Slackなどからキーワードだけで社内ナレッジを検索、エストニア発「Kipwise」が日本語版をローンチ

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Image credit: Kipwise

BRIDGE の初期の頃からの読者であれば(当時の呼称は Startup Dating だったが)、OneSky というスタートアップのことを覚えている人がいるかもしれない。アプリに組み込むことで多言語対応が可能になる翻訳支援スタートアップで、2011年に初開催した福岡のテック&スタートアップイベント「明星和楽」に招かれ、その後、我々が東京で開催したミートアップにも参加してくれたことが記録に残っている。

OneSky の共同創業者 Loki Ng 氏は OneSky の事業をもう一人の共同創業者である Greg Sung 氏(当時はアドバイザーとしていた)に託し、2016年にエストニアの首都タリンに渡って同国を象徴するスタートアップの一つ Jobbatical でプロジェクトマネージメントリードとマーケティング担当を務めた。その後、英語名を Loki Ng から Kwun-Lok Ng に改め、2018年からタリンを拠点に Kipwise という新たなスタートアップを始めている。

Kwun-Lok Ng 氏
Image credit: Kipwise

Kipwise は、企業向けのサーチエンジン型ナレッジマネジメントツールだ。Slack、Google Drive、Chrome、Trello などと連携、メッセージのやりとりを元に社内ナレッジが Wiki 形式で記録され、サーチエンジンのようにキーワードを入力するだけで必要な情報を取り出せるサービスだ。社内情報の共有が難しくなる数十人から数百人規模の中小企業、スケールアップ、スタートアップなどにフィットするという。これまで英語と中国語(繁体字)でサービスを提供してきたが、このほど日本語に対応した

多くの場所では日常的に英語が通じるため、まずは英語からスタートした。次に、日本語に対応させるための布石として、中国語にも対応させた。Kipwise は Slack と連携して使われることが多いが、中国では Slack がブロックされていて使えないため、今のところ、大きな市場とは捉えていない(従って、中国本土で使われる簡体字には対応していない)。(Ng 氏)

Image credit: Kipwise

企業内、特にリモートワークが増えた昨今の状況下では、ナレッジの共有こそが事業や生産性向上の成否をうらなう。ナレッジマネジメントという言葉には面倒臭そうな響きがあり、事実、Kipwise が200社以上に実施したアンケートによれば、90%の企業が現在使っているナレッジマネジメントツールに不満を持っていることが分かったという。こういったツールは、日々のワークフローから切り離されていて、ナレッジを保存するための作業が煩雑で、検索機能も限られているからだ。

Kipwise のチームは、エストニア、ブラジル、クロアチア、台湾、香港に拠点を置いてリモートで活動していたため、創業から4年以上にわたってリモートワークにおける課題を理解し、それを自分達のツールで解決してきた。ここにコロナ禍のリモートワークのブームがやってきたことが追い風となり、現在、Kipwise は53カ国以上で使われるようになった。ユーザの66%が、分散型やリモート型のチームだという。

Kipwise は2018年、Techstars London からプレシードラウンドで12万ユーロ(約1,600万円)を調達、2019年には Icebreaker.vc と2人のドイツ人エンジェル投資家から28万ユーロ(約3,700万円)を調達している。

<参考文献>

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