話題の鉄腕アトムNFTを買ってみた

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手塚プロダクションがdouble jump.tokyoと繰り出したNFTプロジェクト。初日で完売

とにかくNFTが面白いぐらいにバズワード化しています。下図のGoogleトレンドは2017年から2021年までのグラフで、NFT(青)メタバース(赤)そしてICO(黄)を比較したものです。そう、記憶している方であればこの騒ぎを4年前のICO騒ぎと重ねている方もいるかもしれません。ブロックチェーンインフラが新しい未来を作る、この証明とも言えるビットコインの価格が1BTC=200万円を越えた時期です。しかしその翌年にバブルは崩壊。1BTCが30万円付近まで下がる異常事態で熱狂は一気に下火になったのです。

あれから4年。2021年に入り、また新たな話題としてNFTが表舞台にやってきました。NFTとは「Non Fungible Token(代替不可トークン/イーサリアムERC721)の略で、暗号資産取引所などで取引されているビットコインなどの暗号資産とは異なるブロックチェーン・トークンです。これをデジタルデータに紐づけることで、その所有状況や真贋を判断できるため、OpenSeaなどのマーケットプレイスで売買ができるようになりました。

Googleトレンドでの比較

結果、こちらの記事にある通り、デジタルアートやコレクティブル(デジタルアイテム)、トレーディングカードなどのNFT売上は今年の第1四半期に12億ドル、第2四半期で13億ドル、第3四半期には107億ドルに跳ね上がっている状況です。メーカーやブランドの参入も相次いでいて、スクエアエニックスがThe Sandboxに出資したり、NBAはデジタルトレカのNBA Top Shotをリリース、アディダス、ナイキ、LVMHなどなど、話題に事欠かない状況になっています。

そんな中、日本からもあの著名作品がNFTで話題を提供してくれました。手塚治虫作品です。

手塚作品アートNFTが120ETH(5,300万円)落札

ジェネレーティブアートNFTはOpenSeaにて1000点が販売され、現在も取引されている

仕掛けたのはブロックチェーンゲーム「My Crypto Heores(マイクリプトヒーローズ)」を手がけたdouble jump.tokyoです。同社代表取締役の上野広伸さんにお話聞いたのですが、元々マイクリで手塚プロダクションとコラボしていたこともあり、どちらともなくやりましょう、という流れになったそうです。プロジェクトの結果についてはこちらの記事に記載しておきました。

で、せっかくなので筆者もこれを機に購入してみることにしました。というのも、CryptoPunkなど著名な作品はすでに価格が平均で216ETH(28日時点の日本円価格で約1億円弱)と理解しづらい状況になっていて買えるわけもなく、かといって全く見ず知らずのコレクティブルを買うのも(それでも10万円とかします)嫌だし、じゃあAxie Infinityなどのゲームはというと、そもそもゲームをしないので(しかもお世辞にもUXは良いとは言えない)どうしたもんかと迷っていたからです。

鉄腕アトムは時代的には私より(昭和52年生)かなり上の世代ですが、マンガも持っていますし、作品への愛着もあります。ただ、参考記事にも記載ある通り、規約としてこのNFTを保有することはこの作品の著作に関する権利を有するものではありません。私的利用はOKですが、商業的に使ったりすることもできません。では何を買うのか?それを実際に買ってみて試してみたかったのです。

ちなみにNFT(特にコレクティブル)の所有(※)というケースはいろいろ議論があるようで、例えばおサルの画像をバッチ代わりに使っているコミュニティ「Board Ape Yacht Club」はデータ自体の所有や商業利用をOKにしている例もあるみたいです。

さておき、早速購入です。1点モノのモザイクアートは5000万円しますので、当然パスするとして、狙い目はジェネレーティブアートNFTです。現在のオーナー数は565名、最低価格は0.1ETH(日本円の現在価格で約4.6万円)、平均価格は0.36ETH(約16.6万円)取引総額は265ETH(約1.2億円)となっています。素直に最低金額のアイテムを狙います。

実際にアートNFTを買ってみた

手塚作品の(NFT)オーナーになりました

販売しているのはOpenSeaというマーケットプレイスです。2017年創業ながら、スタートアップらしい成長を遂げており、今年に入って2回の調達で15億ドルの評価を付け、さらに11月の報道ではその6倍以上、100億ドルの値を付けたとされているお化けです。

購入にはMetaMaskというウォレットが必要になります(OpenSeaへのログインにもこれを使います)。スマートフォンからも利用はできますが、基本はPCブラウザが使いやすく、Google Chromeのブラウザ機能拡張を使ってセットアップを済ませます。日本円から暗号資産のイーサ(ETH)を購入するには日本で暗号資産交換業の登録がある事業者から取得します。私は長年使ってるbitFlyer経由でETHをこちらのMetaMaskに送付しました。

イーサの送付には手数料(ガス代)が所々必要で、やはりこれが結構高い。現在、イーサリアムの価格は約46万円と高騰しており、最終的な購入価格が1ETH(約4.6万円)だったのですが、ウォレットへの送付や購入時の手数料で1万円ぐらいかかりました。また、ウォレットへの送付・受取までに10分ほどかかります。この辺りもWeb2.0に慣れている人からすると「???」となるところです。どこが便利やねん、と。

チェックアウトから購入までは早い

さておき、MetaMaskにイーサがチャージされると購入可能な価格のNFTについてはチェックアウトボタンが表示されます。購入ボタンを押すと、PCブラウザのMetaMaskが立ち上がり、ガス代などの手数料を含めた総額が表示されます。最終確認して購入終了です。

で、デジタルコンテンツを購入すると、例えばメールなどで購入したアイテムのダウンロードURLなどが送られてきたりするのですが、そういったものはありません。購入した履歴はブロックチェーンに刻み込まれ、こちらで確認ができるようになっています。これだけです。

え?本当にこれだけ?

私は一体・・・何を購入したんだろう?

とりあえずTwitterのカバー画像にしてみました(オーナーだからこの利用はいいですよね?)

このジェネレイテッドアートには規約が掲載されています。全文引用しますね。

■NFT規約 ・本NFTの対象は画像データです。 ・本NFTの購入により、購入者は、画像データのURL等の情報が掲載されたブロックチェーン上のトークンを利用、処分する権利が認められますが、著作権や商標権その他の知的財産権を取得することはありません。 ・本NFTを家庭の範囲を越えて他人に提供することや商用目的で利用することができません。 ・本NFTの購入・売買に関連して購入者または転得者その他の第三者が損害を被った場合、その損害発生の原因が如何なるものであっても、著作者は何らの法的責任も負わないものとします。

つまり、私的な利用、例えば私のTwitterのカバー画像にしてみたり、お家の壁にデジタルアートとして表示して楽しんだりすることは問題なさそうです。早速、Twitterのカバー画像にしてみました。拾い物を表示してるみたいな気持ちになって背徳感満点です。というか、これ右クリックでダウンロードできるから私じゃなくても設定は可能です。した人見つけたら誰かに通報できるのでしょうか?

この、NFTの所有(※)という概念は前述の通り、いろいろ議論があるようです。上野さんにこの件でお話お聞きしたのですが、コンテンツの絶対的な価値というよりも、NFTにまつわる価値はコミュニティにあるとお話されていました。上野さんは「メタ」と表現されていましたが、このNFTに対して含まれるコンテキスト、これに価値があると。

確かに私はこの流れでこのNFTを購入しました。さらに購入額の10%がユニセフや日本の子供たちのために寄付されるというのも魅力的です。1000点という限定数も大切な要素です。つまり、私はこの限定されたコミュニティに参加することができた、と言い換えることができるのです。

オーナーなので転売も可能です。OpenSeaでは固定価格とオークションが選択可能

実際、Board Ape Yacht Clubなどのコレクティブルについては決まってDiscordが設定されており、私もいくつか購入前のユーザーでも入れるチャンネルに入ったのですが、ひっきりなしにこのNFTを買えとやってきます。多分、ほとんどはスパムなんでしょうね。

高額なNFTについては数千万円の値が付いています。これを購入した人たちはTwitterのアイコンを設定し、さらに購入したIDをプロフィールに記載しています。そうです、自分はこれを所有しているオーナーである、ということを示しているんです。多分。

確かに私も(たった1ETHだけど)ちょっとだけ自慢したい気持ちになりました。ちょっとした手塚作品のオーナー気分です。実際は何も持っていないわけですが。

上野さんはNFTという可能性について、ある高明なお茶の先生が弟子の一人に使っていた茶器を譲る、そういう行為に似ているんじゃないかとお話されていました。その茶器はもしかしたらすごく有名でそれそのものにも価値があるかもしれませんが、譲られた弟子にしてみるとそのモノ以上にその先生の意志というか、人生の一部を受け取る、そういう感覚になるんじゃないかなと。

NFTはこの「譲る」という行為が可能です。確かに値上がりのようなインセンティブの楽しみもありますが、誰かの持っていた証を譲り受ける、という行為を楽しむものなのかもしれません。そういう意味では、かつてからずっと言われていたように、会員権的な要素が強いものだなと改めて認識しました。

ということで、年の瀬に鉄腕アトムのNFTを購入してみました。これからブラックジャックや火の鳥など、次の展開が始まるそうです。購入する人たち、というより手塚作品に参加する人たちが増えることで、子供たちにも寄付が渡りますし、このプロジェクトは日本におけるNFTのお手本として多くの人が参考にすることになるのではないかなと感じています。

最後にお知らせ:年明け1月19日から開催するBRIDG TokyoではNFTのユースケースとして最右翼、GameFiの話題など多くのメタバース・NFTの話題をお送りします。現在無料の視聴チケットを配布しておりますので、お早めにゲットしてください。

※詳細は割愛しますが、日本の民法では無形物の所有はできないことになっていますので、厳密には「デジタルデータの所有」という表現はおかしいのですが、一般通念として購入したものということで所有という表記にしています。

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