代替肉、介護DX、バーチャルヒューマン制作元などが資金調達——韓国スタートアップシーン週間振り返り(10月25日~10月29日)

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本稿は、韓国のスタートアップメディア「Startup Recipe(스타트업 레시피)」の発表する週刊ニュースを元に、韓国のスタートアップシーンの動向や資金調達のトレンドを振り返ります。

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10月25日~10月29日に公開された韓国スタートアップの調達のうち、調達金額を開示したのは17件で、資金総額は1,031億ウォン(約99億円)に達した。

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主なスタートアップ投資

  • 代替肉スタートアップ Gikuin Company(지구인컴퍼니)が280億ウォン(約27億円)を調達。代替肉「UNLIMEAT」を発売後、グローバル市場へ拡大中。コンビニエンスストア CU にベジタリアン製品を提供しており、ドミノピザとは UNLIMEAT を使ったピザやパスタを発売。代替肉専用に特化したクリーンミート(培養肉)工場を設立し、2022年上半期に稼働を目指す。
  • シルバーテックスタートアップの韓国シニア研究所(한국시니어연구소)が110億ウォン(約11億円)を調達。主力事業は在宅介護の DX で、訪問療養センターの行政業務自動化 SaaS、介護士求人求職お知らせサービスを運営。調達した資金を使って、全国のケアパートナーネットワークの拡大と積極的な買収合併に乗り出す計画だ
  • 冠動脈バイパス手術ロボット開発会社 LN Robotics(엘엔로보틱스)が80億ウォン(約7.7億円)を調達。術者の動作をロボットシステムで実現する自動化やハプティックなど、差別化された技術を実装したとの評価。調達した資金で、臨床試験を進める計画。
  • 子供のためのフィンテックを開発するスタートアップ LemonTree(레몬트리)が50億ウォン(約4.8億円)をシード調達。親が子どものお金管理、金融教育、株式投資まで一度に管理できるアプリサービスを準備中。
  • バーチャルヒューマン制作会社 dob Studio(디오비스튜디오)が50億ウォン(約4.8億円)を調達。 CG の代わりにディープラーニング技術でバーチャルヒューマン「RUI(루이)」を制作、コストと期間を大幅に削減。調達した資金で、AI 技術の高度化とバーチャルヒューマンコンテンツ制作プラットフォームを構築する予定。
  • オンライン趣味生活プラットフォーム「Hobbyful(하비풀)」が41億ウォン(約4億円)を調達。趣味コンテンツとキットを組み合わせて提供。資金調達を契機にクリエイター、ブランド、IP と協力し、趣味コンテンツに合わせた趣味キット販売事業を拡大。クリエイターコマースソリューションとその物流システムも構築の予定。
  • グローバルトラベルモビリティプラットフォーム「Movv(무브)」が40億ウォンを調達。東南アジアにドライバー付属のレンタカーサービスを披露し、成功の可能性を検証。韓国国内でもモビリティサービスをローンチ。アジア11カ国40以上の都市でサービス中。来年上半期にヨーロッパへ進出する計画。
  • 3Dデジタルファッションメタバースプラットフォーム「Breezm(브리즘)」が30億ウォン(約2.9億円)を調達。ナイキやフィラのようなブランドに多様な拡張現実(XR)技術を提供する同社は、アイテム形態と質感を再現できる技術を開発。NFT 市場への進出を準備しており、オンラインショッピングを超えてファッションメタバースへの参入を目指す。

トレンド分析

経験者が語る、Y Combinator に採択されるためのカギ

世界最高の評判を持つアクセラレータ Y Combinator(YC)に採択される韓国スタートアップが最近増加傾向にある。これまで Memebox(미미박스)SendBird(센드버드)Soomgo(숨고)Miso(미소)Mars Auto(마스오토)NFT Bank(NFT 뱅크)Quotabook(쿼타북)などが採択された。

また、SendBird は今年ユニコーンの地位を獲得した。コロナ禍で、YC はオフラインプログラムをオンラインに完全転換し、アメリカ国外のスタートアップに投資を積極的に進める一方、アジア地域のスタートアップ投資も拡大中だ。韓国スタートアップにも機会が増えたわけだ。

中でも、NFT 情報分析プラットフォーム「NFT Bank(2021年夏バッチ採択)」と株主管理プラットフォーム「Quotabook(쿼타북、2021年冬バッチ採択)」は、直近で YC 採択のニュースを伝えたスタートアップだ。両社の代表が YC のサポートを受けたいスタートアップのために経験を共有してくれた。

<NFT Bank(NFT 뱅크)CEO キム・ミンス(김민수)氏>

  • アメリカの大学卒業し、YC に関心が大きかったため、創業と同時に最初のマイルストーンを YC 採択に設定。ブロックチェーン分野と1人創業者の採択スタートアップが少なく悩んだが挑戦した。
  • 企業の一行紹介(タグライン)では、他の卒業チームの情報を参照。「UBER for ××」などが多く、これを真似した。
  • 資料の志望欄では、3つの問いに集中した。何をするのか、なぜ私たちなのかなど。
  • 資料では、どのように成長するのか、企業の将来価値を見るという観点でラフながら発展過程を説明した。1人創業者であるため、時間の推移に応じてプラットフォームの成長を見せた。
  • 1回目のエントリでは不合格。「5ヵ月後、また挑戦しろ」とメールをもらって再挑戦。サービスの評価を受けられるまでやるつもりで挑戦。
  • 2回目のエントリでは、問いの代わりに要素に集中し、プロダクト、チーム、トラフィックを強調し、簡単かつ簡潔に50単語で作成して合格。
  • 書類合格後のインタビュー日程は迅速に申請することをお勧めする。(早めに申込めば、2〜3週間の余裕がある)
  • インタビュー準備のために、エンジェル投資家の頼んでリハーサルを数多くこなし、YC 経験者の助けを得た。
  • 10分オンラインインタビューでは、YC のパートナー4人が参加し質問を受けまくる。
  • どんなサービスをするかという質問には、簡単に答えられるよう回答を準備。
  • 頑なに30~40の質問を受ける。チーム、マーケットトラクションにフォーカス。1つにつき、10〜30秒間で答えなければならない。答えは短く即答し、細かい説明はしない。インタビュー中にケンカにならないよう、創業者同士は事前に口裏を合わせておく。
  • 英語の問題ではなく、準備の問題。
  • インタビュー合格時の結果当日発表。追加のインタビューリクエストが来る可能性がある。
  • 「なぜ会社を韓国で設立したのか」という質問があった(YC から投資を受けるには、アメリカに社の登記を移転しなければならない)。
  • 直接パートナーから呼び出されたが、最終的に投資は拒否された。
  • 理由は、YC 内のブロックチェーン分野のネットワークが不足していたことと、当時の我々の時価総額が非常に高まっていたためだ。結果的に、すでにブロックチェーン分野でグローバル地位を持つ投資会社から資金調達した。
  • 今後の投資で持分希釈が予想より速くなるため、YC の持分7%も考慮した。
  • コロナ禍でオンライン進行に転換。オフラインネットワーキングのメリットが減ったため悩んだ末に YC から投資を受けることは拒否した。最終的には良い選択だったと思う。
  • アーリーの場合は、YC を無条件に推奨する。
  • NFT Bank が YC に採択された経緯は、ここで詳しく確認できる。

<Quotabook(쿼타북)CEO チェ・ドンヒョン(최동현)氏>

  • アジアへの市場拡大のサポートを受けるためにエントリ。スタートアップ参考資料などを探してより好奇心。 YC が投資契約標準を作ったところという特徴も魅力。
  • Quotabook はB2Bサービスでグローバルネットワークが重要。実際に採択されたチーム同士が互いにメールを送り、サービスを推薦するケースは多い。グローバルネットワークを迅速に構築できるメリットがある。
  • 書類はできるだけ具体的に書いて、主観的表現、主観的成果は避ける。
  • 数字を正確に言及し、現状を正直に論理的に作成。
  • 個人的にはオフラインプログラムよりもオンラインのメリットがあると思う(アメリカへ行って競う理由が無いから)。オフラインネットワーキングできないのは残念だが、経営層の移動の渡米が不要で時差ボケの影響も少ない。
  • インタビューの10分は本当に短い。インタビューで、プレゼンター各自の役割を分けたが失敗。ほとんど自分が答えた。
  • 「急速に成長している」と言うのではなく、数字で説明すること(Twitch 創業者 Justin Kan 氏のアドバイスを参考に)
  • その分野の専門家だと思って自信を持って話すこと。ただし、防御的ではなく率直で透明に説明すること。「不足していることはわかっているが、こう補完しようと思う」と答える。
  • アーリーであるがゆえに、チームに関する質問がある。力量が揃って互いに補完できている点を強調する。
  • 小さなアイデアでどのように大きくするか説明する。すべてを数字で話すこと。例としては、「私たちの顧客はX人、市場のサイズはX、私たちは市場のX%を占めるだろう。」
  • インタビューは短いので英語は練習すれば可能。ただし、採択されたチームは英語が上手な人がほとんどである。
  • 落ちるとメール、採択されると当日電話(Whatsapp)で知らせが来る。
    採択後には行政上の障壁が存在する。会社をアメリカに移転しなければならないことを考慮。Quotabook はシンガポールへの登記移転を進めている。
  • ネットワーキングでは情報役に徹し、メリットは自分から積極的に得ようとしないと得られない。とはいえ、あまりにネットワーキングに埋没する必要はない。事業成果を増やし、デモデイを過ぎても遅くない。
  • 公開デモデイの前に、YC 採択者同士で同窓デモデイが行われるのは特徴でありメリットだ。
  • YC 採択経験者から先に投資を受け、公開デモデイ時にはそれをレバレッジができるというメリットも存在する。

【via StartupRecipe】 @startuprecipe2

【原文】

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