視聴者の選択でストーリーが変わる「インタラクティブ技術」の可能性/GB Tech Trend

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500万ドルの調達を発表した「Adventr」(Image Credit:Adventr)

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

「動画元年」と言われて久しく、SNSを中心に様々なフォーマットの動画が広く普及しました。今回紹介する「Adventr」はそんな動画の形式をさらに一段先に進める技術を持っていそうです。

12月21日に同社は500万ドルの資金調達を発表しています。動画ストリーミング企業向けのSaaSを提供しているスタートアップで、視聴者が動画シナリオを選択できる「インタラクティブ性」を楽しむための機能を開発しており、スクリーンをタップもしくは音声によってシナリオ選択できる仕組みを持っています。

とりわけ、音声コマンドを通じてコンテンツ選択機能「SmartListen」は特許を取得しており、広いユースケースを獲得できそうです。例えば映画を観た際、観客の掛け声によって主人公たちの行動が変わったり、アクションが変化したりするインタラクティブ性を導入することができます。映画館での楽しみ方を大きく変える可能性を持つアイデアで、Adventrのサービスが単にストリーミング動画だけを見据えているわけでないことが伺い知れます。

さて、こうしたインタラクティブ動画は、昨今のトレンドになりつつあるグループSNS系アプリと相性が良いと考えます。たとえばはiOS 用の映像コンテンツ視聴アプリ「Whatifi」が挙げられます。同アプリはインタラクティブなストーリーコンテンツを提供。最大9名の友人と一緒に映画を観て、リアルタイムにチャットをしながら、映画の分岐や終わり方を投票で決めたりできます。こちらは6月にAndreessen Horowitzをリードとする1,000万ドルの調達に成功しています。

同アプリは元から友人同士で話し合いながら映像コンテンツを楽しむ体験に重きを置いていますが、Adventrの技術を用いればさらにその体験が強化されそうです。また、Twitterが昨年買収したスクリーンシェア型のグループSNS「Squad」などのようなアプリとの親和性も高そうです。

視聴者が直接ストーリーに介入するための、体験志向の動画技術を開発する動きは以前からありました。ロンドン拠点のゲーム/映像スタジオ企業「Flavourworks」は2019年に300万ポンドの資金調達を達成。同社は『Erica』という映像作品を発表しています。プレイヤーの決定が、主人公の物語を形作る、実写のインタラクティブ・スリラーという位置付けで発表されました。

この作品には、Flavourworksが独自に開発したクロスプラットフォーム向けTouch Video技術が導入されています。視聴者はスマートフォンのタッチパッド・画面を使って映像に触れることで主人公たちと直接対話することができます。たとえばキャラクターの涙を拭いたり、バレないようにゆっくりとドアを覗いたりする動きをスマホをなぞることで映像作品中に忠実に再現する、といった具合です。

市場では久々に2Cアプリの勢いが見られると感じられた2021年でした。動画アプリではここまで紹介した音声やタッチ技術の進歩によって、さらに広い楽しみ方が確立される予感がしており、来年以降はこうした技術がAR・VR、はたまたメタバースと言った用語と一緒に急速に注目されるかもしれません。より没入感高い、体験性がメディア・コンテンツに求められそうです。

今週(12月21日〜12月27日)の主要ニュース

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