンバーがあんまりフィットしてないみたいなことは起きがちですよね。部門間が縦割りになって連携が取れていないとか。30人ぐらいまでは全部見えてたのに、いまや現場まで何が起きてるか分からないとか。メンバーを集めて会議しても、活発な意見が出ないとか。

沢木:起きますね・・・。

:中嶋さんどうですか?

中嶋:めちゃめちゃ該当してます。特に組織のところは急拡大していくとなおさら。

沢木:ひずみが起きるんですよね。

:課題の多くって、戦略と施策の解像度の低さなんですよね。これはマイク・タイソンの言葉なんですけど、顔面にパンチを受けるまではみんな「計画」があるんです。けど、顔面にパンチを受ける時は何かフェーズが変わった時だと思ってます。資金調達をして攻めなきゃいけないとか、今までSMBが中心顧客だったけど、ミッドエンプラに攻め込まなきゃいけないとか、プロダクトに新しいアップデートがあったとか。

フェーズが変わった瞬間にけっこう今までと違うパンチを食らう。その時に今まで立てたプランがけっこうガタつくみたいなことがあるのかなと思っていて、そんな時に我々一緒に支援に入らせてもらうことが多いです。

戦略、施策、解像度とは何か

:「戦略」とは現状と目標の間のギャップを特定した上で、そこを埋めていくための勝ち筋を描くことだと思ってます。琴坂将広さんの「経営戦略原論」にありますが、「特定の組織が何らかの目的を達成するための道筋」だとか、「どのターゲットに対してどのようなプロダクトサービスを提供するのか、そしてどのように資源を配分するのかを選択すること」なんですね。この選択が難しくて、いろいろやりすぎちゃうってのはあるあるだなと思います。

次に「施策」ですが、これは勝ち筋を実現するための具体的な作戦とか、一連の行動計画の塊ですね。ここでよくあるのは、達成・改善すべきKPI、KGI、その目標値、責任者、期限などがちゃんとセットになってないケース。

全ては仮説なので、検証して改善しなきゃいけないんですけど、割と検証しないでやりっ放しっていうのもけっこうある。

最後に「解像度」の話ですが、『解像度が高いというのは一つの事象や原因や構造、流れを適切に要素分解した上で、その要素について詳しく言える状態』* であったりとか、『どの要素が重要なのかを的確に見定められていること』* ですね。

* 引用元:馬田隆明(東京大学FoundX): 解像度を高める Speakerdeck

戦略と施策を解像度高くできると、パンチを受けた時もあんまり怯まないプランが立てられるんじゃないかなと思いながら支援しています。

ここで沢木さんと中嶋さんに質問なんですけれども、お二人はどれぐらいの頻度で全社、部門戦略、施策を策定してますか?

沢木:支援いただく前は、この辺りができてなかったですね。解像度が低いから戦略が描けない。戦略が描けないから会社の方向性が揃わない。で、全体のスピードが落ちていく、みたいなことが起きてました。

:中嶋さんのところはどうですか?

中嶋:うちは逆に、細かく細かく把握していきたくなるタイプだったので、全部理解していないと気が済まないというのがボトルネックでした。自分が理解していることが理解されているとは限らない、というところにも苛まれることはあるかな。

:意外と大事なのは、その戦略ってちゃんとドキュメントに落ちてますか?ということです。あとはモニタリングの検証もですね。週次では追っかけているのに、クオーターとか半期では振り返りされていないなども、あるあるかなと思います。

沢木・中嶋:あるあるですね。

次につづく:一般的な支援と違う「GB流の支援」とは

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