IVS 2021 Fallのピッチコンペティション「LaunchPad」の優勝は、ミレニアル女性のためのキャリアサービス「SHElikes」が獲得

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本稿は、11月17〜19日に開催される、IVS 2021 Fall in 那須の取材の一部。
本稿における写真は、いずれも IVS 主催者によるもの。

19日夕、IVS では恒例となっているスタートアップ・ピッチコンペティション「LaunchPad」が実施され、ミレニアル女性のためのキャリアサービス「SHElikes」が優勝を獲得した。

LaunchPad の審査員を務めたのは、

  • 朝倉祐介氏 シニフィアン 共同代表
  • 浅田慎二氏 One Capital 代表取締役 CEO
  • 伊藤かつら氏 日本マイクロソフト 執行役員 チーフラーニングオフィサー プロフェッショナルスキル開発本部長
  • 汾陽祥太氏 HENNGE 執行役員 社長室長
  • 木下勝寿氏 北の達人コーポレーション 代表取締役社長
  • 金子剛士氏 East Ventures パートナー
  • 金子好久氏 大和証券 常務取締役
  • 杉江陸氏 Paidy 代表取締役社長 兼 CEO
  • 高宮慎一氏 グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー
  • 千葉功太郎氏 千葉道場 代表取締役/ジェネラルパートナー
  • 手嶋浩己氏 XTech Ventures 代表パートナー
  • 原田明典氏 ディー・エヌ・エー 常務執行役員 CSO 兼 イノベーション戦略統括部 統括部長
  • 平尾丈氏 じげん 代表取締役 社長執行役員 CEO
  • Paul McNani 氏 インキュベイトファンド ジェネラルパートナー
  • キャシー松井氏 MPower Parnters ゼネラルパートナー
  • 松本真尚氏 WiL General Partner & Co-Founder
  • 南章行氏 ココナラ 代表取締役会長
  • 野内敦氏 デジタルホールディングス 代表取締役社長 グループ CEO/Bonds Investment Group 代表取締役 兼 代表パートナー
  • 矢澤麻里子氏 Yazawa Ventures Founder/GP
  • 頼嘉満/Chiamin Lai 氏 UB Ventures Managing Director
  • 渡部恒郎氏 日本 M&A センター 取締役

副賞として、優勝チームには、豪華ディナー券(日本 M&A センター提供)、カタログギフト10万円分(NTT ドコモベンチャーズ提供)、LayerX ワークフロー1年間無料(LayerX 提供)、本当に叶う Amazon ウィッシュリスト(Amazon Web Service 提供)、株主優待カタログ掲載27品すべて(大和証券提供)、オリオン ザ・ドラフト1年分480缶(オリオンビール提供)、那須の築浅別荘4,000万円相当(デジタルシフト)が贈られた。

また、ファイナリストチームには副賞としてファイナリスト全チームに oVice 利用料割引(oVice 提供)、タクシー及びエレベータ CM の優待料金とテレシーアナリティクス無償提供(TELECY 提供)、クオリティスモールオフィス「H1O(エイチワンオー)」6ヶ月間無料(野村不動産提供)、LayerX インボイス 1年間無料(LayerX 提供)、ストックオプション発行またはシェアリング CFO または女性の社外役員に特化した紹介サービス「JOTORY」の無償提供(SOICO 提供)、freee 会計ベーシックプラン1年分無料利用権(freee 提供)、Notion 利用クーポン(Notion 提供)、Visa 加盟店で利用可能なポイント(paild 提供)、優勝〜3位までの入賞者に Daiwa Innovation Network 参加権(大和証券提供)が贈られた。

登壇したのは以下の14社。

【第1位】SHElikes by SHE

働く女性の半分は出産を機に仕事を辞めていて、男女の間には平均収入に3倍以上の差がある。その背景には、どこでも通用するポータブルなスキル、自分らしく働き続けるためのマインドの不測などの理由がある。この問題を解決するため、SHE は自分らしい働き方を叶える、ミレニアル女性のためのキャリアサービス「SHElikes」を運営する。

SHElikes では、在宅ワークや副業などで使える女性のニーズやトレンドを捉えたレッスン動画が80レッスン以上受けられるほか、受講生はさまざまな仕事を疑似体験し、自分にあった仕事やキャリアに出会うことができる。講師は全てロールモデルとなるミレニアル世代の女性達によって提供され、忙しい女性でも子育てや通勤のスキマ時間に受講できる。

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【第2位】Nudge by Nudge

ベリトランスの共同創業者としても知られるシリアルアントレプレナーの沖田貴史氏が取り組むのは、1枚からでも発行できる次世代型提携クレジットカード「Nudge」だ。申込や利用における UI/UX を極限まで最適化することで、特にミレニアル世代に受け入れられることを狙ったクレジットカードだ。月の平均利用額は7万円と、株主であるクレディセゾンユーザの2倍以上に達する。

不正利用に遭った場合にも、アプリからボタン一つで問い合わせが可能で、つながらないコールセンターに連絡する必要もない。提携カードのスキームを活用しており、1枚単位で最短3日間から新しいクレジットカードを発行可能。同社ではクラブ(提携先のスポーツチームやアーティストなど)を応援できるカードを発行している。ユーザがこのカードを使った利用額の一部がクラブに還元される。

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【第3位】NEXT HERO by VALT JAPAN

障がい者が就労することは難しいが、それを支援するのが全国にある就労継続支援事業所だ。ただ、就労支援支援事業所の業務は時給が低く、業務に従事した障がい者が豊かな毎日を送れる収入が得られるとは言い難い。VALT JAPAN がい運営する「NEXT HERO」は、自ら民間企業に業務受託を営業し、引き受けた業務を就労継続支援事業所に再分配することで、適価での業務従事を支援する。

需要の高い単純作業市場、物流市場、ルームメーキング市場に特化。創業後2年間は、全国の障害者就労支援施設・業界団体に足を運び、計約300施設・3,000名の障害者ワーカーのネットワークを構築した。すでに契約している就労支援時事業所はシェア10%を誇る。今年6月、みずほキャピタル、Z Venture Capital から、2億円を資金調達した

【第4位】HAKKI by HAKKI AFRICA

アフリカでは金融サービスが未発達であるため、無担保ローンを借りるのが非常に難しい。特に労働環境が過酷であるにも関わらず報われていないのはタクシードライバーだ。ケニアのタクシードライバーは、毎朝5時に起きて夜の9時まで仕事をしているが、自分の車を持つことができずレンタカーを借りて営業している。1年間車を借りるコストは、車を買えてしまう金額になるくらいだ。

HAKKI AFRICA は、アフリカの中古車に特化した BNPL サービス「HAKKI」を開発・提供。電子マネー(M-PESA)の利用履歴を分析してタクシードライバーの行動を信用評価し、ローンを審査して車を購入できる機会を提供する。多重債務を減点、タクシー売上のウィークリーベースの安定性を加点評価するアルゴリズムを開発し、これを実現している。

【第5位】Qast by Any

企業ではノウハウやナレッジが俗人化している、社内にあるはずの情報が見つからない、同じような質問ばかりで社内対応に時間をとられるといった課題がある。社内で1日に情報を探している時間は114分という統計さえあるほどだ。Any は、社内ナレッジのエンタープライズサーチクラウド「Qast」を開発する。

Qast を使えば、フロー的で流れていた社員同士のやり取りをワンクリックでストック型の情報として蓄積できるほか、テーマを設定し、Q&A 形式で社員が質問・回答を投稿できやすくしている。また、AI がタグを自動付与するため、情報整理の手間も省ける。添付されたファイルの文字列も検索対象となるため、検索効率が向上する。


以下は、惜しくも入賞しなかったが、ファイナリストとして優秀な成績を収められた方々。

Best Beer Japan by Best Beer Japan

クラフトビールの世界では卸業者など大手ブランドビールのようなの中間流通ネットワークが存在しない。クラフトビールを提供する飲食店はクラフトビールの醸造所に直接オーダーを入れ、低温配送などの宅配便などで直送してもらっている。使用後の空になったビア樽は、ブランドビールのように卸業者が回収してくれるしくみは無いため、飲食店は宅配便を使って醸造所に返却している。

Best Beer Japan は、このビア樽を醸造所相乗りのレンタル形式のものに標準化し、空になったビア樽を回収することで店舗の業務を効率化しビア樽回収のコストや手間を極少化する。また、同社は醸造所向けの ERP も開発している。既に空樽を飲食店から回収するシステムは構築済だったが、店舗〜醸造所でビール受発注のオンライン化を実現する。2018年7月2021年2月、主に個人投資家らから資金を調達している。

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Ordee by Mobile Order Lab

コロナ禍で多くの飲食店がフードデリバリを導入したが、複数のフードデリバリサービスを導入すると、店舗の現場担当者は複数のタブレットを操作する必要があり作業が煩雑になる。Mobile Order Lab が提供するのは、飲食店向け注文一元管理ツール「Ordee」だ。Ordee を使えば、タブレットが一つにまとまり、伝票の自動印刷できる上、POS 連携により入力操作も減らすことができる。

ゴーストレストランにも対応で、品切れも受付停止も、複数のフードデリバリ横断でまとめて操作することができる。店舗のみならず、複数店舗をまとめて管理できるチェーン本部向けのダッシュボードも提供。将来は 調理ロボットにも連携することで、注文受付から調理までをシステムで一貫提供できる仕組みを作る目標を持つ。

Canly by Canly

我々が外出先でアテもなく飲食店や小売店を探す場合、9割以上は Google 検索か Google Maps の結果に頼ることになる。したがって、この結果は、飲食店や小売店の業績へのインパクトが大きい。ここで Google 検索や Google Maps で Google マイビジネスの表示順位を向上させるのが MEO(Map Engine Optimization)だ。

店舗数の多いチェーン運営会社などがクラウド上で MEO を一元管理できるようにしたのがカンリーだ。改ざん防止機能などを用いた情報整備や、一括配信・管理機能による情報発信、投稿やクチコミ分析や返信、主要媒体との連携強化、SNS アカウント一括管理により、顧客との双方向のコミュニケーションを強化する。2020年7月と、2021年6月に資金調達。累計調達額は約5.3億円。

東京かあさん by ぴんぴんころり

家事代行だと育児は頼めず、ベビーシッターだと家事代行は頼めない。ぴんぴんころりは、第2のお母さんが家に来てくれる「東京かあさん」を運営。月額12,000円から使えるサブスクで、「お母さん」ができることであれば、何でも頼むことができる。他方、アクティブシニアに就労機会を提供する側面を持つ。

使いやすい勤怠管理システム、手厚いフォローアップなどに徹底的なサービスを提供することで、サービス契約者がサービスを提供するシニアを直接雇用されてしまう中抜きリスクを最小化することに成功した。現在の ARPU は約3万円。登録しているアクティブシニアは500人を突破した。ファーストリテイリングの福利厚生プログラムに採用された。

CREW Express by Azit

Azit は2015年10月から〝乗りたい人〟と〝乗せたい人〟をつなぐ移動のモビリティプラットフォームサービス「CREW」を運営している。このサービスを通じて得た知見をもとに、物流にまで拡大したのが「CREW Express」だ。非稼働時間の解決・オペレーションコストの削減・アルゴリズムによるオンデマンドでの最適配置などの徹底したDXを行うことにより、コストを既存のバイク便比で最大50%削減できる。

さらに、配車アプリでの数十万回に及ぶ乗車経験からのデータを元に、Azit 独自のアルゴリズムを利用することで、効率的な配車が可能となり、Web 上での依頼から約30分以内のオンデマンド配送を実現する。小売業や飲食業を営む企業は、料理や医薬品等の当日配送を安価かつ簡単に行うことできる。Azit は2018年9月に、約10億円を資金調達している

Spir by Spir

Spir は、社外の人とのアポイントメント調整を効率化する SaaS 「Spir(スピア)」を開発している。複数のカレンダーと連携し、自分の予定を確認しながら日程調整したり、参加者の予定を考慮して候補日を自動抽出したりできる。また、ビデオ会議サービス「Zoom」と連携しテレカンの実施準備も自動化可能だ。空いている時間帯の可視化や、相手に選択肢として提示する際の見やすさなどの点で差別化を図る。

現在の Spir は、カレンダー側が Google Calendar と Office 365 の Outlook、テレカンプラットフォーム側が Google Meet と Zoom に対応していて、今後 Microsoft Teams にも対応の予定。将来は、複数のカレンダーアカウントを管理できる機能も提供していきたいという。昨年11月にβローンチ、今年5月にシードラウンドで2億円を調達している。

ScheCon by TIME MACHINE

TIME MACHINE は、日程調整&オンライン名刺交換サービス「ScheCon」を運営。ScheCon は予定調整を16ステップから4ステップに減らせ、PC やスマートフォンでの予定調整がよりシンプルにできるサービスだ。Google カレンダー、Outlook カレンダーと連携し、調整された予定の通知は、カレンダにも自動入力される。Zoom、Google Meet、Microsoft Teams といった Web 会議と連携する。

オンライン名刺機能の連携により、過去に会ったかどうかの履歴も確認することができる。N対N での日程調整が強みで、70名の同時予定調整さえ可能。Zoom、Google Meet、Microsoft Teams といった Web 会議と連携する。これまでに、導入企業は5,000社、ユーザ数20,000人を突破した。

Pricing Sprint by Pricing Studio

サブスクサービスでは価格戦略は大きな部分を占める。顧客にとっては、煩雑な稟議プロセスを経なくても現場判断で導入できるメリットはあるが、料金にはシビアにならざるを得ない。提供側にとっては、同業の競合や既存サービスを意識しながら、機能の充実や利便性と同時に、価格の優位性を常に保ち続ける必要があるだろう。

Pricing Sprint」は、戦略コンサルティングファーム水準の、価格決定のための情報収集・分析の支援。仮に価格を上げたときに、どの水準でどのようなお客さんが離れてしまうのか、ということも手に取るようにわかる。既存ユーザに対し価格戦略のベースとなる情報収集を行い、最適な価格設定に必要な知見を提供する。プライシングスタジオは今年1月、プレシリーズ A ラウンドで1億円を調達した。

proteger by Kiva

Apple Care のように、追加保証料を顧客から受け取ることで延長保証サービスを提供したい事業者は少なくないだろう。しかし、延長保証をサービス提供するのは、EC 事業者にとって契約面と運用面でのハードルが高い。保証会社との契約が必要で、この契約は上位1%の事業者にしか提供されていないという。

Kiva は、どんな EC サイトでも Apple Care のような保証を提供できるサービス「proteger」を提供。proteger の API をEC サイトに埋め込むことで、延長保証サービスが提供できるようになる。保証料は過去の売上データなどから自動的に算出され、EC サイトを訪問したユーザは商品と一緒に延長保証をショッピングカートに入れるだけで契約できる。

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