日程調整ツール「Jicoo」、事前決済導入で有料セミナーなどに対応——CEO鈴木氏「予約領域のStripeを目指す」

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Image credit: Jicoo

2021年に動きの多かったバーティカルの一つに、日程調整プラットフォームも含めてもよいだろう。

アメリカの Calendly は3.5億万米ドルを調達してユニコーンになった。スケジューリングを含む全てのアクションを0.1秒で終わらせることをビジョンに掲げる電子メールスタートアップの Superhuman は7,500万米ドルを調達、ユニコーンになるまで秒読み段階だ。Facebook の 元 CIO Tim Campos 氏が立ち上げたカレンダースタートアップ Woven はサービスを終了し Slack に買収され、Slack が革新的なカレンダー機能をローンチするのではないかと憶測を呼んでいる。日本では、ユーザベース出身の大山晋輔氏(現 CEO)らが昨年立ち上げた「Spir (スピア)」がシードラウンドを発表した

スペースマーケットの共同創業者で、同社で2019年末の上場まで CFO や CTO を務めた鈴木真一郎氏もまた、2020年に Jicoo(ジクー) というスタートアップを立ち上げ、同名の日程調整プラットフォームの開発・運営に取り組んでいる。Jicoo は、リアルや Web 会議の予約ができ、主要なカレンダーシステムや Web 会議システムと連携するという点では他の多くのプラットフォームと今のところ大差は無いが、カスタムデザインやオリジナル URL が発行できる点などで差別化を図ってきた。今月には事前決済機能を追加し予約システムを拡充、有料セミナーなどにも対応可能なプラットフォームへと進化した。

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有料セミナーやレッスンの予約管理という観点では、昨年、hey が買収し傘下のコマースブランド「STORES」の一部機能となった「Coubic(クービック)」のことが脳裏をかすめるが、日々のビジネスアポイントメントと有料セミナーを同じ仕組みで一括管理できるのは、新たなユースケースを生み出すかもしれない。Facebook は一時期フォロワーが非常に多い人物と新たに繋がって対話できる機能を有料で提供しようとしたし、報酬を頂戴して一定の時間を Web コンサルしたり、相談相手になったりといったサービスはこれまでにもあった。アポのスパム、いわば、冷やかしのアポリクエストをフィルターアウトするのにも使えるかもしれない。

数あるバーティカルの選択肢の中から、イグジットを経験した鈴木氏が日程調整プラットフォームに取り組んでいる理由について、鈴木氏は BRIDGE の取材に次のような回答を寄せてくれた。

前職ではスペースシェアで場所を自由にするプロダクトを立ち上げてきた。さらにリモートワークでの「時間」の使い方を効率化して働き方をもっと自由にしていきたいという思いで Jicoo を創業した(時間+空間でJicoo=サービス名)。

従来の「予約システム」と言われるものを個人単位でも気軽に使えるプロダクトに落とし込み、1人につき1つ自分の予約ページ持つ世界を実現することで、時間の使われ方をまず圧倒的に効率化していきたい。

コロナ禍では無数の予約システムが開発されたが、それはつまり、決済領域同様の車輪の再発明が毎日行われているということ。予約の領域で「決済における Stripe」のようにインフラとなるプロダクトになり、個人の時間の効率化、ネット予約ビジネス全体の利用を押し上げていくプラットフォームにしていきたい。

Image credit: Jicoo

Jicoo がこの領域を進めるのには、社会背景が大いに関係している。個人ブランディングができる D2C・EC サイトの需要が増え、コロナ禍の生活環境の変化からオンライン消費が増加した。人々の嗜好は、モノを買う時代からコトを買う時代へとシフトしている。かつてヤフオクというガリバーが居ながら先進的なモバイル UX で日本の C2C 市場を凌駕したメルカリが、プレーヤーが出揃ったかに見えた EC プラットフォームの領域に今年参入したのは記憶に新しい。Jicoo が狙うのは、まさに〝車輪の再発明〟ということだろう。

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