自動運転の42dot、韓国のシリーズA史上最大の100億円調達など——韓国スタートアップシーン週間振り返り(11月1日~11月5日)

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本稿は、韓国のスタートアップメディア「Startup Recipe(스타트업 레시피)」の発表する週刊ニュースを元に、韓国のスタートアップシーンの動向や資金調達のトレンドを振り返ります。

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11月1日~11月5日に公開された韓国スタートアップの調達のうち、調達金額を開示したのは19件で、資金総額は1,974億ウォン(約190億円)に達した。

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主なスタートアップ投資

  • 自動運転スタートアップ 42dot(포티투닷)が1,040億ウォン(約100億円)を調達しシリーズ A ラウンドをクローズ。シリーズ A ラウンドとしては韓国最大規模。累積調達額は1,530億ウォン(約150億円)。調達した資金を使って、技術高度化、技術投資拡大(M&A、持分投資)、事業加速化(出資、合弁法人設立)、核心人材確保を始める予定。
  • 家畜デジタルヘルスケアソリューション「AID Korea(한국축산데이터)」が200億ウォン(約19億円)を資金調達。家畜舎に設置された監視カメラで家畜の動きを AI 分析し、血液から免疫力データを収集して家畜の健康状態を診断するソリューション「Farmsplan(팜스플랜)」を提供。調達した資金で豚以外への対象家畜種拡大、人材拡大、グローバル進出などを推進。
  • IVWorks(아이브이웍스)が205億ウォン(約20億円)を資金調達。システム半導体の核心素材である窒化ガリウム(GaN)ウエハーを生産する同社は、今回調達した資金を生産施設増設と人工知能生産プラットフォームの高度化に活用する予定。
  • AIスタートアップ ActionPower(액션파워)が133億ウォン(約13億円)を資金調達。ActionPower は音声認識、自然言語処理など AI コア技術基盤を提供。調達した資金を活用し、技術の高度化により動画の取り込み内容要約サービスなどを準備中。
  • 旅行スタートアップ Waug(와그)が120億ウォン(約11億円)を資金調達。調達した資金で国内外旅行アクティビティ産業の DX 推進に向け、ホテル管理システムの非対面 CMS(Channel Management System)及び PMS(Propety Management System)市場に進出予定。
  • 都市文化コンテンツプラットフォーム「UrbanPlay(어반플레이)」が85億ウォン(約8.1億円)を資金調達し、事業領域を地域に拡張、文化複合型の小売体験とハイパーローカルなど、新しい形態のライフスタイルトレンドに合わせた特化サービスを提供する計画。
  • 分散オフィス運営会社 Alicorn(알리콘)が40億ウォン(約3.8億円)を資金調達。ハイブリッドワーク環境移行のためのオンライン・オフライン統合プラットフォームの拡大を予定。
  • 仲介手数料半額不動産プラットフォーム「Dawin Property(다윈중개)」が30億ウォン(約2.9億円)を資金調達。事業領域をアパート、オフィス中心からワンルーム、ヴィラなどに拡大し、住宅や商店街に対するサービスも追加する計画。

トレンド分析

スタートアップがスタートアップを買収する理由

Tada(타다)

最近、「Toss(토스)」を提供する Viva Republica が Tada(타다)を運営する VCNC を買収した。金融プラットフォーム企業がモビリティスタートアップを買収したという事実に多くの人々が疑問を抱いた。近年、スタートアップがスタートアップを買収する事例が増えている中で、同業ではない全く異なる分野の企業を買収する事例もしばしば登場している。同種でも異種でも、スタートアップが事業拡大のための方法として買収戦略をとることは新しい話ではない。ユニコーンスタートアップにはよく見られた現象だ。

買収合併でスタートアップが成し遂げようとしているのは、事業領域の拡大、人材確保、技術確保、競合牽制、市場先取などだ。今年に入って大規模な資金を投資されたスタートアップが増加し、このような現象がより際立っている。

買収を通じて事業を拡大してきた代表的なユニコーンに Yanolja(야놀자) がある。Yanolja は急速に事業領域を拡大するため、2018年頃からスタートアップ買収はもちろん、投資も積極的になっている。IPO のために規模を拡大しているという話も出ている。昨年は Triple(트리플)、Nowbusking(나우버스킹)、Spring Onward(스프링온워드)、Lambda 256(람다256)、Frientrip(프랜트립)などに投資、レジャー総合プラットフォームを跳躍するための青写真を用意した。今年10月には韓国第1世代 e コマースプラットフォーム「Interpark(인터파크)」を2,940億ウォンで買収、海外旅行市場を本格攻略すると明らかにした。もはや、スタートアップが時代から取り残された上場企業を買うことも新しいことではなくなった。

Yanolja(야놀자)

今年は特にスタートアップ間の買収合併が活発だった。今年、大規模投資誘致に成功した企業の大半が、買収に熱を上げている。大規模な資金調達とともに買収合併に乗り出した代表的なスタートアップは以下の通りだ。

  • 金融プラットフォームの Viva Republica(Toss)が4,600億ウォンを調達 …… VCNC(Tada)を買収
  • データソリューションの韓国信用データ(한국신용데이터)が400億ウォンを調達 …… Persona(페르소나)を買収
  • ホテルソリューションの H2O Hospitality(H2O 호스피탈리티)が300億ウォンを調達 …… Replace(리플레이스)、ImGATE(아임게이트)を買収
  • 中古取引市場「ポンゲ・ジャント(번개장터、雷市場)」が300億ウォンを調達 ……「Price Golf(프라이스골프)」運営の S_Bridge(에스브릿지)、Market Inu (마켓인유)を買収
  • データ農業スタートアップ Greenlabs(그린랩스)が200億ウォンを調達 ……V Hows(브이하우스)、Meat Artisan(예술소)、Real Farm(리얼팜)を買収
  • シルバーテックの韓国シニア研究所(한국시니어연구소)が100億ウォンを調達 …… Smile Senior(스마일시니어)を買収
  • 「BanBan Taxi(반반택시)」運営の Kornatus(코나투스)が70億ウォンを調達 …… T-One Mobility(티원모빌리티)を買収
  • IT人材養成プラットフォーム「CodeStates(코드스테이츠)」が25億ウォンを調達 …… HDM(학생독립만세、学生独立万歳)を買収
  • Bucket Place(버켓플레이스)……  Zibda(집다)を買収
  • Six Shop(식스샵)……  Clayful(클레이풀)を買収
  • Socialbean(소셜빈)…… Wildcat(와일드캣)を買収

スタートアップが買収する際は同種のスタートアップを買収することが一般的だが、すぐに別の領域に事業を拡大するための異種間のスタートアップの買収事例も見られる。今年であれば、代表例は VCNC(Tada)を買収した Viva Republica だ。金融とモビリティは全く違う領域のようだが接点が無いわけではない。データという要素が2つの企業を結びつける。Tada の買収を通じて新しいサービスを披露、ユーザには Toss 決済などフィンテックを活用できる環境を整える計画だ。すでに東南アジアなど海外では金融とモビリティの結合が新しくはない。結局、Toss の Tada 買収も事業領域とユーザの獲得で規模を拡大し、Kakao など競合を牽制するためのものとして実施されたわけだ。

投資関係者らは、既存の大企業が社内で新サービスを社内で開発すべきと考える一方、スタートアップのような外部の力を資金を使って確保し、時間を稼いで早くスケールさせる戦略で市場を先取する動きに乗り出せば、今後スタートアップ間の買収合併事例はさらに増えるだろうと予想した。

【via StartupRecipe】 @startuprecipe2

【原文】

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