
BMWの未来の工場の青写真
(前回からのつづき)BMWがNvidiaのGTC November 2021 Conferenceで行った4つのセッションは、BMWがどのように生産拠点を未来の工場に変えていくかという青写真を示している。その青写真の中核となるのは、バックエンドの統合サービスを適切に行うことだ。これにはProjectWise、BMWの社内システムであるPrismaおよびMAPP、Tecnomatix eMSとのリアルタイム統合が含まれる。
BMWは技術スタックのフロントエンドの各アプリケーションとのライブシンクをサポートするOmniverse Connectorsを利用している。フロントエンド・アプリケーションには、多くの主要な2Dおよび3Dコンピュータ支援設計(CAD)、リアルタイム・ビジュアライゼーション、製品ライフサイクル管理(PLM)、および高度なイメージング・ツールが含まれる。BMWは、Nvidia Omniverseを集中型プラットフォームとして採用し、さまざまなバックエンドおよびフロントエンド・システムを大規模に統合することで、技術スタックを拡張し、31の製造工場におけるアナリティクス、AI、デジタル・ツイン・シミュレーションをサポートした。
リアルタイムでのモデルのカスタマイズを実現
他の企業が失敗する中、BMWがNvidia Omniverseをどのように導入したかは、未来の工場への取り組みの成功例を知る上で重要だ。BMWは、CAD、PLM、ERP、MES、品質管理、CRMなど、生産に不可欠な各システムの異なるクロック・スピードやケイデンスを、誰もが理解できる単一のデータ・ソースに基づいて同期させる必要があることを早くから認識していた。
Nvidia Omniverseは、データ・オーケストレーターとしての役割を果たし、各部門が解釈して行動できる情報を提供する。BMW AGの取締役会メンバーであるMilan Nedeljković氏は次のように述べている。
「グローバル・チームは異なるソフトウェア・パッケージを使用して共同作業を行い、完全なシミュレーションで動作する機能を使用して、リアルタイムで工場を設計・計画することができます。これは、BMWの計画プロセスに革命をもたらしました」。
製品のカスタマイズは、BMWの製品販売と生産の大半を占めている。現在、年間250万台の自動車を生産しているが、その99%がカスタムなのだそうだ。BMWによると、各生産ラインは10種類の車のいずれかを迅速に構成して生産することができ、それぞれの車には10種類のモデルにわたって最大100個以上のオプションが用意されており、顧客は最大2,100通りのBMWを構成することができる。さらに、Nvidia Omniverseを使用することで、BMWは新しい大型モデルの発売に合わせて工場を迅速に再構成できる柔軟性を備えることができるようになった。
ラインの改善をシミュレートして時間を短縮
BMWが製品カスタマイズ戦略に成功したのは、生産に不可欠な各システムがNvidia Omniverseプラットフォーム上で同期化されているからだ。その結果、あるモデルをカスタマイズする際のすべてのステップで顧客の要求が反映され、各生産チームにもリアルタイムで共有される。
さらにBMWは、リアルタイムの生産モニタリングデータをデジタルツインのパフォーマンスのベンチマークに利用しているという。BMWのエンジニアは、工場全体のデジタル・ツインを使って、各モデルの生産工程のどこをどのように改善すればよいかを迅速に把握することができる。
例えば、BMWはデジタルヒューマンとシミュレーションを使って、作業者の人間工学と効率性のための新しいワークフローをテストし、実際の従業員のデータを使ってデジタルヒューマンを訓練している。また、工場内に設置されているロボットについても同様のことが行われている。リアルタイムの生産・プロセスモニタリングデータとシミュレーション結果を組み合わせることで、BMWのエンジニアは改善すべき点を迅速に特定することができ、品質、コスト、生産効率の目標を達成し続けることができる。

BMWのような複雑な製品カスタマイズ戦略を成功させるためには、製造業が依存するすべてのシステムがリアルタイムで互いに同期していなければならない。各システムが共通して動作し、各チームがそれぞれの仕事をするために必要なデータや情報をリアルタイムに提供する必要があるのだ。今日、BMWはこれを実現しており、モデルごとの構成レベルまで大規模な計画を立てることができる。
また、各モデルの構成をNvidiaのOmniverseで完全に機能するデジタル・ツイン環境でテストし、新しいモデルを生産するために生産ラインを再構成することができる。既存の生産ラインとデジタル・ツインから得られるリアルタイムの生産およびプロセス・モニタリング・データは、BMWのエンジニアリングおよび生産計画チームが、どこで、どのように、なぜデジタル・ツインを修正して、新しい改良点を生産に移す前に完全にテストするかを知るのに役っているそうだ。
【via VentureBeat】 @VentureBeat
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