ペットD2Cブランド「PETOKOTO」運営、シリーズAで5億円を調達——ペットの総合サービスに事業拡大へ

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Image credit: Petokoto

<1日正午更新> 競合として文中に引用したバイオフィリアは取扱商品がフレッシュドッグフードであるため、「フレッシュドッグフードを扱うスタートアップは皆無と言っていいだろう。」の部位を削除した。

D2C ペットウェルネスブランド「PETOKOTO(ペトコト)」を運営する PETOKOTO は1日、シリーズ A ラウンドで約5億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、ベガコーポレーション(東証:3542)、楽天キャピタル、ABC ドリームベンチャーズ、DG ベンチャーズ、Headline、15th Rock Ventures、ニッセイキャピタルと名前非開示の個人投資家。金額にはデットを含む。これは、同社にとって今年3月に実施したプレシリーズ A ラウンド(2億円を調達)に続くものだ。ニッセイキャピタルはフォローオン参加。累積調達額は約10億円。

PETOKOTO は2015年3月の創業(当初の社名はシロップ)。代表の大久保泰介氏は、サッカーのプレーを続けるため訪れたイギリスで、現地の人々が日常的に犬や猫と暮らす生活を目の当たりにして動物への愛着が増すも、ペットの殺処分が年間数万件に及ぶ日本の現実を知り、人とペットが共存できる社会を作ろうと事業を立ち上げた。現在は、保護犬猫マッチングサイトの「OMUSUBI」、情報の場としてペットライフメディア「PETOKOTO」、食事の場として「PETOKOTO FOODS」を運営する。

このうち、OMUSUBI は完全なボランティアだ。昨日取り上げたウェルモの「ミルモセレクション」もそうだが、利益は全く生み出さないものの、社会貢献や別のキャッシュカウのためのマーケティングツールとして、ボランティアベースのサイトをポートフォリオに擁するスタートアップは多くない。当初はメディアの PETOKOTO だけが目ぼしい収入源だったことからマネタイズには苦労したが、2019年に PETOKO FOODS をローンチしたことで事態は好転する。会員数は1万人超、売上の9割が PETOKO FOODS からだ。

PETOKOTO FOOD は、フレッシュドッグフード、つまり、市販のドライのドッグフードとは異なり、新鮮な生の状態の食材が使われているのが特徴だ。ドライのドッグフードは、素材の調達、加工・製造工程、運搬・流通などが比較的シンプルで済むが、栄養学的見地からペットにとって最良とは限らない。PETOKOTO では、福岡にある製造工場に委託してフレッシュドッグフードを製造、ユーザからの注文に応じて冷凍倉庫から届ける。さつまいもの規格外品を使うなど、フードロス解消にも一役買っているという。

PETOKOTO の皆さん。後列最左が代表の大久保泰介氏。
Image credit: Petokoto

フレッシュドッグフードはサプライチェーンを作るのが難しく、また、従来型のドッグフード工場ではなく、人間向けの食品を加工できるレベルの工場でないと製造できない。アメリカではフレッシュドッグフードが伸びたが、これは人間向けの食品工場でペットフードを作っても問題ないから。しかし、日本ではその許可を取るのが難しく、既存大手がフレッシュに参入するのは難しいと思う。(大久保氏)

PETOKOTO では、栄養学的見地からも PETOKOTO FOOD を完全なものを目指すため、ニュージーランドの獣医師でこの分野の権威である Nick Cave 氏と提携、同氏の監修を受けた栄養メニューに基づくフレッシュドッグフードを販売する権利を、アジアで独占契約しているそうだ。チャーンレートは10%未満で推移しており、フードサプライ製品のサブスクとしては優秀な成績を誇っているが、現在課題となっているのは、特に小型犬に見られやすい〝食べ飽き〟の対応だというが、メニューの多様化などでほどなく解消されるだろう。

アメリカでは、フレッシュペットフードを扱う Freshpet が2014年に NASDAQ に上場、2025年までに顧客を1,100万人にまで増やすと鼻息は荒い。また、フレッシュではないが栄養学的に考慮したペットフードを扱う Better Choice が今年、また、ペット向けの総合サービスを提供する Petco Health and Wellness Company が昨年 IPO している。PETOKOTO では、ペットのゆりかごから墓場までをサービスできる体制を目指し、今後、PETOKOTO ID をコアにサービスを拡充し、事業の拡大を目指す。

今回の投資家のうちベガコーポレーションとは、同社の家具・インテリア EC「LOWYA」とユーザベースやコンテンツ群とのシナジー効果を目指す。また、PETOKOTO は JR 東日本のスタートアップアクセラレータプログラムの今期バッチにも採択されており、JR 東日本の駅構内やグループ傘下のショッピングモールやスーパーマーケットなどで、ポップアップストアを作るなどしてオフラインでのタッチポイントを拡大する計画だ。

日本では、フレッシュドッグフードを扱うスタートアップは皆無と言っていいだろう。アプリコットベンチャーズやバルクオム CEO 野口卓也氏らが支援するバイオフィリアは完全栄養食のペットフードを、また、前澤ファンドの傘下に入った犬猫生活(旧社名はオネストフード)は無添加ペットフードを展開している。

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