日本郵便と佐川急便、担当者が語る「タッグの裏側」

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本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

日本郵便と佐川急便は9月、物流サービスの共創に向けた協業の基本合意を発表している。両社は相互の物流サービス、輸送・集配ネットワーク、システムおよびノウハウの共同活用、両社が保有するシステム基盤の連携を通じてイノベーションを推進し、持続可能なビジネスの創出において協力を進める。

具体的には小型宅配便荷物の輸送、国際荷物輸送、クール宅配便の3点を中心に具体的な協業体制をすすめ、順次サービスの提供を開始するとしている。

小型宅配便荷物の輸送では、日本郵便のポスト投函型小型宅配便「ゆうパケット」を佐川急便で取り扱う。また、国際荷物輸送では日本郵便が扱う国際郵便サービス「EMS」を活用したサービスを佐川急便で取り扱う。さらにクール宅配便については、準備が整い次第、日本郵便のゆうパック保冷品配送サービスの一部を佐川急便で取り扱うとしている。日本郵便で郵便・物流営業部に所属する白石宏輔氏と南真友子氏は今回の協業について次のように背景を語る。

eコマースの拡大に伴い、宅配事業は必要不可欠な社会インフラとしてお客さまの期待に応えていくことが求められています。しかしながら取扱可能なサイズや温度帯等、幅広いニーズに対応できるサービスを拡充することが必要となる一方、配送ネットワークの整備には莫大な時間とコストを要します。そのため、両社の特長を組み合わせることにより、相互補完が見込まれ、かつ、お客さまの利便性向上が見込まれること、さらには将来的には幅広い分野での協業が見込まれることから「両社共創」と位置付けて企画検討を開始しました。(日本郵便 郵便・物流営業部 白石氏・南氏)

話によると両社は元々競合する部分はあるものの、協力している分野もあったことから個別案件の検討として協業の模索が始まったそうだ。クール宅配便から話が始まり、徐々に両社が持つ課題や社会インフラとしての使命感を共有する中で、今回の発表に至ったという。ただ、提携がすんなりと進んだわけではない。佐川急便でプロジェクト推進にあたった事業開発部 課長の吉井裕樹氏はその経緯をこのように語る。

認識は一致したものの、インフラ・オペレーション・組織統制といった点で両社の性質は全く異なりました。そこで両社横断のワーキングチームを組成し、時には両社のホールディングスの協力も得ながら、異なる性格の組織が同じ方向を向いて進むことのできるよう、共同でプロジェクトの推進を図りました。(佐川急便 事業開発部 吉井氏)

特に佐川急便サイドは拡大するeコマースなどの市場環境に伴い、新たな消費者向けの戦略を策定する必要があったという。検討に当たったチームでは細かい配達インフラを有する日本郵便と協業することでスピーディーなインフラ拡充が可能になり、かつ、既存の協業範囲である「ゆうメール」を拡大することでポストインサービスの企画も可能になると判断した。

越境EC市場が拡大基調にある中、佐川急便は国際エクスプレスサービスを強化するとともに、国際郵便サービス(EMS)を加えることで、配達可能地域の拡大、並びに価格優位性のあるサービス開発が可能になること、そして、お客さまの利便性のさらなる向上を実現できると考えました。(佐川急便 事業開発部 吉井氏)

また、今回の協業でサービスの拡充のみならず、社会課題の解決(配達困難地区への配達協業や集配車両の削減によるCO2削減など)に向けた、物流業界全体のサスティナブル化への布石としたい考えもあるそうだ。合意が進んだ結果、両社共に社内外からインパクトをもって受け入れられたと語る。

物流業界に留まらず、他の業界やスタートアップからも反響がありました。アナリストからは『投資や費用をかけることなく、欠けているサービスを補完し合う取組み』、スタートアップからは『スタートアップとも大企業とも共創を模索するとの企業風土を示す取組み』との視点からポジティブな反響を受けております。また社内に対して社会課題の解決に向け、同業他社が一緒になって取り組んでいく時代となったという意識づけができたことは、課題に対する社員の意識向上にも繋がったと考えています。(佐川急便 事業開発部 吉井氏)

社内でも非常に注目されている取組みで、発表後『もっとこんなことをやってはどうか』と各部署から意見があがっておりました。当初の目的に向かって対応し実現することで、物流環境を安定化させ、社会課題の解決やお客さまの利便性向上、さらには物流業界に従事する我々の働きやすい環境という実例を生み出し、社内のみならず業界全体の意識を変えていきたいと考えています。(日本郵便 郵便・物流営業部 白石氏)

今後、両社はワーキングチームを組成し、ユーザーの利便性を高めるサービス開発・インフラ構築に向けて協議を進める。

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日本郵便は「150年の、その先へ。」をテーマに、郵便局の存在価値を再定義するオープンイノベーションプログラム「JAPAN POST INNOVATION PROGRAM 2021」を開始し、参加スタートアップを募集中。

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