VRChatやAxie Infinityはどう成長した?ーー初期投資家 GFR Fund 筒井氏に聞く「その強さ」の秘密

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

Facebookによる衝撃的な社名変更により、一気にトレンド入りしたのが「メタバース」市場です。特に課題とされてきたヘッドマウントディスプレイ「Meta Quest2」の戦略的価格設定によって一気に市場が拡大し、その普及台数は1,000万台を超えたと報じられています。

この市場にさらなる可能性を感じさせているのがクリプト市場の盛り上がりです。ここ数年にわたって投資熱を帯びたNFTが牽引役となり、ゲームとDeFi(分散型金融市場)を組み合わせた「Play-to-earn(遊んで稼ぐ)」は仮想世界における新たなビジネスモデルとして世界中の注目を集めています。

この二つのビッグ・トレンドを牽引するスタートアップに初期の頃から投資家として参加していたのがGFR Fundです。グリーが中心となって設立したこのグローバル・ファンドは、2016年の設立から数年にわたり、ポートフォリオを拡大させてきました。本稿ではそのマネージング・パートナーとして活躍されている筒井鉄平さんにお話を伺っています。(文中太字の質問は全てMUGENLABO Magazine 編集部、回答は筒井氏、文中敬称略)

初号ファンド設立から5年、2号から3年経過しました。ここ最近のトレンド変化で見えてる景色も変わってきていると思います。まずファンドの概況を教えていただけますか?

筒井:1号は2016年に立ち上げた1,800万米ドル、日本円で20億円弱なんですけど新規も追加も全部終わっていてほぼ回収ステージに入ってます。2号は2019年設立で、これも2,000万米ドルくらいだったんですけど、これは新規がもう終わって、追加投資の枠を少しだけ残している感じです。

先日、スカウトファンドも発表されていました

筒井:はい、スカウトファンドは2020年の7月に立ち上げて、ただこれも金額は100万米ドルだったので、半年で全部使いまして、その時点でもう追加投資もやらない方針だったので終わりましたね。

2号ファンドですが、VRChatやAxie Infinity、THETAなど特徴的なポートフォリオになっています。どういう傾向だったのでしょうか?

筒井:1号はVR/ARに特化したファンドだったので、VRChatとかTHETAは1号からの投資なんです。1号からは23社に投資をしていて、他にもNTTドコモさんやエイベックスさんが投資をしているWaveというバーチャルコンサートをやっている会社に投資をしていたりとか。

大きいところで言うと全然メタバースとは関係ないんですけど、ARとかAIのツールを使って製薬業界向けにサービスを提供するApprentice.ioという会社に投資しています。そこもシリーズCぐらいまできていて、イグジットという意味だとLoom.aiというアバターの会社がRobloxに買収されていたり、StreemっていうARのホームサービスで、家が壊れた時とかにARを使って解決するような会社は競合他社に買収されていたりします。それが1号ファンドです。

2号は30社ぐらい投資をしていて、その中にAxie Infinityという会社があったり、大きなところでいうとAnimoca Brandsという香港のブロックチェーンゲームの会社だったり、他に特徴でいうとeSports系の会社やゲームのスタジオにも投資しています。変わり種だとTovalaっていうフードテックの会社にも投資していますね。ここもシリーズCぐらいまできています。イグジットでは、最近だとRTFKTというNFTのブランドがあります。デジタルスニーカーの会社で、ここはNIKEに買収されました。あとSamba TVっていうスマートTVの分析ツールを提供している会社がIPOを発表しています。

GFR Fundのポートフォリオ(一部)

Axie Infinityやそこに投資したAnimoca Brandsなど、GameFi(ゲームファイナンス)の流れの人たちは今、まさにトレンドの中心になろうとしています。彼らにはどの辺りから着目されてたんですか?

筒井:我々はスカウトファンドとは別にいろんなファウンダー、投資先の起業家だったりとかエンジェル投資家を中心にスカウトネットワークっていうのを築いているんですが、Axieは実はそのスカウトの一人からの紹介で、去年の頭ぐらいに投資をしました。Animocaが最初に投資をして2回目がシリーズAで我々が入って、その後にAndreessen Howrowitz(a16z)などが入ってきた感じです。Animocaはちょっとトリッキーで、我々が投資した会社が彼らに買収されて株主になった、という経緯です。

そういうことだったんですね。あそこもファンドみたいですよね

筒井:そうですね、いろいろ買収も投資も200社ぐらいしてるって言ってました。

メタバースについては、FacebookのMetaへの変更というのがインパクトあり風景が変わったように思うんですが、その点いかがでしょうか?

筒井:2016年から投資をしているので、VRChatも一番最初の投資でしたし、Loom.aiもRobloxに買収されたりしていたので、周りが騒いでるのはなんとなく分かって、今回こういった取材のお話をいただいたりとか、全然関係のないところからメタバースの話を聞かせてくださいっていうのがくるようにはなったので、そこはなんか面白い変化だなと思います。投資という観点では全く変えてなくて、そもそもずっと昔からこの領域に投資をしてるんで、同じように投資を継続してるっていう感じです。

唯一良かった点を挙げるとすると、これは相当投資家視点ですけど、我々が投資したあとの追加投資っていうか追加調達はすごく楽になりました。バリュエーションが高くなりがちで、実態を伴わないままバリュエーションだけが高くなるっていう傾向は不安材料ですが、たぶん3〜4年前の時にVR関連で苦しんでた会社たちが、メタバースの勢いでどんどん追加調達や、調達をしてなくても投資家から声がかかるっていう状況にはなってますね。

VRChat(Image Credit : VRChat)

話をVRChatに切り替えます。今、Meta Questのネットワークの中では恐らく一番使われてるアプリだろうと言われているのですが、長年見られている彼らの強さはどこにあると思われますか?

筒井:強みというか気を付けてることが、コミュニティをすごく大事にしてるっていうのはすごくあります。元々、VRが好きな人たちが集まって始めたコミュニティという空間だったので、メンバーがメンバーを呼んでみたいな形で、どんどん大きくなっていく中で、最初の従業員ってどこから雇ったかって言うと、初期の頃のコミュニティメンバーだったんですよね。

最近になってようやくちょっとチームを拡大しているので、もうそういったことはないんですけど、これまで初期の50人のほぼ全部がVRChatのコミュニティの中から来てる人たちだったんです。

(Quest2が販売になって)爆発的に伸びたタイミングとか、ユーザー数の伸びとか見てて面白いんですよね。12月にガガッと上がってそのまま高止まりして、徐々に成長するんですけど、あるところでまたガッと上がってみたいな感じで。それを4〜5年繰り返してきてるので必ずしもエクスポネンシャル・グロースみたいな感じじゃないですけど、それでもずっとやってきてますし、やっぱりメンバーが増えるといろんな悪い人たちも増えるので、セキュリティとかモデレーションとか相当時間をかけています。あと、クリエイターに本当に支えられたコミュニティだと思いますね。

ここ最近ずっとVR系の取材を続けていると、ほぼみなさんクリエイターエコノミーの話をされるんですよ。VRChatも日本だったらpixiv FanBoxなどでアバターの売買がされていたり。課金やギフトとはまた違った経済圏が出てきて、恐らく投資家の方々もすごく期待されている市場だと思うんですけど、この辺りどういう風に分析されていますか。

筒井:マネタイズっていう観点で言うと今、VRChatって二つあって「VRChat Plus」といって、月10ドル払うと特典のアバターがもらえたりとかサポーターバッジがもらえたりとかするものです。これに加えてつい先月始まったのがギフティングのサブスクリプションです。

クリエイターをサポートするために毎月お金を払えるっていう仕組みですね。これがすごい伸びていってて投資家目線で言うと、昨日も実はボードミーティングだったんですけど、一つ議論になったのはやっぱりユーザー拡大なんです。

他のプラットフォームにいかに展開していくのか。やっぱりRec Roomがいい例で、彼らはコンソールにも提供するしあとスマホですね。モバイルもやっているんで、何がそこに追いつくのかっていうのが一つ。もう一個はマネタイズという意味だとやっぱりクリエイターエコノミーです。クリエイターのマネタイズをサポートする仕組みっていうのは、本当に早く作らなきゃいけないねっていうのはいつも議論になります。

マネタイズのスイッチが入ったからといって爆発的にガーンと伸びるわけじゃないと思うんですけど、徐々に徐々に、そこは熱量が他のコミュニティに比べて本当に高いんで。クリエイターへのサポート熱っていうんですか?だから相当マネタイズっていうのは熱く、大きく伸びるだろうなと思ってて、そこは投資家としては相当期待しています。

すごい楽しいですね!因みにYouTubeやTikTok、Metaなどがファンドを作ってクリエイター支援に乗り出していますが、この辺りはいかがでしょうか?

筒井:恐らく囲い込み系のものは計画されてないです。クリエイターをサポートするっていう仕組み作りだったんですけど、例えばお金で囲い込むとか、補助金とか、ファンドとかっていうのは全く計画にはないですね。

ひとつ面白い議論があって、投資家はボードミーティングでも毎回議論になるんですけど、NFTやった方がいいんじゃないかっていう。ただ経営陣は断固としてやらない。コミュニティが求めてないからって。そこはもうすごく貫いてますね。コミュニティが求めてないからやらないっていう(笑。しょうがない。

Axie Infinity

せっかくそちらの方の話に入ったので。AxieはゲームとDeFiの組み合わせのような世界観でユーザーを集めていますが、そもそもどういうチームなんですか?

筒井:Axieはそうですね、Crypto Kittyが始まった頃にNFTが好きなコミュニティが出来て、そのコミュニティの中で知り合った5人組が始めた会社なんです。Crypto Kittyはそれはそれで面白いんだけど、結局コレクタブルってなんか集めるだけなので、あれのゲームができたら面白いんじゃないかっていう観点で、ポケモンGOみたいなゲームと掛け合わせたゲームを作りたいって言って始まったそうです。

面白いのは彼らもゲームの人じゃないんですよね。クリプト好きの人なんですね。ゲームが好きなクリプト好きの人。だからそういう意味だと、ゲームのプロの観点から言うとあれはゲームじゃないって。まぁカードゲームから見たらそうなりがちなんですけど(笑。

彼らがうまかったのは実は資金調達を全くせずに、クリプトに当たるあのAxieっていうキャラクターがあるじゃないですか。あれをプレセールでどんどん売っていったんですよね。その売り上げを例えば1億とか2億とか、開発資金に充ててずっと追加の資金調達をせずに走らせていって、2〜3年やってきたんです。

なるほど。GFRとしては株式(エクイティ)で出資されてるんですよね?

筒井:我々はエクイティなんですけど、エクイティやったのはたぶん3回しかタイミングがなくて、一番最初Animocaが入ったプレシードのラウンドと、我々が入ったシリーズA、あとa16zが入ってきたシリーズBなのかな?3回だけですね。

トークンと株式の組み合わせについてはいろいろ議論があります

筒井:我々、実は1号からトークンの設計を入れてるので、THETAはエクイティの投資家にトークンを分配してるんです。結果的に1号でも2号でも我々はNFTも持っていて、一応設計上は我々のファンドはUSのファンドなんで別にそこは気にせずに、2号からはトークンにも投資ができるように設計しているので、投資はできるようにはなってます。これまでは積極的にやっていなかったのですが、最近立ち上がった3号からは積極的に投資をする予定です。

それと、AxieやYGGの代名詞になってますが、スカラーシップという新たなゲームのビジネスモデルについて筒井さんの見解を教えてください

筒井:はい、スカラーシップモデルのあるAxie Infinityなどのゲームは最初、Axieを3体買ってゲームを始めなきゃいけないという「初期投資」が必要なんです。暗号資産が高騰した時は1,000ドル、つまり10万円ぐらいの初期投資が必要になる。VRヘッドセットも高いですよね。僕は完全にあれはリース会社だと思っていて、スカラーシップモデルは(Axieなどのキャラクターを持っている人が別の初期ユーザーに)それを貸し出ししてレンタル料で儲けるっていうことをしてます。

そしてそのゲームで遊んだユーザーはそこで得られるトークンや強くなったキャラクターのトレードでまた儲ける、という仕組みですよね

筒井:確かに、クリプトの世界で生まれたのはちゃんとPlay-to-Earnっていうか、プレイをユーティリティというかAxieを使うことによってお金が儲けられるっていう仕組みが得られるので、たぶんああいう形態が生まれたんだと思います。じゃないと回収する手段がないと思うんです。NFTに関してはトークンのDeFiとかステーキングとかだったら同じようなのかもしれませんけど、貸し出すことによって利用料が取れるっていうレベニュー手段が生まれた。結局、無数にありますもんね。YGGとかも含めると。

今後、日本にどのように関係して入ってくるのか。その辺りいかがですか

筒井:そうですね、Axieは実はプラットフォーム化をもう進めていて、例えば彼らは土地とかも販売しているのでその販売した土地の上でいろんな事業、要はゲームですよね、ゲームを第三者が作ってそこで収益を上げることができるAPIを開放しています。

あと最初のゲームの開発者の募集をしてスクールみたいなこともやってます。ゆくゆくは世界をオープンにして、第三者のゲームのデベロッパーが入ってきて、そういう意味だと同じゲームプラットフォームに近いです。ファーストパーティからゲームのプラットフォーム化していくっていう動きを着々と進めているので、そこはすごく信頼して見ています。

さらにRoninっていう独自のサイドチェーンを開発して、それを自分たちのゲームだけで使ってたんですけど、それも第三者に開放することで例えばゲーム系の技術だとPolygonとかがあるんですけど、それと並列した技術として提供するようなこともやり始めてます。

興味深いお話ありがとうございました。お時間になりましたので、続きはまたの機会に

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