副業・複業マッチング「Offers」、シリーズAで3億円を調達——採用プロセスをショートカットするシステム開発へ

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Image credit: Overflow

副業・複業マッチング「Offers(オファーズ)」を運営する overflow は14日、シリーズ A ラウンドで3億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、FFG ベンチャービジネスパートナーズ、DNX Ventures、アカツキ(東証:3932)の「Heart Driven Fund」、三菱 UFJ キャピタル、AG キャピタル、GO FUND。同社にとっては、昨年3月に実施したシードラウンドに続くものとなる。

今回ラウンドに参加している投資家の多くは VC であるため純投資の色合いが濃いが、FFG ベンチャービジネスパートナーズが加わっている背景には地方のデジタル推進の文脈がある。同社は福岡銀行を中心とする、ふくおかフィナンシャルグループ(東証:8354)の VC であるが、東京に日本のデジタル人材の約半数の人口がいる中、東京の人材が地方の DX を支援する事例が Offers 経由で生まれており、それに対する期待感の表れのようだ。

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さて、同社が発表している数値をまず見てみると、Offers を利用している、または、これまでに利用した企業の累計は300社を超えた。会員登録しているデジタル人材(エンジニア、デザイナ、プロダクトマネージャー、データサイエンティストなど)は1万人を突破、また、Offers 経由で採用に至った件数は前年比で328%成長、副業(複業)転職から正社員登用する企業が直近1年で2倍以上に達しているという。全員が Offers 経由ではないものの、社員の75%が副業転職組で占められているスタートアップもあるそうだ(上図 mikan の例)。

採用する企業も、転職する人も、いきなりフルタイムでとなると、互いにリスクが高まっている。副業(複業)で始めてみて、双方の腹落ち感があった上で本格的に(採用または転職)、となった方が互いに幸せということがわかってきた。

採用する組織の側も、雇用形態に対する考え方が変わってきている。例えば、業務委託は以前なら「外部の方にお願いしている」という感覚だったが、今では、「(社員の)採用のためのタレントプール」という考え方が根付いてきた。(overflow CEO 鈴木裕斗氏)

今回調達した資金で overflow が新たに挑もうとするのは、人材採用のプロセスの革新だ。テック系スタートアップをはじめ IT 企業では、システムを開発するプロダクトマネージャー(PdM)がいて、開発リソースの強化や不足を補う際には、欲しい人材のスキル要件を社内の人事部門に伝え、人事部門は外部の人材エージェントにそれを伝え、人材エージェントはその情報を自社システムに投入して検索する。実際の人材紹介にはこの逆のプロセスを経るわけだが、途中でその人のスキル評価などにブレが生じやすいことは想像に易い。

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PdM が直接欲しい人材のスキル要件を登録し、応募してきた人材のスキル、チーム内で業務に従事した際のパフォーマンスを定量的に可視化できれば、企業の現場と人材のミスマッチは起きにくくなる。鈴木氏によれば、ビジネスの三要素であるヒト・モノ・カネの中でも、労働人口の減少や DX(デジタルトランスフォーメーション)の影響からヒトに関する動きが特に活発化していて、「今が、人材とテクノロジーが今までで最も結びついている時期ではないか」と、この仕組み作りに着手する意義を語った。

Offers には、採用を検討する企業と、副業(複業)を検討する個人の双方が情報をエントリしているが、そのマッチングのアレンジを行うのは一定のシステム効率化はされているものの、overflow のカスタマサクセスの人たちだ。新システムによって、企業現場の具体的な人材ニーズと、正確な個人スキルの可視化ができれば、このアレンジが完全自動化できる可能性があると鈴木氏は考えている。通常半年以上はかかるとされる人材の採用プロセスも短縮されるだろう。新システムは来春あたりにお目見えするようだ。

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