#1 スタートアップと大手のミスマッチどう防ぐ/アクセンチュア・ベンチャーズ(ACV)日本統括・槇隆広

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本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容の一部をテキストとして掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ がスタートアップと手を組み、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャスト。グローバル・テックシーンを見つめてきたITジャーナリストの松村太郎をナビゲーターに迎え、旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

初回となる今回は、アクセンチュア・ベンチャーズ日本統括を務める槇隆広が大企業とスタートアップをつなぐ役割と、その課題について語ります。(ポッドキャストの一部をテキストにしてお届けしています。太字の質問はすべてナビゲーターの松村太郎さん)

ポッドキャストで語られたこと

  • アクセンチュア・ベンチャーズとは
  • オープンイノベーションを起こす方法
  • グローバル活動の内容、地域ごとの特徴
  • ミスマッチのハードル

オープンイノベーションでは登場人物が増えてきたり、お互いの強みであるとかマッチングが大変になるんじゃないかと思うのですが、アクセンチュア・ベンチャーズさんでオープンイノベーションを起こす作法みたいなものってお持ちなんですか?

槇:アクセンチュア自身、そういうことを昔から得意にしてきた会社の一つだとは思うんです。例えばいろんなステークホルダーや、企業さんが集まって一つの取り組みをやる場合、プロジェクトマネジメントや推進という形で我々が入ってご支援させていただくというのはすごい前から多く、ある意味で長けた会社なのかなと思っています。

ただそれが今までは大きな企業同士だったり、大きめのところ中心だったのがそれだけじゃなく、やはり本気でイノベーションを起こそうとするとそうじゃないところにもイノベーションの種がたくさんあって、それがたまたまスタートアップの中にもあるよね、ってことで一緒に入ってやりましょうという。

なるほど、グローバルの活動であるということも伺っているのですが、事例など教えていただけますか

槇:国ごとによってやはり特色っていうのはちょっとずつ色合いがあって、特に北米とかになるとシリコンバレー中心に数もありますし、テーマとしてもシリコンバレーで取り組んでいるようなものが多いので、やはりそこが中心になりますね。

日本と若干違うのはアーリーステージにいるようなところを早い段階からサーチしてきて、我々のお客様で共通している課題に対して有効なテクノロジーやケイパビリティを持ったところを投資含めて一緒にやっていこうという戦略的な取り組みはしています。海外でもいくつか事例にはなっていますが、コンソーシアムだったり大きめのネットワークの中にスタートアップも一緒に入ってもらって取り組んでいる感じです。

ヨーロッパでも似たような取り組みはあって、イスラエルみたいにセキュリティにすごく特化しているようなところはそこにフォーカスしますし、中国は製造系や小売などの顧客体験系が多いので、そういったスタートアップを中心に見ていたりします。日本は割とバリエーションが多くて、元々製造大国だったりするので、ロボティクスみたいな領域もありますし、それに絡めての自動化など中心に動いていたりします。なので、地域によってちょっとずつ戦略が違うというかフォーカス領域が違うっていうのはありますね。

そういう中で日本の活動をどんどん広めていきたいということだと思うのですが、日本の活動、今後1〜2、3年の短期的にどういうところをフォーカスしていきたいとお考えですか

槇:短期間に結構変化するところにスタートアップがたくさん生まれてくるので、毎年見直しが必要だったりするのですけれども、現時点で見ているというのはやっぱり我々の注力している領域に着目することが多いです。

中でもサプライチェーン系で、流通も入れば工場の生産ラインもあれば流通の中でもロジスティクス周りで物を運ぶっていうのもありますし、倉庫の自動化なども含めてサプライチェーン全般をどう最適化してくかということを考えた時に、突出したテクノロジーやプロダクト、サービスを持っているスタートアップは一つ領域としてありますね。

それ以外にも顧客周りのエクスペリエンスをどう作っていくかというところも大きいです。ここ2年ぐらい、コロナ禍によって生活が変わりましたが、その中に新たに出てきた消費者や生活者のデマンドに対して新しいサービスを提供していくようなスタートアップには注目していますね。

スタートアップ側は本当にはやくやらないと資金が尽きてできなくなってしまうという焦りもある一方、大企業としては作った仕組みが確実にマーケットに受け入れられて継続していくことを目指すわけです。最終的にはお互い持続できるビジネスを目指しているはずなんだけど、どうにもこうにも埋まらないミスマッチが世の中にはたくさんあると思っていて、ここがチャレンジになると考えているのですが

槇:そこがまさに両サイドから相談が来る内容で、例えばスタートアップさんから相談が来る時はいろんな会社で採用するとかその一歩手前のPoC(※Proof of Concept)ですね、実証実験をしたいという話があって、でもやっぱりそれをやる体力がなかったり、その一部のテクノロジーは持っているけど、それ以外と組み合わせないとそれ自体もできないとか。

PoCはなんとかなったけど、それを実際サービスとして導入するにはハードルがあるので、じゃあそれをどうやったらできるんだろうとか。例えばある小売店で店舗の中の導線解析みたいなものをやろうとするとPoCはできるんです。それを実際に他の店舗に導入していって、さらにその得られた結果を使って新たなサービスを作るとかエクスペリエンスを作るとなると、まず店舗に展開するだけでも数百、数千になる。

こうなるとスタートアップだけの体力だとやっぱりやりきれない。溜まったデータを分析するにしても、一店舗やってる分ならいいですが、そのスケールでやろうとすると圧倒的にリソースが足りなくなってしまう。大手と提携したり採用されたりしたのにビジネスとしてはうまく発展できないケースがあったりするので、そこをお手伝いするというか、足りない部分を我々が補って形にしていくのが一つのミッションですね。

次回につづく

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