メタバースをめぐる、FacebookとAppleの戦い(2)

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Above: Facebook’s demo of the metaverse.
Image Credit: Facebook

(前回からのつづき)しかし、それを見ているのは彼だけではない。私は、FacebookとAppleの間に戦争が起こっていると見ている。どちらもコンピューティングの未来を支配しようとしている。Appleは、10億台以上の製品を使っている6億人以上の人々を獲得し、モバイル・デバイスの分野で勝利した。一方のFacebookはスマートフォンへの取り組みに失敗した。しかしFacebookは、Facebook、Instagram、Whatsappなどの広告ベースのサービスを無料で利用する月間アクティブユーザー数が29億人を超えている。直近の9月30日の四半期において、Appleは830億ドルの収益で206億ドルの純利益を上げたのに対し、フェイスブック社は290億ドルの収益で92億ドルの純利益を上げた。

AppleのCEOであるティム・クック氏はこの状況を好ましく思っておらず、Facebookを一種の寄生虫のように見なしている。両社のビジネスモデルは正反対だ。Appleはデバイスを販売し、Facebookは広告を販売している。Appleは、MicrosoftのWindowsやGoogleのAndroidなどのライバル製品よりも高いプレミアムをつけようとする。最高の品質を持っていると同時に、一般大衆には手が届かないことが多いのだ。

対照的にFacebookは自社製品を無料で提供したり、バーチャルリアリティヘッドセット「Oculus Quest 2」を低価格(300ドル程度)で販売したりしている。Facebookの広告モデルは無料の製品を補助するのに十分な収益を生み出する。その代わりFacebookは多くの個人情報を提供してもらい、広告のターゲットを絞り込み、より多くの価値を生み出せるようにしている。

Above: Facebook said the metaverse will make you feel presence.
Image Credit: Facebook

クック氏はこれをプライバシーの侵害と考え、口には出さなかったものの、今年、広告主のための識別子(IDFA)のルールを変更することでFacebookを排除しようとした。IDFAのデータは、ユーザーが広告目的で追跡されることを明示的に許可しない限り使用できなくなったのだ。この動きは、Facebookなどのビジネスに打撃を与えている。

言わば、彼らは戦争状態にあるのだ。

また、ザッカーバーグ氏はFacebookがFacebook Reality Lab部門に年間100億ドルを投資する(あるいは失っている)と語っているが、Appleが自社のVR/ARの取り組みに莫大な資金を投じているのは妥当なところだろう。Magic Leapが複合現実グラスのために20億ドル以上を調達したにも関わらず成功しなかったことで、一部の人々はこれを嘲笑った。しかしAppleやFacebook、Microsoft、Googleなどが費やしている金額に比べれば、はした金だ。誰もがこの次世代コンピューティングの戦いに負けたくはないはずなのだ。ザッカーバーグ氏はこの問題が何であるかを十分に理解していることを示している。彼はこう語っていた。

「私たちは基本的にメタバースをモバイルインターネットの後継と考えています。メタバースは、それ以前に登場したものを完全に置き換えてしまうわけではありません。しかし、それは次のプラットフォームなのです。その意味で言えば、これは企業が作るものではありません。より広範なプラットフォームであり、オープンで相互運用可能な方法で構築するために、私たち全員が貢献することになると思います」。

だからこそ、ザッカーバーグ氏は早くから行動を起こしたのだ。彼は2014年にOculusを約20億ドルで買収した。彼は毎年、定期的に投資を実行し、ヘッドセットを改良し、VRゲームやアプリのエコシステムを強化してきた。そして昨日、彼は会社名を「Meta」に変更し、さらに証券コードをメタバースのような「MVRS」に変更して、挑戦を開始したのだ。

ザッカーバーグ氏は、「Project Cambria」と名付けられたハイエンドのスタンドアロンVRシステムが開発されていて、拡張現実メガネ「Nazare」の開発も始まっていると明かした。これらのプロジェクトは、Appleが市場に投入するあらゆるものを阻止することを目的としている。

正しいメッセージ

Above: Facebook is headed toward the metaverse.
Image Credit: Facebook

多くの人がこれをお金の無駄遣いだと揶揄する中、ザッカーバーグ氏は同盟国と手を結んだ。彼はメタバースはオープンであるべきで、1つの企業だけで構築すべきではないとしている。そうすることで、批判の矛先をそらすことができたのだ。ザッカーバーグ氏は、人々がFacebookという壁に囲まれた庭を指さすようになる前に、仲間内を集めてもっと閉鎖的な集団を指さすことにしたのだ。つまり、Appleのことだ。

そのメッセージは「私たちはオープンだ。みんな一緒だ」というメッセージだった。つまり、その裏には「彼らはそうではない」という意味が込められている。

彼は、人々が初めてメタバースに足を踏み入れるのはゲームになると語った。ゲームにはバーチャルグッズやファンとのエンゲージメントによる経済のインフラがあるからだ。AppleはIDFAのおかげで、ゲーム開発者のことは気にしないと口にしている。これらのゲーム会社はダメージを受けているので、今回の件はAppleの動きを牽制することになるかもしれない。

ザッカーバーグ氏は、プライバシーと安全性は最初からメタバースに組み込まれていなければならないと語った。これは、子供や親を味方につけるための動きだ。彼は発表の中で「Horizon Workroom」「Horizon Home」「Horizon Worlds」などの製品を通じてメタバースを、私たちが生活し、働き、運動し、遊ぶ場所にする計画であることを明らかにした。

また、メタバースにログインする方法は、VRだけではないとも示している。ARグラスやPC、ゲーム機、スマートフォンなど、好きなデバイスを使ってログインすることができる。これは(Appleの顧客のような)エリートだけのものではなく、すべての人のためのものになるというメッセージだ。大衆的なメッセージであり、オープンメタバースを支持する多くの人々の意見と一致している。(次につづく)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

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