CES 2022: John Deere、自動運転トラクターを年内実用化へ——乗用車技術が通用しない業務特化車分野に強み

Image credit: John Deere

John Deere は、今年の CES で4万ポンド(約630万円)の自動運転トラクターを発表、2022年末までに実用化するとしている。

このシステムは、6対のステレオカメラと GPS ガイダンスを使って、チゼルプラウ(土壌を爪でひっかくように耕起する構造)と他の機器を牽引する機能を備えたトラクター「Deere 8R」を動作させる。農家は、スマートフォンのアプリをスワイプするだけでトラクターに作業させ、その後は、家族と過ごしたり、他の仕事をしたりするために、現場を立ち去ることができる。アプリを使ってトラクターが畑を耕したり他の作業をしたりしている様子をモニターし、ソフトウェアが処理できないような異常があればアラートを受信することができる。トラクターは、作業中に畑の作物の状態、土壌の状態、水分量などのデータを収集することもできる。

Deere & Company の CTO Jahmy J. Hindman 氏は、この発表を農場の生産性向上のための画期的な出来事として祝った。

最近まで農業は、馬力、投入物、農地の広さ、作業、全ての面でより多くすることを常に目指してきた。この10年間は、より少ない手間でより多くのことを行い、より多くの情報に基づいた意思決定を行うための追加のツールを農家に提供することだった。

上の写真。CES で紹介された自動運転トラクターと、John Deere 傘下 Blue River Technology のWilly Pell氏。
Image credit: David Carr

ここ数年、CES では自動運転車が定番となっており、今年も自動運転や運転支援システム用の LiDAR(光検出・測距)センサーなどの部品を提供する出展社がいた。しかし、Deere のトラクターは LiDAR を使用していない。同社の技術者は、自動運転車の世界からハードウェアやソフトウェアをアプリケーションに移植することはできなかった。トラクターは、振動や温度、埃など、自動車とは根本的に異なるコンピューティング環境である。そのため、例えばステレオカメラは Deere 独自の設計になっているという。

Hindman 氏によると、Deere は既製のコンポーネントから始めることができるが、必ず用途に合わせてカスタマイズしなければならないそうだ。例えば、Deere 8R には Nvidia Jetson Xavier GPU が使われているが、従来のコンピュータファンが実用的でない埃っぽい環境でのパッシブ冷却のため、カスタムアセンブリされている。

ソフトウエアの面では、すべて我々が開発したもので、まったく新しいものだ。(Hindman 氏)

農業への AI の応用を模索する立場に立つため、Deere は2017年に3億500万ドルを投じて Blue River Technology を買収した。

Blue River は、Deere の除草剤散布技術「See and Spray」の元になる技術を提供。畑に散布する化学物質の量を約80%削減し、農家のコスト削減とより持続可能な農業の推進に貢献するとしている。また、See and Spray は、ステレオカメラによるコンピュータビジョンをベースに、噴霧器が植物と雑草の上を通過する際に、雑草にのみ薬剤を散布するよう識別している。

Deere のアプリケーションはカスタムメイドだが、ディープニューラルネットワークの一般的なアーキテクチャなど、AI に関するより一般的な技術の進歩を活用していることは確かだ。(Blue River 自動運転および新規事業担当バイスプレジデント Willy Pell 氏)

Deere の子会社となった Blue River の人員は現在約30人だそうだ。

Deere の技術者は、自動運転トラクターのプロジェクトで、試作したトラクターにさまざまなセンサーを搭載し、畑を走らせてデータを記録し、どのセンサーが最も有用な情報を提供するかを調べた。我々は、LiDAR を使うと思っていたので、直感的に分かりにくかったのだが、ステレオカメラにたどり着いた。(Pell 氏)

LiDAR は、前方を走る他の車両との距離や方向、速度などを検出するのに適しているが、広大な農地を進むトラクターにはあまり適していない。

Deere のソフトウエアは、画像を複数のビューに分割することができる。つまり、ライブ画像、深度マップ、画像の各部分を画素ごとに分類し、地面と空、作物と畑に落ちている異物を区別することができるのだ。

トラクターは、圃場を横切る動物を回避するような一般的な事象に対処するようにプログラムされているが、予期せぬ事態に対処するための異常検知システムも搭載している。例えば、学習データにはない物体を検出した場合、停止して農家の判断を仰ぐ。

Deere は、この機械が自律的に、かつ安全に動作するように配慮していることを強調した。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

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