パンフォーユー、「全国パン共通券」をローンチへ——パン屋への店頭送客事業に参入

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Image credit: Pan for You

パン屋と消費者をつなぐプラットフォームを運営するパンフォーユーは、12月9日から「全国パン共通券」の展開をスタートする。立ち上がりの段階では、アンデルセン、ヴィ・ド・フランス、神戸屋をはじめ、多くの人が知るパン屋の20以上ブランドから全国合計500店舗以上が参加する見込みだ。パンフォーユーはこれまで、地域の特色豊かなパン屋の販路拡大を狙って、冷凍によるパンのデリバリやサブスクリプション販売を展開してきたが、大手チェーン展開するブランドも含め、パン屋実店舗への送客事業に参入する。

矢野健太氏

パンフォーユーは2017年1月、群馬・桐生で創業。当初は製造1社体制(スタイルブレッド)だったが、その後、パンの原料を選んで冷凍パンを届けてもらえるオーダーメイドサービスを展開する事業としてスタートした。2018年に入り、複数のパン工場/パン屋のパンを扱うサブスクリプション型のデリバリプラットフォームへとサービスをピボット、複数のパン工場/パン屋と中立性を保った取引関係を築くため、創業者で代表取締役の矢野健太氏が MBO した。

パンフォーユーは2018年から冷凍技術を使ったパンの家庭やオフィスへのデリバリ、2020年からはサブスクリプション形式で定期的に気に入ったパン屋を届ける「パンスク」などを提供してきた。近年では、映画館のコンテンツとコラボした独自パンの提供、パン屋のレシピを預かり代行製造して届ける「ゴーストベーカリー」など、B 向け事業も多角化しつつある。ファイナンス面では、2018年10月のエンジェルラウンド、2019年6月の GXPartners からのラウンドに続き、今年5月にシリーズ A ラウンドを発表したのは記憶に新しい。

昨年紹介した「sacri(サクリ)」のようなスタートアップの始めたサービスをはじめ、先月にはパン屋にイースト菌をはじめ製パン素材を供給する大手化学メーカー傘下のカネカ食品が「ぱん結び」をローンチするなど、ひと頃前までブルーオーシャンだったこの領域はにわかに慌ただしい様相を呈しつつある。個店パン屋をネットワークするプレーヤーはこれまで皆無だったが、素材供給や送客のタッチポイントを糸口にそれらをつなぎ合わせることができれば、新たなビジネスチャンスが生まれることは間違いなく先手必勝だ。

これまでの冷凍デリバリやサブスクの仕組みは、地域のパン屋さんに店頭以外での売上を増やしましょう、というものだった。「全国パン共通券」では、「店頭の売上もサポートします」というのが我々のスタンスだ。

全国パン共通券(デジタルチケット)を参加しているパン屋に持って行けば、その価値相当のパンが買える。群馬県内で色々実験しているが、店頭売上が1割増え、来店客の約半数が定期的にパンを買いに来てくれる客に転じる、という結果が出ている。(矢野氏)

Image credit: Pan for You

店頭でのサブスク(現行のパンスクとは別物)も来春以降に開始を準備しており、条件は店舗によるが、月の定額料金の支払だけで、1日につき食パン1斤を自由にピックアップできるというパン屋も現れそうだ。パン屋にとっては、固定客がついて定期的に足を運んでもらえることのメリットは大きい。仮に食パン1斤を赤字覚悟で提供しても、来訪客はそれ以外のパンをついでに購入してくれるケースが少なくないので、マーケティングのコストと天秤にかけても、十分に元が取れるというわけだ。

今年のコロナ禍で、パンフォーユーのもとにはパン屋からの問い合わせ、特に、都市部にあるチェーンや個店のパン屋からの導入伺いが増えたという。冷凍やサブスクはパッケージングや運送コストがかかるため、付加価値や差別化要素の高いパンに適用される傾向があり、すべてのパン屋のニーズにかなうものではなかったが、全国パン共通券の導入により、(個性豊かな地方のユニークなパン屋とは対照的に)都市部にあるチェーン店などユニバーサルなサービスを提供するパン屋も包摂できる可能性が高まった。

パンフォーユーはまた、パン屋のオペレーションシステム(OS)を構築している。これはパン屋の DX(デジタルトランスフォーメーション)にもつながり、店主や職人の勘や記憶に頼っていた個店のパン製造をスケールできる可能性が生まれる。EC 受発注管理 SaaS を使えば、売れ行きに応じた素材の発注スケジュール管理、大手流通に商品を載せるための JAN コード発行なども可能だ。宅麺がシンガポールで展開していたラーメン店の海外進出マーケティングのような仕組みを、パンフォーユーは将来、パンの分野で実現できるかもしれない。

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