9回目を迎えたHackOsaka、ピッチコンテスト「Hack Award 2022」に世界のスタートアップ10社が集結

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(個別にクレジットしたものを除き、写真はいずれも主催者提供)

大阪市、都市活力研究所、JETRO 大阪本部は10日、年次のスタートアップ・カンファレンスである「HackOsaka 2022」を開催し、日本内外から投資家・起業家・メディアなどが参加した。2013年からスタートしたこのイベントも今回で9回目を数えた。2020年はイベントの中止を余儀なくされ、今年は昨年に引き続きオンライン開催となった。

イベントの終盤では、日本内外から集まったスタートアップ10チームが、大阪の企業との協業や投資誘致を念頭にピッチを行なった。本稿では、入賞チームを中心に紹介する。審査員を務めたのは、以下の3名の方々だ。

  • Brian Lim 氏(Country Manager, Rainmaking Innovation Japan)
  • 小林俊平氏(Director, Japanese Partnerships, Plug and Play Japan)
  • Tim Miksche 氏(Founder & CEO, transferNET)

今回は24カ国から、主に、「次世代モビリティ」「インフラ(既存インフラの効率化、通信含む次世代インフラ等)」の分野のスタートアップから応募が集まった。審査員は、コンセプトの独自性、コンセプトの実現性、社会へのインパクト、将来に向けたスケーラビリティの4つの項目について採点し、その合計点で上位チームが選抜された(スポンサー賞は、各スポンサー個別審査による選抜)。

【Gold Award】HeyCharge(ドイツ、ミュンヘン)

副賞:賞金50万円

電気自動車への充電にあたっては、自宅以外では CHAdeMO や Combo といった充電ステーションに頼ることになる。日本ではユーザ認証カードがあればよいが、HeyCharge のあるドイツなどではスマートフォンを使った認証が一般的のようだ。一方、充電は8割が屋内で行われることが多く、地下だった場合にはステーション側、ユーザ側、共にインターネット接続を確保するのが難しい。

HeyCharge は、充電ステーションとユーザのスマートフォンを Bluetooth 接続することで、ユーザ認証・充電を可能にするシステム。スマートフォンは充電時にインターネットと接続する必要がなく、電波の状態が良好な環境に移動したタイミングで、HeyCharge のクラウドと情報を同期する。屋内駐車環境での充電インフラの拡張性を高め、誰もが手軽に電気自動車を充電できるようにする技術を構築する。

【O-BIC Award】H3 Dynamics(シンガポール)

副賞:10万円(提供:大阪外国企業誘致センター)

H3 Dynamics は、デジタル化、自律運航関連のソリューション、水素駆動による自律飛行の推進という3段階のアプローチで、脱炭素を可能にする先進的なエアモビリティを開発。同社のインフラ外観検査のAI解析ソリューションでは、80%の時間短縮、50%のコスト削減、作業者のリスク0、精度20%向上を実現する。

主に提供している製品は2つ、デジタルなマイクロサービスプラットフォーム「H3 Zoom」と、現場に展開可能なテレロボティクス「DBX(DRONEBOX)」だ。スキャンされた画像データを産業施設や商業施設に合わせた検査レポートに変換し、従来の紙の報告書に代えて、世界中のどこからでも運営者や契約者にダウンロードできる利便性をもたらす。

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【Expo 2025 Osaka, Kansai, Japan / JETRO Osaka Award】MobyFly(スイス、コロンジュ)

副賞:2025年日本国際博覧会協会での個別ピッチ参加権(日本国際博覧会協会 + JETRO 大阪本部)

MobyFly は、21世紀における大量輸送の最前線に立ち、将来の水上輸送を変えるべく、高速で効率的なゼロエミッションの水中翼船を設計する。時速70km以上のスピードで、最大300人の乗客を快適に水上輸送することができ、現在のディーゼルフェリーに比べて最大70%少ないエネルギーで航行することが可能。

現在の水中翼船は、1時間あたり2,000リットルの燃料を消費する。燃料が水や空気を汚染し、1日1万ユーロのコストがかかる。MobyFly は2024年のパリ・オリンピックにも参加する予定で、セーヌ川で人を運ぶフランスの運送会社とコンセッション契約を結んだという。最初の船は2022年9月にセーヌ川で試験運航され、12人の乗客を乗せる予定。

【KGAP+ Award】Shaper Shape(アメリカ、パロアルト/フィンランド)

副賞:アクセラレーションプログラム「KGAP+」第6期への参加権(提供:国際電気通信基礎技術研究所)

Shaper Shape は、ドローンからの LiDAR データ、地上データ、気象衛星などのサードパーティデータを収集・解析することで、デジタルツインを作り出すサービスを開発している。主に、電力会社の送電線ネットワークのメンテナンス作業効率化などに利用されている。最近では気候変動や、それがもたらす山火事の頻発などにより、電力会社のメンテナンスにかかる手間は増加傾向にあるという。

同社の顧客には、SDG&E(サンディエゴ)や PG&E(サンフランシスコなど)といったアメリカのトップ電力会社や、海外の電力会社が名を連ねている。同社は、まずインド市場に進出し、さらに他のアジア地域にも進出することを決定しており、グローバル展開を図る。同社は昨年、インドの AI 企業 Industry.AI と提携した。この提携は、インドにおける電力線の安全性や信頼性の向上、二酸化炭素排出量削減に寄与するという。


今回、入賞には至らなかったものの、ファイナリストとしてピッチ登壇したスタートアップは次の通り。

  • Parkingbnb by UrbanChain Group(香港)……カメラとオンラインプラットフォームによるスマート駐車場管理システムで、土地所有者の収益アップを支援する。駐車場の事前予約ではなく、ネット上で空き状況を表示、ドライバーを空いている駐車場へ誘導することで50%の利益増を実現する。
  • Autofleet(イスラエル、テルアビブ)……フリート事業者向けにフリート車両を最適化してあらゆる需要に対応する VaaS(Vehicle as a Service)プラットフォームを提供。運用のダウンタイムを最小限に抑えながらも、あらゆる地域の既存の車両資産を可能な限り効率的に使用することで、新しい効率的なサービスを活発に開始することが可能になる。
  • Flying Whales(ブラジル、 サンカエターノ・ド・スル)……ホバリング状態で最大60トンの積載貨物の積み下ろしが可能な先駆的な航空貨物ソリューション「LCA60T」を開発。林業、再生可能エネルギー、建設および開発、産業用貨物の運搬、人道支援および災害救助といった5つの主要分野に対応し、CO₂排出量の少ない輸送手段の実現に向けて取り組んでいる。
  • Infinite Foundry……工場向けに、3Dデジタルツインで工場の生産環境を構築する。顧客の目的に合わせてフルカスタマイズすることが可能で、生産状況のモニタリング能力の向上と生産トラブルの低減、レイアウトと作業効率の最適化、工場内での手作業をリアルタイムで人間工学的にマッピングしたり、作業場の正確なデジタルレプリカにおける作業者の仮想トレーニングを実現する。
  • アジラ(日本、東京/ベトナム、ハノイ)……防犯セキュリティドメインに施設向け AI 警備システム「アジラ」を提供する。世界トップクラスの人物の行動推定技術を保有。7ヶ国の高度なIT人材が在籍し、日本とベトナムに拠点を持つグローバルスタートアップ。
  • NanoLock Security(イスラエル、ホド・ハシャロン)……ゼロトラスト(すべての通信を信用しないことを前提にさまざまなセキュリティ対策を講じる)かつデバイスレベルでデバイス・機器を保護する。デバイスや機器レベルで重要なコードやデータを不正に改ざんされることを未然に防ぎ、機器の運用性を維持、事業継続性を保持することができる。

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