次世代バッテリ開発、Kファッション卸ECが大型調達など——韓国スタートアップシーン週間振り返り(1月3日~1月7日)

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本稿は、韓国のスタートアップメディア「Startup Recipe(스타트업 레시피)」の発表する週刊ニュースを元に、韓国のスタートアップシーンの動向や資金調達のトレンドを振り返ります。

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1月3日~1月7日に公開された韓国スタートアップの調達のうち、調達金額を開示したのは20件で、資金総額は2,815億ウォン(約270億円)に達した。

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主なスタートアップ投資

  • バナジウムイオンバッテリ開発会社 Standard Energy(스탠다드에너지)が Lotte Chemical から650億ウォン(約62億円)を調達。バナジウムイオン電池はリチウムイオン電池より発火の危険性が少なく、優れた耐久性を持ち、ESS(エネルギー貯蔵システム)市場の次世代バッテリとして注目。今回の投資で Lotte Chemical は Standard Energy の2大株主となったため、事業シナジーが期待される。
  • 東大門(トンデムン)ファッション卸売取引プラットフォーム「Sinsang Market(신상마켓)」を運営する Dealicious(딜리셔스)が540億ウォン(約52億円)を調達。2013年からサービスを開始し、12月基準の取引額で2兆ウォン(約1,900億円)を突破。 K ファッションのデジタル転換を成功に導いた経験をベースに、グローバルファッション市場進出を本格化。
  • XR 開発会社 VIRNECT(버넥트)が300億ウォン(約29億円)を調達。資金は産業用 XR エコシステム構築とグローバル進出のためのマーケティングに積極的に活用する。メタバース市場の先頭企業として今年上場予定。
  • 自動運転スタートアップ SpringCloud(스프링클라우드)が180億ウォン(約17億円)を調達。3月に麗水(ヨス)で自動運転モビリティハブ「Multiverse Planet(멀티버스 플래닛)」を披露する予定。調達した資金で自動運転シャトルサービス、AI 自動運転技術、データサービスを強化。
  • AI スタートアップ AIMMO(에이모)が126億ウォン(約12億円)を調達。AI 学習に必要なデータを自由に作れるプラットフォーム「AIMMO Enterprises」を提供。今回の調達を受けて、AI 活用したデータラベリング技術開発に注力する。
  • ファンダムビジネスの Bemyfriends(비마이프렌즈)が80億ウォンを調達。クリエイタープラットフォーム「b.stage(비스테이지)」のグローバルベータサービスを開始。

トレンド分析

2021年の主な M&A 事例を振り返る

2021年はスタートアップ M&A 市場がこれまでで最も活発だった年だった。スタートアップがスタートアップを買収する事例はもちろん、スタートアップが中堅企業を買収したり、グローバル企業に買収された事例などスタートアップや投資会社にとっては機会の年だった。今年最高額で買収されたスタートアップは、Tinder 運営会社 Match Group に17億2,500万米ドルで買収された Hyperconnect(하이퍼커넥트)だ。「配達の民族(배달의민족)」に続き、韓国のテックスタートアップがグローバル企業に売却されることを証明した事例となった。

大企業は、自社の競争力強化に事業領域の拡大にスタートアップを積極的に活用している。 GS Retail はプライベートエクイティの活用と、DeliveryHero 傘下にあったフードデリバリ「Yogiyo(요기요)」の獲得でオフライン流通市場先取に乗り出し、ロッテも「Joongo Nara(중고나라=チュンゴナラ、「中古の国」の意)」を買収し、遅れている e コマース事業で突破口を探している。

Kakao はグローバルステージで活躍中のウェブ小説・ウェブトゥーンプラットフォーム「Tapas Media(타파스미디어)」と Radish を買収、グローバル市場進出を加速し、コマース領域拡張のために「ZigZag(지그재그)」運営会社 Croquis.com とライブコマースプラットフォームを運営する Grip Company(그립컴퍼니)を買収した。

2021年はスタートアップ間の買収事例が大きく増え、特にユニコーンスタートアップがスタートアップを吸収することが多かった。Musinsa(무신사)は Styleshare(스타일쉐어)と29CMを3,000億ウォン(約290億円)規模で買収し、女性ファッション分野の競争力を強化し、Yanolja(야놀자)は第1世代ベンチャー企業 Interpark(인터파크)を2,900億ウォン(約280億円)規模に買収し、スタートアップが業界トップ企業を買う事例も登場した。Yanolja は他にも、Sanha IT(산하정보기술)、Dable(데이블)などを買収し、IPO を控えて規模拡大に拍車をかけている。また、「Toss(토스)」を運営する Viva Republica(비바 리퍼블리카)は Socar(쏘카)の「Tada(타다)」部門を運営する VCNC を吸収し、金融とモビリティを結合した新しいモデル誕生を予告した。

他にも、ミールキット企業の FreshEasy(프레시지)が糖尿病などのヘルスケアを助ける Doctor Kitchen(닥터키친)や Heodak(허닭)など関連企業を買収し、中古品取引プラットフォーム「ポンゲ・ジャント(번개장터、雷市場)」も中古衣類企業2社を買収し、事業拡大によるユニコーン席を狙っている。

買収合併事例が増加する理由は、急速に変化する市場トレンドに対応すべく、企業が自ら内部で新規事業を進めるのではなく、市場で頭角を呈している外部企業を吸収する戦略からだ。豊かになった資金力が裏付けられたからこそ可能になった。また、過去には同業間での買収が多かったが、現在では他の分野の企業を買収してシナジーを狙う企業も増えている。このような流れの中で VC は、スタートアップ間またはスタートアップが既存企業を買収する事例は2022年にも増加すると予想している。

【via StartupRecipe】 @startuprecipe2

【原文】

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