現場向け動画教育SaaS「tebiki」、GCPから8億円をシリーズA調達——コロナが追い風、問合せは1年半で10倍に

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「tebiki」
Image credit: Tebiki

デスクレスワーカーのための動画教育プラットフォーム「tebiki」を運営する tebiki は16日、シリーズ A ラウンドでグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)から8億円を調達したと発表した。これは、tebiki にとって、昨年9月に実施したシードラウンドに続くものだ。今回ラウンドに調達した GCP は、シードラウンドでも参加していた。調達した資金を使い、tebiki は人材獲得を強化する

tebiki は2018年3月、シリアルアントレプレナーの貴山敬氏により創業(創業時の社名はピナクルズ)。貴山氏は習い事マッチングサイト「サイタ」を運営していたコーチ・ユナイテッドで副社長を務めたことでも知られる(コーチ・ユナイテッドはのちにクックパッドに買収され、「サイタ」事業はクラウドワークスが事業譲受した)。

ところで、冒頭使ったデスクレスワーカーという言葉に耳慣れない読者もいるかもしれないが、世界的にオフィスワーカーの対義語として使われ、カジュアルな日本語で言えば「現場労働者」ということになる。主には、小売・サービス・製造・物流・介護・飲食といったデスクで仕事をするよりも現場作業する職業の人を指し、世界的に見れば全労働人口の8割以上を占める27億人が従事する。

デスクレスワーカーは IT リテラシーが高くないと言われるが、貴山氏は、それは歴史的に見ても労働環境に起因するものが大きいと指摘する。スタッフや機械の動線、耐震壁などによる通りの悪い電波状況、温度や湿度、粉塵の多さなどから、精密機械であるパソコンを配置・利用することが敬遠されがちだったからだ。しかし近年は、タブレットやスマートフォンの普及で、環境は劇的に変化した。

この環境変化に追い討ちをかけたのが昨年からのコロナ禍だ。デスクレスワーカーの業務は現場第一主義で、打ち合わせや研修などは工場などに一堂に会して行われることが多かったが、感染防止の観点からオンライン化が余儀なくされた。動画で作業のコツやノウハウを共有できる tebiki は重宝され、tebiki のオンボーディングも Zoom などのオンラインで完結する機会が増えた。

コロナ禍を追い風に、tebiki への問い合わせ数は昨年6月のシードラウンド以降10倍に増えた。また、SaaS の理想的なチャーンレートは0.5〜1%とされるが、tebiki のそれは0.5%以下を維持している。しかし、非対面労働を支援する SaaS とはいえ、コロナ禍突入直後はデスクレスワーカーの現場にどの程度のインパクトが出るか未知数で、貴山氏は内心、戦々恐々だったという。

tebiki のメンバー。中央が創業者で代表取締役の貴山敬氏。
Image credit: Tebiki

tebiki の操作方法は難しくないが、現在の現場作業にどう取り込むかが難しいので、以前なら「現場に来て教えてほしい」と言われることが多かった。それがコロナで変わって、3ヶ月で5年分の変化が進んだ感じ。営業からオンボーディングまで、すべてオンラインで受け入れてもらえるようになり、まるでスタートアップ業界のようになった。(貴山氏)

貴山氏は、2020年はいろんな意味で潮目だったと語る。その典型として、彼はデスクレスワーカーの SaaS の一つ ANDPAD の60億円調達を挙げた(シリーズ C ラウンドで、複数回に分けて実施)。80%の労働人口が働く領域に、産業界全体のたった1%の IT 投資しか投入されていない。そこから見えるブルーオーシャンという現実に、日本だけでなく世界のスタートアップが気付き始めたと言う。

類似したツールは数多く存在するが、以前チーズ工場で働いていたことのある貴山氏は、当時の自分をペルソナとして工場勤務時代に感じたペインを解決するツールとして tebiki を開発しており、現場のノウハウや人・機械の動きを包括的に捉えるには動画機能をメインに据えることが必須と考え、これが受け入れられた結果、tebiki は多くのナショナルクライアント獲得につながったと説明した。

元々は現場ノウハウを可視化するツールとしてはじまった tebiki だが、紙マニュアルのクラウド化、OJT の自動化までの役割を果たせるまでに進化してきた。富士経済の調査によれば、これら現場教育の DX(デジタルトランスフォーメーション)の市場規模は2,000億円程度とされるが、tebiki では、10年後に1.2兆円にまで成長する現場管理の DX にまで領域を拡大してゆく計画だ。

前回シード、今回のシリーズ A の両ラウンドで、tebiki に参加した VC は GCP のみ。一般的にスタートアップは、経営の独立性確保を意図したり、幅広なネットワークからの支援を期待したりして複数の VC から調達することが多いが、「tebiki の経営チームと GCP は一枚岩(貴山氏)」で、コミュニケーションコストを下げる意図から GCP 1社になったとしている。

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