CES 2022: AIが推進するスマートテックのイノベーション(後編)

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前編からの続き)

Image credit: Pixabay

スケールダウン

CES では、自動車やロボットが注目を集める一方で、小型のガジェットが展示されることでも知られている。

デバイスメーカーが AI の組み込みについて語るとき、それは通常、そのデバイス上で大きな AI モデルが動作することを期待しているわけではない。しかし、一般的にモデルの学習はクラウド上で行われ、デバイスにインストールされるのは、センサーデータを解釈して動作させるための、よりコンパクトな推論モデルだ。このように単純化しても、デバイスのサイズ、消費電力、処理の制約の中でソフトウェアを最適化することは、非常に困難なことだ。

例えば、OrCam の視覚障害者支援技術は、マジック、あるいは眼鏡につけるクリップオンカメラ程度の規格になっている。そのため、研究開発担当バイスプレジデントの Oren Tadmor 氏は、Nvidia などの AI プロセッサを尊重しながらも、「彼らのものは、我々のデバイスに搭載することを夢見るようなコンピュータではない」と述べている。その代わり、同社は映像処理に特化したチップセットとの連携に注力する。

同時に、OrCam はコンピュータビジョンに適用されるディープラーニングの最先端技術の大きな進歩を利用することができ、顔認識などの問題をより簡単に解決できるようになった(Tamdor氏)

OrCam はイスラエルの企業で、共同創業者の Amnon Shashua 氏と Ziv Aviram 氏は、衝突回避と自動運転車技術のためのコンピュータビジョンでリーダー的存在である Mobileye の創業者でもある。

コンピュータビジョンでは、人間ができることは何でも、あるいはほとんど何でもできる。そして、ユーザが使える機能は何か、それを見つけることが重要なのだ。(Tamdor氏)

ソフトウェア最適化 vs. ハードウェア最適化

ハードウェア固有の最適化が必要な場合もあるが、ソフトウェアツールメーカーが、デバイスのプログラマビリティをより標準化したアプローチを推進することを止めることはない。Deeplite の共同創業者兼最高製品責任者の Davis Sawyer 氏は、次のように述べている。

私は、この2種類の最適化の相互作用が、エキサイティングなことの1つだと考えている。この2つが出会うことで、どちらか一方だけよりも400~500%向上することができるのだ。

CES で Deeplite は、Pytorch をベースとした効率的な深層学習モデルを作成するためのソフトウェア開発キット「Deeplite Runtime」を、特にコンピュータビジョン向けに発表した。同社の従来製品「Deeplite Neutrino」は GPU や他の種類のプロセッサに対応していたが、新しい Deeplite Runtime は、特にスマートデバイスで最も普及している ARM プロセッサ上で動作するアプリケーションをコンパイルするためのものだ。

ARM CPU のようなものが普及していること、開発者が慣れ親しんでいること、さらにバッテリ駆動のデバイスのための低消費電力プロファイルを考えると、そこに多くの機会が生まれると思う。(Sawyer 氏)

音声コマンドシステムに特化したデバイスソフトウェア企業である Fluent.ai は、「可能な限りハードウェアに依存しない」ことを目指していると、CEO の Probal Lala 氏は述べている。しかし、一部のハードウェアパートナーは、他のパートナーよりも協力しやすいことが分かっている。CES では、Fluent.ai がオーディオ技術の専門家 Knowles との提携を発表し、音声制御イヤホンの共同デモを行う予定だ。

Knowles のオーディオ・センシング・ソリューション戦略マーケティング・ディレクタ Raj Senguttuvan 氏は、次のように述べている。

Knowles にとって、Fluent.ai のソフトウェアは、クラウドサービスやそれにアクセスするために必要な電力やネットワーク容量に依存することなく、効率的に動作することが魅力だ。これにより、エンターテイメントやビジネスアプリケーションの可能性が大きく広がる。

Fluent の主な最適化は、音声をテキストに翻訳し、そのテキストに対してさらなる処理を行うという、一般的な音声アプリケーションのパターンをショートカットしていることだ。その代わりに、音声データを直接操作してパターンマッチングを行う。

スマートな技術革新には、想像力を加えるだけでいい

AI をはじめとするベーステクノロジーの多様化は、ビジネスチャンスにつながるはずだ。

車載用ダッシュボードカメラのメーカー NextBase のチーフセールス&マーケティングオフィサー Richard Browning 氏は次のように述べている。

エンドユーザにとって、技術がどのように生活を向上させるのか、そんな少しの想像力を働かさなかったら、技術に意味は無い、と私は信じている。

NextBase にとってそれは、ダッシュボードカメラが単に事故映像を保険会社と共有するためのモバイルセキュリティカメラにとどまらないことを再認識することを意味する。まぶしい日差しから雨の日差しまで、さまざまな条件下で良好な映像を生成するという課題だけでも、十分に困難であり、AI による画像処理能力が必要だと Browning 氏は述べている。今回の CES で発表され、9月の出荷に向けて準備中の製品「NextBase IQ」は、その能力をさらに高め、運転支援(他のドライバーが悪さをしたときに認識)や空間認識(事故を予期してより完全に記録できる)も提供する。

車内側カメラの追加により、居眠りや注意散漫のドライバーを検知して警告するだけでなく、あおり運転や道路上での停車強要など、正面カメラでは撮影できない証拠映像も撮影できるようになった。音声コマンドでデバイスを「目撃者」モードに切り替えると、警官が車に近づいてきて免許証と保険を要求されたときのあなたの行動を正確に記録することができる。

目撃者モードでは、音声コマンドや事故が発生したことをセンサーが検知した場合に、映像がクラウドアカウントに転送され、後で確認することができる。以前のバージョンの NextBase の製品では、ドライバーが手動で携帯電話にビデオデータをダウンロードする必要があった。

これらの機能をはじめとして、NextBASE IQ は従来のダッシュボードカメラというカテゴリーをほぼ脱却しているのだ。

しかし、「スマート・ダッシュボードカメラ」以外の呼び方が見つからないのだと、Browning 氏は言う。

人々は今日、「スマート」という言葉の持つ意味を理解していいる。スマートホーム、スマートセキュリティ、スマートヘルスなど。どれもネットワークに接続され、インテリジェントな製品だ。

これらは、CES 2022 が取り扱う大きな話題となるだろう。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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