大統領目標「ユニコーン25社」を3年早く達成、Sigfoxの窮地で考えた仏エコシステムの成熟度【ゲスト寄稿】

mark-bivens_portrait本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens 氏によるものだ。彼は、日本で Shizen Capital(旧 Tachi.ai Ventures)のマネージングディレクターを務める。本稿は Bivens 氏の許諾を得て翻訳転載した。英語によるオリジナル原稿はこちらから。(過去の寄稿

This guest post is authored by Mark Bivens. Mark is a Paris- / Tokyo-based venture capitalist. He is the Managing Partner of Shizen Capital (formerly known as Tachi.ai Ventures) in Japan. The original English article is available here.


今週の Sigfox の凋落の発表について、私が揶揄するのは簡単なことだ。私が以前いたフランスのファンドは、その昔、Sigfox に投資する機会を逸してしまったのだ。私の元パートナーは、Sigfox の「海を煮る(過剰に無意味なことをする)」ようなアプローチで広範な IoT ネットワークインフラを構築するのは扱いにくいと鋭く判断したのだ。その代わりに、彼は、この分野でより小さなフランスのプレーヤーである Actility への投資をマネージした。Actility は Sigfox の直接の競争相手ではないものの、ライバルのようなものだ。Actility はまだユニコーンの地位には到達していない。Actility への投資資金は妥当なレベルにとどまっており、その一部セカンダリは初期 VC に素晴らしい倍率を提供し、同時に新しい投資家にとっては将来の成長可能性を備えた魅力的な価値となった。

しかし、私は、Sigfox が連邦破産法第11条の適用から復帰することを応援している。Sigfox は、多くの点で LaFrench Tech と技術系ユニコーンの輩出を目指すフランスの象徴的な存在だ。Sigfox の幻想的な旅がどのようにしてここまで来たのかに興味がある人は、Chris O’Brien 氏が素晴らしい調査でその幕引きをしてくれているので、ぜひ読んでみることをお勧めする。

また、余談だが、ネットワーク接続を必要とするコネクテッド・オブジェクトの急増を予想した Sigfox は正しい道を歩んでいると私は思う。完全に IoT ネイティブなネットワークを開発するという野心において、Sigfox は既存の通信事業者が提供するものよりも優れたものを構築していた可能性がある。むしろ、Sigfox の苦戦は、そのコアアーキテクチャの本質的なハンディキャップに起因するものであることが判明するかもしれない。通信事業者の先達と同様に、Sigfox は中央集権型モデルだ。まだ結論を出すのは早いが、IoT ネットワークの広域接続に最適なアーキテクチャは、中央集権型ではなく、分散型であることを予備的な証拠は示している。ちなみに、私がワイヤレスネットワーク「Helium」の日本での構築を熱烈に支持する根拠はこれだ。

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ユニコーン

しかし、この記事は、Sigfox や IoT ネットワークの話ではなく、ユニコーンの話だ。

フランスでは先週、1年半前にわずか13社だったテックユニコーンの25社目が誕生し、大きな話題となった。私は、ユニコーンという言葉は魅力的であると同時に欠点もあると思うが、この指標はフランスのテックエコシステムの20年にわたるサクセスストーリーを強調するものであると思いる。

私がしばしば言及するように、フランスのベンチャーエコシステムは過去20年間で開花した。20年前、フランスはスタートアップやベンチャーキャピタルにとって、荒涼とした風景だった。当時は、起業家精神は奨励されず、リスクキャピタルは基本的に存在せず、有望な若者は家族や社会から説得されて、予測可能な、そして最も重要な安定したキャリアを追求するために既存の大企業に入社していたのだ。

しかし、エンジェル税制、公共投資銀行、LaFrenchTech などの政府の取り組みにより、リスクとイノベーションに対するフランス人の意識は次第に高まっていった。リスク回避や失敗への汚名といったフランスの伝統的な文化的メンタリティは、起業や会社設立への熱意へと変化していったのだ。

2019年、マクロン大統領が2025年までにフランスに25のテックユニコーンを作るという大胆な目標を発表したとき、フランスが3年早くその目標に駆けつけると予想した人はほとんどいなかった。しかし、世界のリーダーたちは注目した。これが、このような指標の良いところだ。このような指標は、各国のエコシステムがスコアを記録するための目に見える手段なのだ。

もちろん、一国のユニコーン数のような目に見える指標は、ユニコーンがつまずいたときにも注目を浴びる。それがこのゲームの本質なのだ。しかし、私は、死にゆくユニコーン、あるいはユニコーンは、ベンチャーエコシステムの成熟度を測るリトマス試験紙のようなものだと考えている。誤解のないようにお願いする。私は、シービスケットの最後には涙を流したし、ユニコーンの死骸を数えることに喜びを感じているわけではない。しかし、世界を変えるようなイノベーションのサクセスストーリーは、巨大な失敗の無い環境では存在し得ないのだ。

Sigfox はまだユニコーンではないが、間違いなく堕ちたユニコーンを象徴している。フランス人がこれを受け入れたという事実は、フランスのエコシステムとしての成熟度を示している。それに対して、私は彼らに敬意を表したい。

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