スマホARでコマース市場の開発需要を取り込む「Avataar」/GB Tech Trend

SHARE:

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

気軽に店頭へ出掛けて行き、家具や家電商品を確かめられなくなった昨今、スマホARを使って自宅にいながら商品の大まかなサイズや使い勝手を知るニーズが高まっています。

今回4,500万ドルの調達を発表したのはコマース市場においてスマホAR技術を提供する「Avataar」です。Avataarのシステムを導入したEコマース・マーケットプレイス事業者らは、自社で扱う商品の3D表示機能を追加できるので、ユーザーは手軽にリビングルームや自室で商品を仮想的に試し、購入後のミスマッチを減らすことに貢献してくれます。

スマホAR領域で有名な事例には「IKEA」や「Shopify」があります。なかでもIKEA ARアプリは先駆的な印象で、コマース領域におけるAR利用とエンゲージメントの高さを誇っています。Shopifyもプラットフォーム利用者向けにAR機能を提供しています。また、利用導線のわかりづらさが目立ちますが、実はAmazonもARショッピング機能を長く提供しています。

ARショッピング領域の前身になっているのが、ウェブでコンテンツをリッチ展開するデザイン・トレンドです。たとえばGUCCIなどはキャンペーン・ページ展開時に積極的に開発リソースを投入して、商品体験を拡充させています。動的に動くウェブページでは、商品のストーリー性がよく伝わるようにデザインされています。

また、トランクケース・ブランド「RIMO」のように2DWebサイト上に3D商品を表示しているサイトもしばしば見かけるようになりました。ユーザーが商品を自由に扱いながらも、ブランド側で注目してもらいたい箇所には注釈を入れて説明を読んでもらう上手い導線がなされています。説明を読みながら商品が実際に動くようなウェブ上での商品リッチ体験は長く評価されており、過去のウェブデザインのアワードに表彰されているのはRIMOのような企業でした。

さて、こうしたウェブサイト上は必然的に高いデザイン力が求められます。サイト開発にも一苦労するでしょうし、商品の体験ストーリーを紡ぐための労力も高いでしょう。

そこで登場するのがスマホARの領域です。これまでサイト上だけで完結していた商品体験を現実上に拡張できるようになり、かつ、上記で紹介してきた企業のように商品のストーリー性や使い勝手を細かく、直感的に伝えられます。

Shopifyも同社利用の事業者が簡単にショッピングAR機能を使えるようにノーコード開発機能を提供しています。ただ、Avataarの場合はShopifyのようなプラットフォーマーに、その基盤となる開発ソースを提供する「プラットフォーム・オン・プラットフォーム」の市場ポジションを確立しようとしており、市場の切り分けが変わってきます。ユーザー需要が高まるトレンドの中、B2B事業として拡大する非常に上手いグロース戦略を採用していると言えます。

12月28日〜1月10日の主要ニュース

BRIDGE Members

BRIDGEでは会員制度の「Members」を運営しています。登録いただくと会員限定の記事が毎月3本まで読めるほか、Discordの招待リンクをお送りしています。登録は無料で、有料会員の方は会員限定記事が全て読めるようになります(初回登録時1週間無料)。
  • 会員限定記事・毎月3本
  • コミュニティDiscord招待
無料メンバー登録