Benedict Evans氏が予想する、2030年のテクノロジービジョン

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ヘルシンキで開催された「SLUSH 2021」で講演する Benedict Evans 氏
Image credit: Slush

Benedict Evans 氏は、Andreessen Horowitz(a16z)の元パートナーで、現在は独立してアナリストやコンサルタントとして活動しながら、読者15万人の個人メディアを運営している。彼は毎年末、マクロトレンドや戦略トレンドに関する考察を発表するのが恒例になっているが、2021年末には「未来への3つのステップ(Three Steps to the Future)」と題したプレゼンテーションを公開した。技術が我々が生きう経済をどのように変化させているか、過去と現在から、2030年の未来技術を展望している。

未来

Evans 氏は2030年に向けたビジョンで、Web3 とメタバースの大きな軸に挙げ、そのほか、代替肉、ESG、AI、ロボティクスなど主要技術にまとめて言及した。それだけ、テック業界では次の10年を象徴する技術として、Web3 とメタバースが大きく取り上げられているということだ。

Evans 氏は、仮想通貨と VR/AR が2021年夏からそれぞれ Web3 とメタバースという用語にリブランド・再定義され、より広範な概念として活用されていると説明した。仮想通貨が決済や振替に使われたのに対し、Web3 は、ソフトウェア、インターネットビジネス、ネットワークを構築する新しいモデル「ネクストインターネット」として認識され、VR/AR はかつてゲーム用がヘッドセットなどを意味したが、今はスマートフォン以降の「ネクストプラットフォーム」と呼ばれるようになった。

Web3 時代は Web 2.0とは異なる動作をしている。 Web 2.0時代では、YouTube、Facebook などのプラットフォームが創作者のコンテンツ収益をもたらしたのに対し、脱中央化された Web3 では、創作者がネットワーク主導権を持って創作と収益の両方を取るように民主化されることがあるということだ。最近は Web3 について、世界の IT 著名人の間で意見が分かれて論議にもなった。

Twitter 創設者である Jack Dosey 氏は「Web3 は民主化に役立たず、VC の金稼ぎ用途に使われている」と非難した。Elon Mask 氏も「Web3 の実体を見たことはない」と論争に火をつけた。これに有名な仮想通貨投資家である Marc Andreessen 氏は Jack Dorsey 氏をアンフォローし反対の意思を表明した。Evans 氏も発表で Web3 が興味深いテーマであることは正しいが、まだ初期段階で明確ではないと話している。

VR/AR はメタバースという服を着て、スマートフォン時代以降の責任を負う「ネクストプラットフォーム」として浮上した。Evans 氏は、「メタバースは確かにバズワードになったが、VR、AR、Roblox、クリエイターエコノミー、Facebook など関連する複数の単語で使われているため、正確にどのようなものかは不確実だ」と述べた。まだ時期尚早ということだ。

VR に対する興味が大きくなったことは確かだが、新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウンにかかわらず、Oculus の販売は大幅に増加せず、それでも Roblox がソーシャルゲーム時代を開いて進化したゲームの姿を見せてくれたことを、Evans 氏は肯定的に評価した。

問題は Roblox が果たして10年以上にわたって、成功したプラットフォームの姿で存続できるかどうかは分からないということだ。テック業界ではゲーム市場はまだ小さな部分に過ぎず、VR や AR をすべての人が普遍的に活用するかどうかについて疑問を呈した。しかし、メタバースがアイデンティティ、自己表現手段などとして活用される普遍性は確保したと分析した。

現在と過去

Evans 氏は、企業は現在、過去10年間に出てきたすばらしいアイデア、SaaS、クラウド、マシンラーニング、デジタルトランスフォーメーション、ライブストリーミングなどを実行していると説明した。核心はデジタルトランスフォーメーションにある。まだ企業の10~15%に過ぎないが、企業はワークフローをクラウドに移転しており、Google や Microsoft などがクラウドインフラにさらなる資金を注いでおり、より多くの SaaS がさまざまな分野で活用されていると説明した。

過去の企業は技術革新に出会い、変化している。Evans 氏は、「時間差はあるが、インターネットが音楽や新聞業界に及ぼす影響を今やあらゆる産業で見ることができ、技術が既存の価値を破って新しい勝者を作っている」と説明した。 Netflix など OTT が成長し、巨大な既存のメディア影響力を徐々に減らしているのが代表的な例だ。また、「ライブストリーミング技術は、Apple TV、YouTube、Hulu など10年前に誕生したが、死んでいたアイデアも蘇らせている」と述べた。

小売アンバドリングも注目すべき部門だ。購入品は変わらなかったが、購入手段がデジタルに転換されたため、新しい e コマースチャンネルが誕生するようになり、それに応じて配送、広告など新しい収益創出チャンネルも生まれている。過去のデパートをスーパーストアが押し出したように、e コマースがこれを置き換えており、小売進化は新しいものではないが、新しい時代に適した技術が新しいチャンネルを作り、産業を導いていくと説明した。

Evans 氏は、技術が未来をつくり、それに応じて産業は調整され、合わせてられていくと結論づけた。技術が業界を変え、新たな機会を生み出すということだ。彼はストリーミング技術によって音楽業界が再び飛躍したことを例に挙げた。音楽業界の規模自体はまだ小さいが、Apple は全体のレコード市場規模の20倍を超える収益を得ている。

ある産業が広告、マーケティング、小売、消費者支出まで新しい収益創出機会を狙いながら移動していくのだ。このような環境の中で、テクノロジースタートアップエコシステムには、ドットコムバブル時代の水準に匹敵する1,000億米ドルの資金が注がれている。Evans 氏は、「技術は過去のツールを販売するだけでなく、企業そのものを代替するものになり、技術企業は我々の生活の一部を占めるほど大きくなった」と結論づけた。

via Benedict Evans

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