〝Google Docsの3D版〟、製造業向け立体ドキュメンテーションSaaS「Scene」が正式ローンチ

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「Scene」
Image credit: Scene

東京に拠点を置くスタートアップ Scene は、3D CAD ファイルを活用し、立体的な製造資料を作成できるドキュメントツール「Scene」を正式ローンチした。アプリケーションをインストールする必要がなく、Web ブラウザだけで動作させることができ、作成したドキュメントは Google Docs のように URL だけで他者と共有できるのが特徴。Scene では、多品種少量生産の需要が多い、中小の製造業への導入を進める計画だ。

部品の設計現場では CAD が使われ、この工程では完成品は 3D のイメージで設計が進められる。しかし、この設計がひとたび製造現場に引き渡される際には、複数の平面図、つまり、2D の状態で情報伝達されることが多い。製造現場の慣習や社内ルールの都合から、製造担当者は平面図を紙で受け取り管理するためだ。3D で設計されていながら、製造指示は 2D の情報として受け取り、製造担当者はそれを頭の中で再び 3D 化して、想像しながら完成品を製造することになる。

製造担当者は熟練工ではあるものの、平面図から 3D の完成イメージを想像しながら製造するため、間違いが発生することもゼロではない。大量生産の現場であればロボットなどに製造工程を覚え込ませることもできるが、なにぶん、多品種少量生産の現場では、製造担当者は、オーダーを受けるたびに全く新しい設計に対峙することになる。設計者と製造担当者の意思疎通にズレを生じさせないようにする意図から、平面図を補完するツールとして Scene は生まれた。

左から:COO 江澤怜氏、CEO ビジャヤン・スワティナト氏、CTO 福島健一氏
Image credit: Scene

汎用 CAD の分野では Autodesk の AutoCAD が7割程度の市場シェアを持つが、それ以外にも複数メーカーの CAD システムが存在しファイルフォーマットも異なる。Scene では、ISO(国際標準化機構)が定めた STEP 形式に対応、ほとんどの CAD システムで出力されるファイルをそのまま取り込むことができる。それを Scene 上に 3D イメージとして貼り付け、部品の駆動部分や装着部分にはアニメーションやテキストの説明を付記し、製造担当者にわかりやすいドキュメントを作成・共有することが可能だ。

Scene は、これまでに複数のスタートアップでプロダクト開発に従事してきたビジャヤン・スワティナト氏らにより創業。10〜20年後には、AR(拡張現実)がコンピューティングの大きな部分を占めるようになるとの考えから、それを誰でも使いやすくするツールを開発してきた。以前には 3D プレゼンのためのツールを提供していたが、ピボットを重ね、現在の形に落ち着いた。Scene にはすでに500社以上が登録し、フランスのリヤカー製造メーカー K-Ryole、移動棚や什器製造の金剛が現場に導入している。

Scene は2021年2月、East Ventures、グリーベンチャーズ、アプリコットベンチャーズ、個人投資家から6,300万円を調達した。

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