音楽権利投資・買収のBeyond Musicが190億円調達など——韓国スタートアップシーン週間振り返り(12月13日~12月17日)

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本稿は、韓国のスタートアップメディア「Startup Recipe(스타트업 레시피)」の発表する週刊ニュースを元に、韓国のスタートアップシーンの動向や資金調達のトレンドを振り返ります。

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12月13日~12月17日に公開された韓国スタートアップの調達のうち、調達金額を開示したのは21件で、資金総額は5,550億ウォン(約537億円)に達した。

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主なスタートアップ投資

  • 音楽権利専門投資会社 Beyond Music Company(비욘드뮤직컴퍼니)が2,000億ウォン(約190億円)以上を調達。音源著作権、隣接権への投資、買収、マネジメントを専門とする企業で、調達した資金で韓国内外で検証された音源 IP の確保を加速する計画。
  • 総合デリバリプラットフォームの Manna Corporation(만나코퍼레이션)が814億ウォン(約79億円)を調達。デリバリプラットフォームサービス強化と、ドライバと店舗が連合して作った単発デリバリ専門アプリ「MANNA eats(만나이츠)」をローンチする計画。
  • 仮想通貨取引所などを運営する Dunamu(두나무)のブロックチェーン子会社 Lambda 256(람다256)が700億ウォン(約68億円)を調達。調達した資金は、サービス型ブロックチェーン「Luniverse」のエコシステム拡大や優秀人材の確保などに活用。
  • メタバースプラットフォーム「Spatial(스페이셜)」が300億ウォン(約29億円)を調達。AR、VR コラボレーションプラットフォームから、クリエイターとアーティスト中心のメタバースプラットフォームに拡張し、NFT ベースのサービス提供。
  • B2Bコラボレーションソフトウェア「Swit(스윗)」を開発する Swit Technologies(스윗테크놀로지스)が260億ウォン(約25億円)を調達。調達した資金は製品力強化とグローバル拡大に使用し、来年より差別化された製品を13カ国語で提供する計画。
  • ブロックチェーンベースのプロップテックスタートアップ Kasa(카사)が190億ウォン(約18億円)を調達。今回の調達により、少額で商業ビルに投資できるデジタル不動産収益証券取引をシンガポールで実現できるようにする。
  • 女性ヘルスケア企業 Happy Moonday(해피문데이)が110億ウォン(約11億円)を調達。オーガニック生理ナプキンのサブスクから事業を拡大、女性の健康、ライフスタイルまでケアするフェムテックアプリで成長する計画。
  • 社会人教育専門企業 Day1Company(데이원컴퍼니)が110億ウォン(約11億円)を調達、海外市場進出を推進する計画。

トレンド分析

ユニコーンは6社、成長する日本のスタートアップエコシステム

日本のスタートアップへのグローバル VC の関心が高まっている。日本にはソフトバンクというグローバル大型 VC があるにもかかわらず、誰もが知るユニコーンを輩出したり、スタートアップ聖地と呼ばれたりはしてこなかった。10月にソフトバンク・ビジョン・ファンド2が初めて自国のバイオスタートアップ「アキュリスファーマ」に投資したことから、日本のスタートアップ市場に大きな変化が見受けられる。ビジョン・ファンドは続いて、スニーカーのリーセルプラットフォーム「スニーカーダンク」を運営する SODA に投資した

日本の INITIAL によると、今年上半期に日本のスタートアップに流入した資金は5年前と比較して3倍に増えたそうだ。これは、ソフトバンクに加え、Sequoia、Peter Thiel 氏が率いる Founders Fund、Soros Capital など資金力のあるグローバル VC が市場に参加したことに起因する。9月には日本の BNPL プラットフォーム「Paidy」が PayPal に65億米ドルで買収され、日本のスタートアップ成長の可能性を示したことで、Paidy の初期投資家は買収を通じて65倍の収益を上げたという。また、多くのグローバル VC は、政府規制で不安定になった中国の代わりに、他のアジア諸国でスタートアップで機会を見つけながら反射的利益を得ている。

実際、日本は世界3位の経済規模であるのに対し、スタートアップでは大きな成果を出せなかったのが事実だ。周辺の隣接アジア諸国に比べてもスタートアップ数や投資パフォーマンスは遅れている。CB Insights によると、中国には150社、インドには40社、韓国にも15社以上のユニコーンが存在するが、日本のユニコーンは6社——AI開発会社 Preferred Networks、ニュース配信の スマートニュース、HR SaaS のスマート HR、素材企業の TBM、スパイバー、ヘルスケア企業の HIROTSU バイオサイエンス——に過ぎない。

日本自体の環境もスタートアップの成長を妨げた原因だ。海外スタートアップが未来成長をベースに資金調達するのに対し、日本は短期的な利益に集中する。そのため、多くの企業は時価総額10億米ドルのユニコーンになる前に上場巣る。成長企業にとっての上場要件が厳しくなく、通常は時価総額2~3億米ドルで上場するという。ソフトバンク・ビジョン・ファンド1の最小チケットサイズが1億米ドルだったことを考えれば、投資対象となっるスタートアップも多くなかったのだ。

現在はグローバル VC が入ってきて市場も変わっているそうだ。日本のスタートアップも複数回の調達を経て、より大きな規模で上場できることを理解し、若者たちは、スタートアップを伝統企業の代わりの新しいキャリアパスと考えるようになった。政府レベルでもスタートアップエコシステム拡大のため、スタートアップ投資税減免政策の延長、ユニコーン企業輩出のためのスタートアップ4大都市選定などの環境改善に乗り出している。上場を通じて海外進出せずに資金を得ていた企業も、海外 VC の影響を受け、次の段階に成長することが期待されている。

日本のスタートアップエコシステムは、ソフトバンクが東京のビジョン・ファンドの担当者を増やして投資を拡大し、ユニコーン不毛の地、成長の可能性などをメリットとして、グローバル VC の関心が高まるにつれ、継続的に成長すると予想される。

【via StartupRecipe】 @startuprecipe2

【原文】

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