CES 2022: 仕事に使えるエンタープライズ・メタバースの未来——HMD不要、リアルさ追求には5Gがカギに

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Image credit: Mytona

目を凝らせば、CES 2022 の会場のいたるところにメタバースを見ることができるかもしれない。もっとオープンに、もっと批判的な目で見れば、どこにも見えないかもしれないし、少なくともまだ焦点が合っていないかもしれない。

メタバースとは、過去の展示会では 3D ソーシャルワールド、バーチャルリアリティ(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)、あるいは XR(VR、AR、MRのスーパーセット)と表現されていたかもしれない技術に適用する、現在のラベルだ。Facebook が社名を Meta に変更し、Oculus ヘッドセットと連動した 3D ソーシャル環境の構築を会社の大きな方向性として打ち出して以来、メタバースの話題は盛り上がりを見せている。しかし、「Ready Player One」や「Snow Crash」で描かれたような、Web ユーザが Web サイト間を移動するように、ユーザのアバターが 3D 世界を簡単に移動できるネットワークの出現には、まだまだ時間がかかりそうだ。

とはいえ、Web の後継となる 3D は、Facebook/Meta のようなメガベンダーのネットワークに含まれるのではなく、Web3 ブロックチェーン上に構築されるかもしれないという構想など、いくつかのイノベーションが存在するのも事実だ。また、メタバースが VR ヘッドセットのような没入型テクノロジーの進化と関連している限り、CES では、Qualcomm が Microsoft と提携し、ビジネスメタバース「Microsoft Mesh」と連携した軽量 VR/AR ヘッドセットを駆動するプロセッサを発表していることが注目された。

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エンタープライズ・メタバースの統一

ゲーム用のサイロ化した 3D ワールドではなく、統一されたメタバースを作る試みは、まずエンタープライズ・メタバースを作ることから始まるかもしれない。研修や会議などのビジネス用途では、標準化によって企業間の会議がより可能になる。これは、標準的な Zoom 形式のビデオ会議よりも、まるでその場にいるかのようなクオリティをバーチャル会議に付加する方法だと提案者は述べている。

Touchcast は「MCity」を「初のエンタープライズ・メタバース」と呼んでいる(CES では他にもエンタープライズ・メタバース製品がいくつか出展されていた)。Touchcast は今日まで、CES と連動した「Metaverse Summit」をバーチャルと CES 中央広場のテントで両方で開催しており、Accenture、Microsoft、Nvidia、その他のメタバースのパイオニアから20人以上のスピーカーが登壇している。

Touchbase は、Accenture のような企業が、Second Life のような 3D ワールドに熱狂した2000年代から、会社会議のための 3D バーチャルイベントの開催を支援してきた企業の一つだ。MCity の「メタバース・アズ・ア・サービス(Metaverse as a Service)」のコンセプトは、企業が DNS のような .metaverse ドメインを登録して 3D 構造のキャンパスを作り、そこで定期的にイベントを開催できるようにすることだ。3D レンダリング環境は、Microsoft Azure クラウド上で動作する Nvidia GPU を搭載した Epic の Unreal Engine がベースとなっている。また、MCity は、3D レンダリングのポータビリティのために、Nvidia の規格「Omnivese」を採用している。

このメタバース空間のディレクトリはブロックチェーン上でホストされているため、Touchbase のアプリケーションに限定されず、オープンで分散したメタバースのドメインネームシステムに相当する始まりが形成される可能性があると、Touchcast の創設者兼CEO Edo Segal 氏は述べている。

「今、誰もがメタバースについて話しているが、ドメインシステムもマップも永続性もなく、誰もが自分の小さな壁に囲まれた庭のようなメタバースを作ろうとしているのだ。これは、Web3 や分散化によってもたらされる革命に反していると思う。」

VR ヘッドセットは不要?

エンタープライズ・メタバースに必要ないものの1つは、VR ヘッドセットだと Segal 氏は言う。ビジネスへの応用はあるかもしれないが、「それは限定的なユースケースだ」と彼は言う。

VR ヘッドセットを着けて、仕事に行く」という人はいないと思う。馬鹿げた考えだ。

エンタープライズ・メタバースのイベント主催者である Mytaverse の代表者も、同じことを言った。

彼らの顧客が一番やりたくないことは、会議の参加者全員にヘッドセットを注文しなければならないということだ。

どちらの場合も、3D ワールドは、背景を取り除いた話者の顔の Web カメラ映像を表示する代替手段として扱われる。Touchcast の CES Metaverse Summit では、講演者はバーチャル講堂の中でバーチャル演壇の後ろに立っているように描かれていた。標準的な Mytaverse のアバターは、宇宙服を着た人のように見え、ヘルメットの面板の中に人の顔の Web カメラ映像が表示される。

アバターをリアルにしなくても(超リアルでも)、3D 空間では、他のアバターとの近さによってスピーカーの音量を上下させたり、バーチャル会議室や会議スペースを歩き回ることで会話に参加したり離脱したりできるなどの可能性がある。

もちろん、ハードウェアベンダーにとっては、3D ヘッドセットの役割は少し違って見える。HTC Vive のジェネラルマネージャー Dan O’Brien 氏は、実際、その投資と引き換えに、研修や会社の会議のために従業員を出張させずに済むなら、数万台のヘッドセットを注文したいという企業の関心を集めているという。

漫画のようなアバターキャラクターではなく、本当にそこにいるように感じさせるためには、まだ課題がある。よりリアルで人間的なアバターレンダリングを実現するためには、顔の動きや目の動きを追跡する技術に取り組み続けることが本当に重要だ。(O’Brien 氏)

HTC が最近開発した技術として、手首の動きを検出するハンドジェスチャーがある。

5G ネットワークでは、3D シーンのレンダリングというプロセッサ負荷の高い作業を、デバイス自体に組み込むのではなく、ネットワークエッジのサーバーに移すことも可能になりつつあると、O’Brien 氏は述べている。その結果、より軽量で装着感が自然なヘッドセットや AR グラスの開発が可能になるという。

これらの進化は、Web3 のブロックチェーン構想とともに、すべてパイプライン上にある。そして、すべて時間がかかるだろう。(O’Brien 氏)

CES での記者会見の一環として、Qualcomm の Cristiano Amon 氏も、メタバースをより面白く、便利な場所にする要因の1つとして、5G(特にミリ波 5G)を挙げている。つまり、自動車や機械、会議室などの詳細な視覚的・論理的シミュレーションを行い、機械の修理方法をトレーニングしたり、会議室にいる他の人と自然に交流したりすることができるようになるのだ。

物理的な世界とデジタルの世界をつなげば、メタバースの形而上学を形にするための素晴らしいユースケースを実現することができるのだ。(Amon 氏)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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