医療メタバースを受け入れ始めた外科医たち〜ロンドンで開催された医療テックイベント「Future Surgery Show」から

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未来の手術室(Singularity University での Shafi Ahmed 氏 の講演から)
Image credit: Singularity University

ロンドンで開催された Future Surgery Show では、外科医がコラボレーションと医療成果の向上のために、医療メタバースを慎重に取り入れつつあることが明らかになった。外科業界は、手術ロボットや拡張現実(AR)、患者モデルの改良など、さまざまな意味で最先端の技術を率先して取り入れてきた。その一方で、これらの技術が未だにバラバラに開発されていることも明らかになった。

Medical Realities の最高医療責任者 Shafi Ahmed 氏は次のようには断言した。

今年はロボットの年だ。

ジョンソン・エンド・ジョンソンやメドトロニックなどの医療機器メーカーは、1997年に最初の内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」を発表した Intuitive Surgical のような初期のパイオニア企業と真剣勝負をしている。メドトロニックは最近、ロボットシリーズ「Hugo」のロボットのヨーロッパ承認を取得し、ジョンソン・エンド・ジョンソンは新システム「Ottava」を推進している。また、両社は、医療オムニバースを構築するためのツール「Clara」の一環として、NVIDIA と提携している。

Shafi Ahmed 氏(Singularity University での Shafi Ahmed 氏 の講演から)
Image credit: Singularity University

ある意味では、Ford と GM がついに Tesla の土俵に飛び込んだのと同じような感覚だ。外科手術の自動化が次の大きな課題であることを証明するものであり、それは運転支援付きの電気自動車が交通機関の未来であるのと同じことなのだ。

しかし、そこに到達するためには、単に優れたツールが必要なだけでなく、データのワークフローとガバナンスを変革する多大な努力が必要だ。医療データを確実に収集、整理、共有するためには、文化的、制度的に多くの課題があり、それは人体のための「Googleストリートマップ」を立ち上げるよりも複雑だ。

少しずつ前進

イギリスの Barts Health NHS Trust(バーツ・ヘルス NHS トラスト病院)で外科医として活躍している Ahmed 氏は、2016年に手術用メタバースを世界に紹介し、この分野ではちょっとした先駆者となっている。5万5,000人以上の人々が360度の手術生中継を視聴した。他の業界は彼に追いつこうとしているところだ。

イベント会場を見渡すと、ほとんどの最先端の進歩がこの願望に向かって実用的に進んでいることがわかった。あるベンダーは、4K 映像を手術室に導入することで、鮮明な映像が得られることをアピールしていた。Braun は、新しい 3D ディスプレイを紹介していた。これにより、外科医は長時間の手術の際、顕微鏡の前で腰をかがめることなく、人間工学に基づいて前を見ながら作業を進めることができる。Epiqar はまた、プライバシーやコンプライアンスを考慮した、手術室向け Zoom のようなサービスを紹介していた。

今年の「Future Surgery Show」の様子。11月9日〜10日の2日間、ロンドンで開催された。
Image credit Future Surgery Show

要するに、このような段階的な進歩が、多くの外科医にとって最も直接的な価値をもたらす可能性が高いのだ。一つの大きな問題は、外科医らが手術技術の向上に伴うプライバシーとコンプライアンスの問題をまだ整理していないことだ。最新のカメラを使えば、外科医がどのようにして難しい手術を成功させたのか、詳細な映像を簡単に記録することができる。また、手術器具のベンダーも、自分たちの最新のイノベーションがいかに大きな変化をもたらしたかをアピールしたいと考えている。

しかし、実際のデータはまだグレーゾーンだ。病院では、個人を特定できる情報が含まれていない限り、外科医がデータを保存・共有することを認めている。これにより、外科医は自分の最高の技を披露したり、同僚から学んだりする自由を得ることができる。しかし、これでは、長期的に患者の予後を改善するために、この情報を利用することが制限されてしまう。

手術映像は患者記録に連携されていないが、連携されるべきだ。(Epiqar の CEO Daniel Goldberg 氏)

手術の自動化における次の大きな進歩は、手術映像と患者の医療記録をより深く連携することで得られる可能性がある。これは、Tesla の常時監視カメラがより高性能な自動運転機能につながるのと同じように、外科医を指導する AI 機能の訓練に役立つ可能性がある。

〝外科医のためのカーナビ〟

未来の手術室(Singularity University での Shafi Ahmed 氏 の講演から)
Image credit: Singularity University

短期的には、手術室にナビゲーション機能を導入することで、外科医が最も恩恵を受けることができると Ahmed 氏は考えている。体内の地図があれば、手術器具を正しい位置に誘導したり、疑わしい組織の除去を検討すべきときに警告を出したりすることができる。これは、Google マップが、道を熟知していても交通渋滞を避けるのに役立つように、熟練した外科医であっても、より迅速で正確な作業ができるようになることを意味する。

しかし、時間が経てば、これらのシステムは改善されるだろう。特に、映像だけでなく、手術器具がどのように使用されているかなど、より多くのデータを収集できるようになればなおさらだ。既存の手術用ロボットは、ほとんどの場合、人間の外科医によって直接操作されている。メスや鉗子を手動で操作するよりも、より高度なコントロールが可能な点で価値がある。

また、外科医がどのように手技を行うかというデータも取得できる。これらのデータは、すでに手術シミュレータのダヴィンチに組み込まれており、外科医が新しい技術を習得したり、人を切り開く前に練習したりするのに役立っている。

将来的には、運転支援機能が必要に応じて自動的にブレーキをかけるように、外科医をより協力的にサポートできるようになるかもしれない。直近では、これらのシステムは、外科医に取って代わるというよりも、外科医がより良い仕事をするために補強するという役割を果たすだろう。

それまでの間、外科医、病院、医療機器メーカーは、データの取得、管理、ラベル付け、利用の方法を改善する必要がある。Armed 氏は次のように語った。

「AI が世界を変える」という宣伝文句がある。そして2022年の今、AI の中には良い価値を提供できるものもあるが、そのデータをまだうまく活用できていない。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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